皆さんこんにちは。
SBDコラムニストの鈴木佑輔です。
最近、ここ長野県松本市では寒暖の差が徐々に強くなってきて、ジムを終えて外に出ると気温が一桁だったりします。
まだ半袖短パンですが、気温と世間の目が段々と気になってきている今日この頃です。
さて、今回のコラムでは、ベンチプレスを行う時の骨格動作を解説し、よりベンチプレスの理解を深められるようにアプローチをしていこうと思います。
ベンチプレスを人に教えるときに、肩甲骨を寄せて~とか、胸を張って~って言いますよね。
このコラムを読み終えたときに、そこからもう一歩踏み込んだ考え方になっていただけるように頑張って書いていこうと思いますので、最後まで目を通してみてください。
なお、骨格、筋肉ともに、単独では動きませんし、単独で動かそうとすると必ずしわ寄せが生じますので、全身の動きの中で特にフォーカスすべき点を書いていきます。
ご理解いただけると助かります。
脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)・肋骨
いわゆる背骨のイメージなのですが、ベンチプレスにおいて背骨と関連することとして挙げられるのが『胸を張る』という動作です。
胸、つまり胸椎単独における動作では、皆さんのイメージするような胸を張る動作というのはあまり出来ません。
なぜかというと、胸椎の前に位置する肋骨が単純に邪魔になってしまうのです。
写真①をご覧いただくと、胸を張ろうとしているのに、ぜんぜん張れていません。
胸椎を前に押し出す際に、肋骨が邪魔をしないように開く必要があります。
写真①
その肋骨は、息を大きく吸うことで開いてくれますので、写真②のように胸を膨らませるようにして『胸を張って』みてください。
写真②
続いて腰椎ですが、ブリッジを高くしようとして腰椎の前弯が非常にきつくなっている方が試合会場でも多く見受けられます。
腰椎の前弯が強くなりすぎれば腰の収縮が過剰になりますので腰を痛めやすくなってしまいます。
適度な前弯を保ちつつ、写真③のように、股関節前側を柔らかくするようにストレッチをしていきましょう。
写真③
最後に頸椎です。簡単に言ってしまえば、立位で上を向くか下を向くかで頸椎の動きが分かります。
どちらを向いた方が肋骨を開きやすいですか?
さらに、上を、または下を向いたまま手を前に押し出すことで、どちらが押す力が強いか(押し出し易いか)試してみましょう。
肩甲骨
ベンチプレスをする時に気をつける事として、とてもメジャーな言い方ですが、『肩甲骨を寄せる』という表現があります。
・・・ですが、これは表現が端折りすぎであり、具体的ではありません。
ここでは肩甲骨の動きについて、細かく解説していきます。
肩甲骨は、ものすごく柔軟な動きをします。
肩甲骨の動きには
①外転・内転
②上方回旋・下方回旋
③挙上・下制
といった動きがあり、ベンチプレスにおいては
構え・・・下制→内転→下方回旋
下降時・・・内転・下方回旋
挙上時・・・上方回旋・外転
といった動きをします。
では、写真でそれぞれの動きを見ていきましょう。
外転
内転
上方回旋
下方回旋
挙上
下制
ベンチプレスを特にやりこんでいる方は、内転・下方回旋・下制が比較的上手ですが、外転・上方回旋・挙上が固くなっているケースが多いです。
言い換えれば、下降時における肩甲骨の動作が上手で、挙上時における動作が固くなってしまっている、ということです。
上の写真の動作をすべてつなげて、スムーズかつ大きな肩甲骨の動作を習得してください。
上腕骨・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)
上腕骨(肩から肘)~前腕(肘から手首)の動きについてですが、上腕骨は内旋・外旋、前腕は回内・回外します。
この動きをどれだけ思い通りにコントロール出来るかが、ベンチプレスでも重要です。
コントロールのトレーニングですが、まず写真④のように壁に手をついて立ちましょう。
このとき、指先は真上もしくは若干外にむけておいてください。
写真④
壁に手をついて固定しておいた状態で、上腕骨(肩から肘)~前腕(肘から手首)をぐるぐると回します。
写真⑤・⑥
写真⑦
写真⑧
慣れてきたら、壁から手を放して同じ動きが出来るかどうか試してみましょう。
おそらく、掌がくるくると一緒に動いてしまうと思います。
指先は真上もしくは若干外です。
このときに前腕が回内・回外します。
初めは肩・上腕・前腕が同時でなくても構いませんので、指先の向きを変えないように、肩を出し入れしながら肘をぐるぐる動かせるようにしてください。
ベンチプレスにおいては
下降時・・・上腕部外旋(肩甲骨内転・下方回旋)
挙上時・・・上腕部内旋(肩甲骨上方回旋・外転)
となります。
以上、簡単にではありますが、特にベンチプレスの動作に関連する上半身の骨格の動きをまとめてみました。
筋肉だけでなく、身体の基礎となる骨にまで着目して練習をするように心がけることで無用な怪我を防ぐことが出来ますし、同じ重量でも楽に扱うことが出来ます。
さらに、特別な器具が必要なことではありませんので、いつでもどこでも練習が出来ます。
ちなみに自分はB.A.D.に向かう車の中で、ハンドルを持ってやります。(運転には注意して!)
目に見えない部分ですがイマジネーションを働かせて、ベンチプレスをより深いところまで掘り下げていってみてください。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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■コラム執筆者
鈴木佑輔
長野県パワーリフティング協会副理事長
所属 B.A.D.
http://www.bodyartdesign.net/
ジャパンクラシックベンチプレス選手権5連覇
2010年~2015年
2014年アジア・オセアニア選手権MVP
66㎏級ベンチプレス ベスト記録 190.5㎏
日本記録・アジア記録保持
74㎏級ベンチプレス ベスト記録 212㎏
アジア記録保持