去る9月20,21日に初のパワーリフティング国体公開競技が和歌山県で開催され、私も愛知県代表として参加してきました。
今回は和歌山国体パワーリフティング公開競技のレポを書かせて頂こうと思います。
まずは会場の様子から。
【試合会場】
会場は和歌山県広川町体育館、今年春のジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会と同じ場所になります。
程良い広さで観客席も近く、とてもやりやすい会場でした。
使用された器具はパワーリフターにはお馴染みになりつつあるザオバ社の物でした。
試合場のバーベルシャフトはローレットが改良された新しいタイプのもので、デッドリフトもやりやすかったです。
ザオバ社の方のお話によると今後はIPFの公認も取る予定との事でした。
アップ場は二面、同じくザオバ社の器具が使用されています。
観客席はほぼ選手と関係者でしょうか、将来はもっと一般の方が見に来てくれるようになっていくといいですね。
表彰式には和歌山国体マスコットキャラクターのきいちゃんも登場、ちびっ子に大人気でした。
【各階級レポ】
到着時間の関係から女子と男子59kg級は見る事ができませんでしたので、実際に観戦したのは男子66kg級~120kg超級になります。
女子全階級
1位北村選手(神奈川県)F記録455.36
2位可児選手(岐阜県) F記録444.52
3位寺原選手(京都府) F記録423.08
(女子のみ、全階級の選手がフォーミュラ記録で競う試合形式となっています)
女子は国際大会で活躍する北村選手と可児選手による非常にハイレベルな優勝争いとなりました。
最後は北村選手がデッドリフトで日本記録を更新し優勝を決めています。
3位にはジュニアの女王寺原選手が並み居る一般の強豪選手達を抑えてランクイン。
フォーミュラ勝負という事で普段は対戦する事の無い階級の違う選手の勝負が見られるのも国体ならではですね、女子に関しては国内で最も優勝するのが難しい大会と言えると思います。
男子59kg級
1位宮城選手(沖縄県)540kg
2位久保選手(大阪府)517.5kg
3位水野選手(千葉県)512.5kg
59kg級は沖縄から全国初登場の宮城選手がスクワットの日本記録を樹立し優勝、記録も素晴らしくノーギア59kg級に新星登場となりました。
宮城選手は沖縄の重量挙げ出身選手との事で、旧60kg級でジャパンオープンパワーを何度も制している名選手我那覇選手との共通点が多いですね。
所属も我那覇選手と同じ奥武山TCのようです。
2位にはデッドリフト日本記録保持者の久保選手、サブトータル5位から3人抜きでの準優勝は流石デッドリフターです。
3位にはベテラン水野選手が強豪大谷選手との争いを制して入っています。
男子66kg級
1位井上選手(兵庫県)640.5kg
2位渋谷選手(千葉県)610kg
3位木村選手(東京都)570kg
日本のノーギアを代表する強豪井上選手がトータル640.5kgという素晴らしい記録で優勝しています。
井上選手はデッドリフト第三試技で260kgを引き切るも途中シャフトが一瞬落ち赤判定となりましたが、もしこの試技が成功だった場合トータルは655.5kgとなりこの階級のノーギア世界記録(653.5kg)をも上回っていたという圧巻の強さでした。
2位の渋谷選手は関東予選から大幅に記録を伸ばしており、フォーミュラでも全選手中2位となりました。今後世界での活躍が期待される選手です。
3位の木村選手もフォーミュラで全体6位となっており、最もハイレベルな優勝争いが繰り広げられた階級でした。
男子74kg級
1位伊勢崎選手(埼玉県)650kg
2位山本選手(宮城県)602.5kg
3位西村選手(三重県)570kg
埼玉県の伊勢崎選手が安定した試技でトータルを650kgまで伸ばし圧勝しています。
伊勢崎選手はフォーミュラでも全体3位、今後この階級の中心選手になりそうです。
2位の山本選手は全試技成功させトータル602.5kgと600kgオーバー。
3位の西村選手はスクワット第二試技と第三試技で日本記録246kgに挑戦、惜しくも失敗しましたが会場の注目を浴びました。
男子83kg級
1位芦原選手(奈良県)682.5kg
2位福島選手(静岡県)660kg
3位森選手(神奈川県)660kg
非常に層の厚い83kg級でしたが、74kg級から階級を上げてきた強豪芦原選手が83kg級での初めての全国大会を制しました。
スクワットでは252.5kgを余裕を持って成功させ自身の持つ日本記録を一気に10kg近く更新しています。
2位争いはベンチプレス世界チャンピオン福島選手と神奈川の強豪森選手がサブトータルで並びデッドリフト勝負に、最後は福島選手が体重差で競り勝ちました。
この階級は芦原選手の参入で今後更に盛り上がりを増しそうです、今回も8人の選手がトータル600kgを超えていました。
男子93kg級
1位久保選手(京都府)685kg
2位池田選手(沖縄県)660kg
3位森選手(大阪府)655kg
59kg級で準優勝した久保元人選手のお兄さん、京都の久保匡平選手がサブトータルで他選手を大きく引き離し貫禄の優勝、兄弟での表彰台獲得となりました。
スクワットでは安谷屋選手の持つ日本記録282.5kgも射程圏内に捉えています。
2位は沖縄から全国大会初参加の池田選手、池田選手も今後全国での活躍が期待されます。
3位には大阪の若手、森選手が入っています。
男子105kg級
1位内藤選手(神奈川県)687.5kg
2位関選手(埼玉県)680kg
3位松澤選手(神奈川県)667.5kg
この階級は内藤選手・関選手・松澤選手の関東勢三人による熾烈な優勝争いが繰り広げられました。
優勝した内藤選手はデッドリフトで第一第二試技を落とし窮地に追い込まれましたが第三試技を見事成功させ暫定首位に、その後ジュニアチャンピオン松澤選手の逆転を賭けたデッドリフトは惜しくも引ききれず、最後までもつれた勝負は劇的な幕切れとなりました。
2位は9試技全て成功させ関東予選から大幅に記録を伸ばした関選手。
3位となった松澤選手は来年よりジュニアを卒業し一般部門へ、素質溢れる若者でこれからが期待される選手です。
男子120kg級
1位渡辺選手(千葉県)748.5kg
2位秋山選手(青森県)675kg
3位佐野選手(京都府)649kg
120kg級は大ベテラン渡辺選手が優勝、渡辺選手は57歳と今大会で表彰台に登った選手の中でも最年長でしたが、ベンチプレス・デッドリフト・トータルで大会最高重量を挙上し一般の日本記録を更新、圧倒的な強さを見せての優勝でした。
2位には青森県の秋山選手。
3位の佐野選手は第一試技からデッドリフトの日本記録を更新、第二第三試技では300kgに果敢に挑みました。
男子120kg超級
1位奥川選手(三重県)687.5kg
2位越久田選手(神奈川県)625kg
一騎打ちとなったスーパーヘビー級対決は三重県の奥川選手が優勝しています。
都道府県別団体戦順位
1位 神奈川県49点
2位 沖縄県35点
3位 千葉県34点
4位 京都府34点
5位 埼玉県30点
都道府県団体戦は神奈川県が圧倒的な強さを見せ優勝しました。
アサマトレーニングクラブのメンバーを中心に各階級で上位を獲得し2位に大差をつけています。
その他、沖縄県や千葉県といったパワーリフティングの盛んな都道府県が上位に名を連ねる中、大学生中心のメンバー4人で4位にランクインした京都府の健闘が光ります。
また、今回大会の最後に協会からの通達で、次回より国体都道府県予選は各階級2位の選手までブロック予選に出場出来るとのお話がありました。
これにより選手層の厚い都道府県は、より多くの選手を国体に送り込める可能性が有りますので団体戦の情勢も変わってくるかもしれません。
来年は神奈川県の牙城を崩す都道府県は現れるのか、団体戦にも注目していきたいです。
ベストリフター
ベストリフターは毎度おなじみの井上選手、もはや指定席と言ってもいいと思います。
2位と3位にはブロック予選から大幅に記録を伸ばした渋谷選手と伊勢崎選手が入っています。
詳しい結果はJPAホームページをご覧になってみて下さい。
【初のパワーリフティング国体公開競技を終えて】
今回は第一回公開競技という事で一体どんな大会になるのか楽しみでしたが、普段フルギアをメインにしている選手や沖縄県勢の参戦もあり、国内のノーギア大会としては最高峰のジャパンクラシックパワーにも劣らないレベルと盛り上がりになっていました。
世界的なパワーリフティングノーギア化の潮流もあって国内のノーギアパワーは年々熱気が高まっています、このまま来年の岩手国体でも更なる盛り上がりを期待したいですね。
試合結果では、各階級の優勝選手全9人中5人までを20代の選手が占めるなど、若手選手の活躍が目立ちました。
特に男子83kg級は1位から6位までを10代~20代の選手が占めており、急速に世代交代が進んでいる印象です。
そんな中、57歳で大会最高重量を記録した120kg級のベテラン渡辺選手の活躍は見事でした。
最後に、私自身の結果ですが今年5月の東海大会から記録を落としてしまい93kg級で4位という悔いの残るものとなってしまいました。
この悔しさをバネに次の大会に向けて練習していこうと思います。
会場でお声を掛けて下さった皆様ありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしています。
■コラム執筆者
神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット237.5kg
ベンチプレス160kg
デッドリフト262.5kg
トータル660kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場9回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位