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スポーツチームのウエイトトレーニングへの認識とスクワット指導の考え方

皆様こんにちは、佐名木です。
蒸し暑い毎日ですが如何お過ごしでしょうか?

我々競技スポーツ現場で活動する者にとって、今は合宿シーズン真っ只中でして、熱中症予防のために、少しでも涼しい時間帯に練習しようと早朝に練習してみたり、夏合宿を誘致している高原地帯や北海道でキャンプを張ったりと、色々と工夫を凝らしながら強化を図っています。

【競技スポーツにおけるウエイトトレーニングの重要性とその認知度】

私がこの仕事を始めたばかりの頃は、まだまだどのスポーツでもウエイトトレーニングの重要性は理解されていたとは言い難い状況で、合宿に行くのは良いが、ウエイトトレーニングの為の時間は取ってもらえず、その期間に筋力やサイズが落ちてしまわないように色々な器材を持って行ったり、現地で苦労して調達したりとなかなか大変で、タイミングも何人かピックアップして寝る前や早朝にエキストラで行ったり、試合に負けたタイミング等に託けて自重種目で追い込んだりしながら、なんとか低下を防ぐので精一杯でした。

しかし最近では各競技でも、合宿中にも技術・戦術練習だけでなく、ウエイトトレーニングも継続して行うようになってきて、合宿地を選定する基準にウエイトトレーニング施設が併設されているか?最低でも近くにあるのか?

といった事が条件として求められるようになり、合宿地のホテルや公共施設のウエイトトレーニング場もかなり充実したものになってきました。

【競技スポーツ選手に必要なトレーニング器具】

我々体力トレーニング指導者がウエイトトレーニング施設を見る時に、まずチェックするのはやはりパワーラックやプラットホーム、バーベルの本数、そしてプレートの総重量だと思います。

「トレーニング施設完備」と書いてあっても実際行ってみるとフィットネスクラブのようなマシンしか無かったり、ダンベルは最高で10kgまでだったり、トレッドミルやエアロバイクなど有酸素マシンしかなくて、一部のリハビリプログラムでしか使えないなんて事も偶にあります。

ですので、全国各地どこに行けば質の高いウエイトトレーニングが出来るのかという情報は、S&Cコーチには必ず必要になってきます。

【ボディビルダー・パワーリフターであることの利点】

そんな時に私の力強い情報源となるのが、日本パワーリフティング協会や日本ボディビル・フィットネス連盟の各都道府県協会所属ジム名簿です。

そこにパワーリフターやボディビルダーが居るということは、必ずスクワット・ベンチプレス・デッドリフトが出来る施設があるという事です。

またパワーリフティング、ボディビルディングの試合で知り合った仲間との繋がりも何よりも確実な情報源です。

彼らからの“ナマ”の情報ほど有力なものはありません。

「あそこはガンガン高重量でスクワット出来るよ!」

「あそこはマシンしかないよ!」

「あそこは声出しただけで怒られるよ!」

などなど。

HPやパンフレットからは得られない情報を惜しみなく教えてくれるものです。

バーベルを通じて交わした友情に感謝する季節であります。

【ラグビー選手とスクワット】

さて前置きが長くなってしまいましたが、今回は現在私が携わっているラグビーと、パワーリフティング種目のスクワットとの関係についてお話しようと思います。

言うまでも無くスクワットはウエイトトレーニングの基本種目であり、膝や腰に大きな問題が無い限りは、アスリートにとって推奨されるエクササイズの筆頭にあげられる種目だと思います。

そしてラグビーは身体と身体をぶつけ合いボールを争奪するコンタクト系球技です。
体格が大きく脚筋力の強い方が有利になるスポーツです。

当然ながら選手は年間通してスクワットを実施し、下半身を鍛えます。

(※スクワットを本気で行うパワーリフターにはスクワットが下半身の種目ではなく全身を鍛える種目である事は分かっていると思うが、ここでは分かり易くする為に下半身と記する)

勿論パワーリフティング競技者ではないので、スクワットの強い弱いがそのまま直接競技パフォーマンスとイコールの関係になるわけではありませんが、走る・蹴る・飛ぶ・当たる・姿勢作り・傷害予防などなど。

パフォーマンスを構成するための土台作りとして、スクワットで培われる筋力は必要不可欠です。

【固執すべきでないパワーリフティング式フォーム・ボディビル式フォーム】

パワーリフティングで行うスクワットとは、バーベルを担いで股関節が膝関節よりも床面に近くなるような深さのスクワットをさしますが、他競技の選手が年間通してこのフルに近いようなスクワットを実施する訳ではありません。

特にラグビー選手は普段の競技練習でも大腿部や下腿部、股関節周辺の筋に大きな疲労や物理的なダメージを受ける事がありますので、競技練習の内容と照らし合わせて、関節の消耗や筋肉の疲労度を考慮しながら色々なバリエーションのスクワットを実施します。

可動域で言えばフル⇒パラレル⇒ハーフ⇒1/4と膝関節や股関節の状態を勘案して変化させたり、重量やセット数にも変化をもたせたりします。

またボックスやベンチを使って、ボトムでの膝や腰背部の負担を減らしたり、ラックスクワットなどもよく使われるテクニックです。

またその逆で、大腿部前面のサイズアップのみを狙った、極端なヒールアップ・ナロースタンスでの膝関節主動のスローリフト。

所謂ボディビルスクワットも、大腿四頭筋の発達が遅れてバランスを欠いている選手や、一部のリハビリプログラムでは有効ですが、他競技のアスリートにとってはメインとなるスクワットではありません。

ボディビル的な“部位を鍛える”という考え方も間違いではありませんが、そこに固執してしまうと競技の特異性に合わない体を作ってしまったり、逆に競技練習中に怪我をする原因を作ってしまったりします。

均整の取れた綺麗な体を作る事と、競技パフォーマンスを向上させる事は、イコールではない場合がある事を忘れてはいけません。

話を戻しますが、スクワットはラグビー選手にとって素晴らしい効果的なエクササイズです。

しかし彼らが重量挙げの選手でない事は常に頭の中に置いて、ラグビーの競技練習とのバランスを考えて、引き出しの中からベストなスクワットをチョイスする事が重要です。

【将来を見据えたスクワット指導】

高校・大学・社会人と様々なカテゴリーでラグビー選手を指導してきて思う事は、高校時代に正しいスクワットのフォームを教わっている選手と、そうでない選手には、社会人になった時に大きな伸び白の差が出来るという事です。

恥ずかしい話しですが、名門と呼ばれる強豪大学を卒業した選手でも、正しいスクワットのフォームをマスターしていないまま大人になっている選手が何人もいます。

それどころか「股関節が硬いんです」「足首が硬いんです」などなど、若い頃から様々な言い訳をして、特殊なフォームやスクワットとは呼べないようなフォームで急場を凌いで来たように見える選手も沢山います。

そういう選手は、スクワットを正しく行うことが自分のパフォーマンスを向上させる為に、どれだけ重要な事か理解出来ずに成長してしまっているので、小手先のテクニックや生まれ持った身体能力だけで学生レベルで通用していた人ほど、社会人になってから、このままでは駄目だと言われても受け入れるのに時間がかかります。

また一度変なフォームが身についてしまった選手は、後から修正するのが非常に難しい事があります。

悲しい事に、フルスクワットを正しいテクニックで出来ない選手は、他のバリエーションでスクワットを行っても、十分な効果を引き出すのは難しいです。

ですので、未経験者に最初にスクワットを教えるコーチの方は、その選手の将来まで見据えて教える事が重要です。

目先の重量アップよりも、フォームを崩さず出来る事を重要視し、1年ぐらいは60kg未満で過ごしても構わないぐらいの広い心を持ちましょう。

高校レベルでは、有名校にでも行かなければ、十分な経験を積んだS&Cコーチに指導を受ける事は難しいかも知れません。

ですからラグビーコーチの先生方や、地域の公共施設の指導員の方、スポーツクラブの指導員の方は、最低限フルスクワットの基本フォームは教えられるようになって頂く事が必要であると思います。

そして目先の成果に囚われるのではなく、選手の将来を見越した指導をして頂きたい。

最初は退屈でも面白く無くても良いんです。

全ては将来のための肥しですから。

 
 

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■コラム執筆者

佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 241kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝

ボディビルディング
2000~2001年  関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年     全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年     日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年     関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

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