皆さんこんにちは!SBDコラムニストの鈴木佑輔です。
連日世界パワーリフティング選手権を観戦しつつのトレーニングに気合が入っております。
自分はちょうどあと1ヵ月でアジア・オセアニアクラシックベンチプレス選手権がありますので、体調管理をしっかり行いながら、もう少しで仕上げの段階に入っていきます。
頑張ってきますので応援よろしくお願い致します!
さて、今回はベンチプレスの補助種目である、『フロアプレス』について書かせて頂きます。
【高重量を扱うにはやはりバーベル】
ベンチプレスはトレーニング界のBIG3で、上半身のウェイト種目として最高重量を扱える種目のひとつです。
プレス系種目では圧倒的に高重量ですよね。
例えばベンチプレスの補助種目としてダンベルを使ったバリエーションなどもありますが、自分の場合は50kgのダンベルで30回は出来ますが、2つ合わせても所詮100kg×30回。
バーベルに比べれば絶対重量は下がります。
【プラトーはいつか必ず来る】
ですので、バーベルベンチプレスが筋力を伸ばすトレーニングとしても最適なのですが、競技をされている方以外でも、重量が伸び悩む時期が必ず来ます。
100kgはしっかり挙げられるようになったけど、105kgは挙がらない。ピクリとも動かない。
こんなことは良くある話です。無理やりお尻をあげてなんとか挙がる、けれども肩を、腰を痛めた。
皆さんもそんな経験があると思います。
そんな時にぜひ導入してほしいのが『フロアプレス』です!
【フロアプレスの行い方】
まず準備するのがパワーラックと適度な固さのマットです。
セーフティを一番下に下げ、床(フロア)に寝転がります。
バーの高さは通常のベンチプレスと同じ距離で良いでしょう。
・フォームの確認
寝転がるときにベンチ台と同じようにアーチを作りますが、当然足は投げ出した形となります。
写真①
足は伸ばしている形が基本ですが、このとき骨盤を立てるようにして、足の付け根(腸骨)を固定します。
そのために大腿前部はしっかり力を入れ、緊張感を保ちましょう。
写真② 寝たままの状態
写真③ 骨盤を立てた状態
通常のベンチプレスの場合、台の横から肩がはみ出ることが多いため、肩位置は台よりも下にくることが多いですが、フロアプレスでは肩全体が床につくので非常に安定感があります。
肩の両端が浮かないようにしてラックアップ~受けを決めましょう。
肩が浮かないように注意しましょう。
写真④ 肩が浮いた状態
写真⑤ フロアにしっかりと肩をつける
受けの姿勢を作るときに気を付けて頂きたいのが、バーが胸の上に移動してきたとき、足の支えがベンチプレスに比べると弱いため、写真②の状態になりがちです。
改めて骨盤、足の付け根をしっかりと固定しましょう!
上記の姿勢を取ることを前提に、シャフトから練習を開始するのですが、肩周りに無理な力が入らない範囲でシャフトを受ける位置はお腹側にします。
何度か前後に動かしてみても良いでしょう。
前後に動かしても骨盤、足の付け根はずれないように注意してください。
上から見た時に首の付け根、肩、肘を結んだラインが一直線になるようにしてみてください。出来るだけ「なで肩」にするようなイメージです。
写真⑥ 「なで肩」をイメージ
・降ろす動作の練習
ここから実際にシャフトを降ろしていく過程に入りますが、ここまでに作った姿勢を変えないように降ろしていきます。
やってみると分かると思いますが、例え何もつけていないシャフトでも降ろしはゆっくりになるはずです。
ストン、と降りてしまうようでは姿勢が崩れていますので、姿勢を作り直しましょう。
降ろしていけば床がありますので、最初は胸につきません。
ですが、出来るだけシャフトと胸が近づいてフルレンジに近い形になるようにしてみてください。
シャフト~ごく軽い重量では肘が床についてしまってもOKです。
ここではシャフトと胸を近づけることによる安定した姿勢作りがメインとなります。
・肘と上腕骨の位置
注意点は肘が床についた状態で、シャフトの位置は肘の垂直線上ではないということです。
前回のコラムをお読みになられていない方はご一読ください。(前回コラム)
上腕骨は外旋状態ですので、肘は若干内向きになります。掌を上に向けていますので手首は曲がります。
シャフトの位置は上腕骨の上にくるくらいで肘が床に当たるようになります。
写真⑦ バーベルが肘の上に来ている状態
写真⑧ バーベルは上腕骨の上にくるように
・加重時の切り返しポイント
ここまで練習をしてから、プレートを付けてウォームアップを開始していくわけですが、ベンチプレスのアップと同じペースで重量・回数の設定をしていきます。
ただし重量を付け始めたら、降ろす範囲を変えてください!
先ほどまでは肘が床につきましたが、ここからは肘がつく前に挙げてしまいます。
なぜかというと、自分の体重に近い重量、もしくはそれ以上になってくると肘に「載せて」しまいます。そうなれば重心がシャフト中心になりますので、姿勢が絶対に変わります。
動きを安定させている筋群の緊張が抜けてしまうので怪我をしやすくなってしまいます。
どこまで降ろすかというと、上腕付け根が床につくところまでです。上腕三頭筋が触れたら挙げる方向にベクトルを変えましょう。
写真⑨ 肘付近までフロアについている状態
写真⑩ 上腕三頭筋がフロアに触れたら切り返す
押し上げる際にコツとして、より骨盤を立て、上半身全体で押し上げるイメージで動いていきます。
上腕の回旋はベンチプレスの8割程度といったところでしょうか。
・挙上は爆発的に
身体と床の設置面積はベンチプレスよりも多いため、より多くの反力を生かせるので細かい部分からの出力を上げやすいです。
身体全体を使って、よりたくさんの力をシャフトにつなげていけるようにします。
降ろす際のスピードはゆっくりと、挙げる際には爆発的に行うようにしてください。
【フロアプレスの負荷、頻度の設定方法】
・設定重量、レップ数
では、実際のトレーニング方法ですが、まず設定重量、レップ数を決めましょう。
ここではベンチプレス100kgが1RMと仮定します。
ウォームアップシャフト(20kg)×5回×5セットフォーム、動きの確認
40kg×5回
60kg×3回
80kg×3回
90kg×2回
100kg×1回
メイン
A.110kg×3回×5セット(を目指す)
B.100kg×5回×3セット(を目指す)
C.90kg×10回×2セット(を目指す)
週に1回もしくは2回行います。
メインセットA.B.Cはいずれか1つを日ごとに選ぶと良いでしょう。
どの設定でも、姿勢、軌道、フォームのすべてが崩れないように行うべきです。
神経、パワー、スタミナを鍛えるためにA.B.Cの3種類ともクリア出来るようにしてください。
・できるだけベンチプレスとセットで行う。
忘れてはならないのが、このフロアプレスは出来るだけベンチプレスとセットにしてトレーニングすることが重要です。
理想としては、上記のメインセット毎に軽重量のベンチプレスを組み合わせることです。
フロアプレス100kg×3→ベンチプレス60kg×3
という形です。
所属のジムやクラブでパワーラックとベンチプレス台を同時に使うことが難しい場合、先にフロアプレスを行ってからベンチプレスのウォームアップを入念にしてからベンチプレスのトレーニングに入ると良いでしょう。
・フロアプレスの良い所
身体が安定していることにより、ベンチプレスよりも高出力となり、さらに稼働範囲が限定されるため回数もより多く、倍くらいのレップが行える種目です。
シャフトを持っている時間が長くなるため筋持久力の向上も望めますし、それによりシャフトを支える小筋群も刺激することが出来ます。
以上、今回はフロアプレスについて書かせて頂きました。
皆さんもぜひ、フロアプレスを取り入れてベンチプレスのプラトーを脱出していきましょう!
次回はフロアプレスの発展版として、ボードベンチプレスをご紹介する予定です。
楽しみにお待ちください!
ここまで読んで頂いて、ありがとうございました。
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■コラム執筆者
鈴木佑輔
長野県パワーリフティング協会副理事長
所属 B.A.D.
http://www.bodyartdesign.net/
ジャパンクラシックベンチプレス選手権5連覇
2010年~2015年
2014年アジア・オセアニア選手権MVP
66㎏級ベンチプレス ベスト記録 190.5㎏
日本記録・アジア記録保持
74㎏級ベンチプレス ベスト記録 212㎏
アジア記録保持