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糖質制限ダイエットの利用方法

読者の皆様、新年明けましておめでとう御座います。

本年も宜しくお願いいたします。

さて2016年1回目のコラムはお正月太りをいち早く解消し、来る夏に向けてのシェイプアップの為の食事方法のお話です。

世の中には様々なダイエット方法が存在し、日々新しい方法が生まれては消えを繰り返しています。

ここ数年のフィットネスブームの中ではパーソナルトレーニングジムで推奨されるウエイトトレーニングと糖質制限ダイエットの組み合わせが人気で、テレビ番組でも何度か取り上げられ、多くの方がチャレンジしたかと思います。

しかし糖質制限ダイエットは、結果が出やすい反面、途中でやめてしまうと簡単にリバウンドしてしまう危険もあり、素人が形だけを真似ても上手くいかない場合があります。

スポーツ選手の中でも流行にのって、極端な糖質制限ダイエットで短期的に肉体改造を果たしたものの、通常食に戻すとすぐにリバウンドしてしまったり、見た目は変わったものの筋力がかなり落ちてしまったり、競技動作で痙攣や肉離れを起こしやすくなってしまったりと、俄仕込みの知識で行うと危険な場合もあります。

出来れば専門的な知識のあるコーチの指導の下で慎重に行うべき方法であると思います。

【糖質制限ダイエットとは】

そもそも糖質制限ダイエットとはどのような方法なのでしょうか?

ここではあまりマニアックになり過ぎない程度に簡単に説明しておきます。

大まかに分けると我々が食物から得るカロリー源は糖質・脂質・蛋白質の3種類に分類されます。

糖質と蛋白質は1gで約4kcal、脂質は1gで約9kcklです。

通常の食生活ではこれらをバランスよく摂取するのですが、糖質制限ダイエットでは、この中の糖質の摂取を制限します。

この制限の度合いによっては色々な方法があるのですが、基本的には糖質源である砂糖を使った料理や御菓子、ジュース類は一切口にしません。

そして食事での糖質(炭水化物)源である米、小麦、果物、イモ類などは食べないように注意します。

その逆に、糖質の少ない肉、魚、卵、乳製品などを積極的に摂取する食事方法です。

何故この方法で痩せるのかというと、糖質を摂取しない事で摂取カロリー自体が減る事と、血糖値が上昇しないのでインスリンが分泌される量も減り、中性脂肪が蓄えられる状態が無くなります。

次に暫くして筋肉や肝臓に蓄えられていた糖質(グルコース・グリコーゲン)が枯渇状態に陥ると、今まで優先していた糖質代謝ではなく脂質代謝によって体はエネルギーを作り出そうとします。

このような状態はケトーシスと呼ばれているのですが、これにより体に溜まっていた脂肪も燃焼されてエネルギーになるという、体質を改善させるような働きを狙った食事法とも言えます。

【具体的な食事内容】

では糖質を含まない食生活とはいったいどんな内容なのでしょうか?

ここに私が糖質制限ダイエットを行っていた時の一日の食事内容を例としてご紹介いたします。

順に朝・昼・トレ前・トレ後・夕食・夜食です。

朝:自炊
morning

昼:毎度おおきに食堂
lunch

トレーニング前:プロテイン+ココナッツオイル
before

トレーニング後:ガスト
after

夕食:ステーキ宮
dinner

夜食:自炊
late_night

ご覧の通り、糖質は少ないですが蛋白質と脂質は気にせずガンガン摂取しています。

もっともっとストイックな人になれば野菜やナッツ、サプリメントやドレッシングに含まれる糖質も気になると思いますが、私は食物繊維が不足すると便通が止まってしまうタイプですので糖質の少ない野菜を選んで多めに摂るようにしています。

脂質は当然、糖質の代わりにエネルギー源として必要なのですが、糖質が枯渇した状況下では蛋白質も実はエネルギーとして普段よりも多く使われる事があります。

体の外から全然糖質が入って来ないので代わりに体内で蛋白質を分解してアミノ酸にして、アミノ酸から新しく糖質が作られます。

これを読んで字の如く糖新生と呼びます。

人間も動物ですから飢餓状態に陥っても暫く大丈夫なように色々と予備タンクを持っているという事になります。

話を元に戻すと、糖質制限ダイエット中は、せっかくトレーニングした体を回復させようとアミノ酸や蛋白質を摂ってもエネルギーとして使われてしまう可能性もあるのです。

ですからスポーツ選手が糖質制限ダイエットを行う場合は普段の食事よりもかなり蛋白質を多めに摂取する事が望ましいのです。

上記の写真を見て「一日でこんなに食べてるの!?」と驚く人もいるかも知れませんが、糖質無しではこれだけ食べても私の場合は空腹感がしっかりありましたし、体重も増える事は無く、逆に減り過ぎないように注意するぐらいです。

【長期間続ける事のデメリット】

ここまで話しをすると糖質制限ダイエットは良い事尽くめのようですが、私は必ずしもそうではないと考えています。

当たり前の話ですが、3種類あるカロリー源のうち1つを断ってしまうという事自体が本来は不自然な事ですし、一生続けていけるのかと言えばやはり難しい極端な方法であると思います。

特に我々日本人は米食を中心とした食文化ですので、完全に米や小麦食品を食べない事をずっと続けるのは不自然だと思います。

また糖質の代わりに脂質をエネルギー源として摂取すると説明しましたが、脂質も蛋白質も結局摂り過ぎてカロリーオーバーになってしまえばダイエットする事は出来ません。

先にも述べたように脂質は1gで約9kcalもあるのでコントロールミスすると簡単に消費カロリーを摂取カロリーが上まわってしまいます。

よく糖質さえ制限していればどれだけ食べても良い、カロリーコントロール不要だと思われている人も見受けられますが、私はそうではないと思います。

次に、私の経験では、糖質制限ダイエットは開始して1週間からから10日ぐらいにかけて、集中力の低下や疲れやすさを感じるようになります。

これは今まで体が糖質代謝によって得ていたエネルギーが、肝臓でケトンを生成しエネルギーとするように切り替わる際に起こる症状で、人によっては不眠や頭痛も起きます。

またちょうど1週間も脂質と蛋白質の食事を摂ると、だんだん嫌になってきて摂取カロリーが落ちてしまう事も関係していると思います。

結果、一時的にではありますが体温も下がり風邪を引きやすい状況にも陥ります。

これは私の場合、ケトンの生成を促進させると言われる中鎖脂肪酸を多く含む油(ココナッツオイルなど)を摂取したり、多少トレーニング量を落としたりしながらこの時期を乗り越えるわけですが、一般の方に簡単に出来るかと言えば、何度も何度もダイエットを繰り返してきている我々ですらミスする事もあるテクニックですので難しいと思います。

また先程も触れましたが、我々アスリートは当然糖質制限ダイエット中も日々トレーニングを行い筋肉に負荷を与えるので、そのリカバリーの為にも普通の糖質制限ダイエットをされている方よりも多くの蛋白質を摂取する事になります。

蛋白質は筋肉だけではなく皮膚や内臓、骨や血液など体の様々な部分として常に合成され分解されてを繰り返していますので、沢山摂ればそれだけ老廃物の処理も大変になりますので腎臓に大きな負担をかける事になります。

腎臓が丈夫な人なら大丈夫でしょうが、あまり強くない人、例えば普段から浮腫み易い人等は高蛋白食に対して慎重になるべきだと思います。

実は私も浮腫みやすい体質でしてボディビル競技では大変苦労しました。

高蛋白食によって発生した多くの尿素をスムーズに排泄させるために(通風予防の為にも)も水分摂取は大量に必要になるのですが、これも普通の仕事をお持ちの方には辛い作業です。

また腎臓と尿素・尿酸の問題の前にもっと毒性の高いアンモニアを尿素に変える役割を持つ肝臓も丈夫でなければなりません。

私はアルコール飲料を好みませんので大丈夫ですが普通の仕事をお持ちの方々はそうは言っていられない場合もあるのではないでしょうか。

また、元々太っていた人は既に肝臓にダメージを抱えている場合もあるでしょう。

つまり糖質制限ダイエットは簡単なようで実は他のダイエットと同じく、安全且つ効果的に実行するには生活習慣全体を見直さなければならないのです。

【糖質制限ダイエットの次のステップ】

私の経験では糖質制限ダイエットは効果が非常に早く現れる反面、ダイエット開始から3~4ヶ月ぐらい経つと結局は他のダイエットと同じようにプラトーを迎えます。

私が栄養とトレーニングを指導したスポーツ選手や一般フィットネス愛好家でも同じような現象が起きました。

しかしこの3~4ヶ月で少ない場合でも10kg程の体重減に成功しています。

一番減少幅の大きかった女性は7ヶ月で体重17kg、体脂肪率13%、ウエストサイズ18cmと人生が変わったような変化を遂げました。

問題はここから先、糖質制限ダイエットで得た成果をキープしたまま、若しくは更に加速させるべく如何にして適正な食生活に戻すかという事だと思います。

その為には、次のステップである糖質を摂取しても太らない生活。
或いは糖質を摂取しながらダイエット出来る生活に変えていく必要があります。

まず第一にしなければならないのは運動です。糖質を摂取しても余ってなければ太る事はありません。

ですので当たり前ですが消費するカロリー量を上げる努力をすれば、その分糖質は摂って良いのです。

次に糖質の種類に気をつけるという事です。そもそも何故余った糖質が脂肪として蓄えられてしまうかというと血糖値の上昇をコントロールするために膵臓からインスリンというホルモンが沢山分泌されてしまう事で起きます。

インスリンは筋肉や肝臓に糖を運んでくれる重要なホルモンですが、残念ながら余った糖は脂肪に変えて溜め込んでしまうのです。

「余計な事しやがって」と思うかも知れませんが、人間だって動物です。

人類が何万年前から存在していたか細かい事は知りませんが、お腹イッパイ飯が食えるようになったのなんて長い歴史で見れば極々最近の話です。
ですから飢餓に備える為にインスリンは良かれと思って頑張ってくれているのです。

インスリンを沢山分泌させないためには血糖値を急激に上昇させてしまう(糖が余った状態を作る)食物を食べなければ良いのですが、糖質食材はインスリンを沢山出してしまうものが多いです。

だから糖質自体をカットするダイエット法が手っ取り早く行われるのですが、実はしっかり選べばインスリンを緩やかに上昇させて尚且つ栄養価の高い食材があるのです。

よく低GI食品という言葉を耳にしたり、スーパーでも目にするかと思いますが、これがその血糖値を上昇させない食品です。

GIとはグリセミック・インデックスの略で食後の血糖値の上昇を示す指標の事です。

食べてから2時間後に血液にどれだけの糖が吸収されているかを計ったもので、つまり糖の吸収速度を計った指標です。

ここでは主食となる糖質食材(炭水化物)に限定してお話ししますが、食材を選ぶ時に必ず食物繊維の量をチェックします。「そんなもん見ただけで分かるわけないだろう」と思うかも知れませんが、それが実は簡単で要するに食材が畑や田んぼで収穫された状態からどれだけ食べやすく加工されてしまったか?そこを見るだけで十分です。

我々の主食であるお米を例にとれば一番簡単なのですが玄米はGI値55ですが、精米されて白米になってしまうと81に上昇します。

小麦で言うと表皮、胚芽、胚乳なども全て粉にした全粒粉で作ったパンはGI値50ですが普通の小麦で作った食パンは91です。

麺類では蕎麦粉を引いて作る日本蕎麦は54であるのに対し、小麦で作るうどんは85と高くなります。

畑や田んぼで真っ白い収穫物はあまり無いでしょう。みんな食べやすいように加工されているのですが実はその削ぎ落とされた部分に栄養があり、そのまま食べた方が食物繊維が多く血糖値の上昇を抑えてくれるのです。

これらの低GI糖質食品(炭水化物)を必要量摂る事で、まずは完全に糖質を断った食生活から「糖質は摂っているけど血糖値は安定していて尚且つ消費カロリーが摂取カロリーを上回っている」という状態を作り出します。

この消費カロリーを上げるためにも勿論運動は必要です。

アスリートの場合でもこの状態に戻れば、筋肉に取り込まれる糖質(筋グリコーゲン)も元に戻り筋細胞内の水分状態も元に戻ります。

最初に述べたような肉離れや痙攣の危険性も下がると思われますので競技動作をフルスピード且つ高強度で行う事が出来ると思われます。

ただし、食事内容も練習内容も様子を見ながら段階的に増やしていく事を忘れてはいけません。

【良質の脂質を選び、質の悪い脂質を取り除く】

このようにして低GI糖質食材と運動を併用して通常のダイエットに戻すにあたって、もう一つ、今まで摂っていた脂質との付き合い方をどうすれば良いかという問題があると思うのですが、最初に述べたように脂質は1gで約9kcalと高カロリーであるため、糖質を摂る分だけ減らさなくてはなりません。

したがって今までのように積極的に摂取する必要はありませんが、調理したりドレッシングとして使用するぐらい、つまり普通に使うぐらいは気にせず摂るべきだと思います。
そして出来れば質の良い脂質を選んで摂るようにするべきでしょう。

質の良い脂質とは体内での燃焼効率の高い脂質(油)と考えて良いでしょう。糖質と同じように、摂取しても体で使われれば余る事は無いのです。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸でもオレイン酸やリノレン酸にEPAだDHAだと、こちらも「全部覚えられない。どうやって見分けるの?」と思いがちですが、簡単に見分けるコツは動物の脂肪か植物から抽出した脂肪かという見分け方です。

当たり前ですが「他の動物の体についてる脂肪を食べるんだから、そりゃ脂肪つきやすいよね」このぐらいの気持ちで良いと思います。

ですので今まで蛋白質を多目に摂取するためにステーキや卵を沢山食べていましたが、ここからは脂身の少ない蛋白質食品を選んだり、付いてる脂や皮を取り除く作業が必要になります。

あとはサーモンや秋刀魚、鯖、鰯などの魚から摂る脂もOK。
この4種類ぐらい覚えていれば日本食を普通に食べる範囲では特に慎重になるほどの問題ではありません。

特に今は、オイルもブームで亜麻仁油やえごま油、紫蘇油などなど凄く良い油がスーパーでも簡単に買える時代ですので、気にするべきは蛋白質と一緒にくっついてくる余計な脂をどう取り除くかを優先して考えるべきかと思います。

【まとめ】

糖質制限ダイエットは非常に効果的で他のダイエットに比べて導入が簡単である事から、ダイエットのファーストステップとしてはとても良い方法です。

特に他のダイエットをチマチマやってたんじゃぁ埒が明かない程の肥満状態にある方や短期間で肉体改造をする必要のあるアスリートなどには有効な手段と言えます。

なるべく厳格に行い3ヶ月から半年である程度の結果を出して、プラトーに入る前に普通の質の良い糖質・脂質を摂る食生活に戻すべきでしょう。

アスリートなど強度の高い競技練習を継続しながら行う場合は、筋力の低下が起こっていないかテストしながら、水分補給や体のケアを十分行い体温の変化なども含め体調管理をしっかり行う。

ダイエットよりもその先にある競技力向上を見据えて、ダイエット後に如何にして競技力を高められる体の状態に出来るかを考えながら取組むこと。

極端な方法は常にリスクを伴うものです。大切なのは極端な方法に頼らなくても自分のコンディションを整えられるように準備すること。

例えるならば糖質制限ダイエットは長期間掃除していなかったキッチンの頑固な油汚れを落とす為の強烈な洗剤のようなものだと思ってください。

それに比べて普通のダイエットは汚れないように毎日掃除するようなものです。
毎日使うと手荒れはするし環境にも良くない、シンクも傷つくでしょう。

ダイエットでもトレーニング方法でもそうですが、一つの方法で全てが上手くいく事は無く、常にベストミックスを探しながら自分に合った方法を探していかねばなりません。

その一つの手段として糖質制限を理解して行ってください。

 

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■コラム執筆者

佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 241kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝

ボディビルディング
2000~2001年  関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年     全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年     日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年     関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

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