2月27日〜28日、ノーギアパワーリフティングの全日本大会である第20回ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会が千葉県市川市のゼットエー武道館で開催され、私も参加させて頂きました。
エントリー人数は過去最高の225名、私自身この大会には2007年から毎年出場しており通算10回目の参加になりましたが、今回は近年のノーギアパワーの盛り上がりを象徴するような白熱した大会になったのではないかと思います。
今回のコラムではジャパンクラシックパワーリフティング選手権各階級の結果をレポしていこうと思います。
【男子一般】
《59kg級》
1位蛯原選手537.5kg
2位佐竹選手535.5kg
3位久保選手516kg
4位水野選手515kg
5位村田選手490.5kg
大会二連覇中の蛯原選手、ジュニアチャンピオンの佐竹選手、和歌山国体を制した宮城選手の三つ巴の戦いが予想された59kg級。
試合はジュニアとのダブルエントリーで先に試技を終わらせた佐竹選手の記録535.5kgを宮城選手と蛯原選手が追いかける展開となりました。
スクワットを得意とする宮城選手は第一試技から日本記録197.5kgに挑戦するも三連続で失敗し残念ながら失格、そんな中経験豊富な蛯原選手は堅実な試合運びで記録を積み重ね最終的に佐竹選手のトータルを上回り三連覇を決めました。
3位にはデッドリフト日本記録236kgを成功させた久保選手、4位にはベテラン水野選手、そして5位には高校生の村田選手がランクインしています。
《66kg級》
1位井上選手645kg(男子ベストリフター)
2位渋谷選手621.5kg
3位古清水選手585kg
4位木村選手540kg
5位井戸選手530kg
ベストリフター常連の絶対王者井上選手に渋谷選手が挑む昨年の和歌山国体と同じ構図となった66kg級。
渋谷選手はスクワットで日本記録231.5kgを成功させ井上選手をリードしましたが、井上選手はベンチプレスで圧巻の170kgを成功、一気に渋谷選手を引き離すとそのままデッドリフトでもリードを広げ優勝を決めました。
井上選手と渋谷選手は今大会のウィルクス・スコア(フォーミュラ)でも1位2位となり、和歌山国体に続いてこの二選手の勝負が全階級で最もハイレベルな戦いとなっています。
3位にはデッドリフト日本記録260kgを成功させた国際武道大の古清水選手、5位にスクワットで強さを見せたウェイトリフティング出身の井戸選手がランクインしました。
《74kg級》
1位伊勢崎選手640kg
2位池上選手605kg
3位大島選手605kg
4位宮崎選手595kg
5位山本選手592.5kg
全階級最多の23人が出場した74kg級、和歌山国体で圧勝している伊勢崎選手が日本記録更新も含めどこまで記録を伸ばすのか注目されました。
伊勢崎選手は今回残念ながら大会直前の怪我があり本来の実力を発揮できない状態でしたが、しかしそんな中でも2位に35kg差をつけて危なげのない勝利でした。
大接戦の2位争いを制したのは池上選手、3位には昨年までジュニアだった大島選手が食い込んでいます。
《83kg級》
1位福島選手665kg
2位信田選手645kg
3位日高選手627.5kg
4位横田選手627.5kg
5位迫田選手597.5kg
83kg級はフルギアベンチ世界チャンピオン福島選手と新鋭信田選手の戦いとなりました。
三種の重量から長身の体型までよく似ている両選手はスクワットとベンチプレスでほぼ互角の記録を出し勝負はデッドリフトへ、最後はベテラン福島選手が確実に三本取って競り勝ちました。
準優勝の信田選手ですが昨年から飛躍的に記録を伸ばしており、今後83kg級の中心選手になっていきそうです。
3位は愛知の日高選手、昨年一昨年の王者横田選手は体調を崩していた事もあり記録を落とし4位になっています、83kg級は強豪の佐名木選手や松本選手も体調不良等で欠場しており、真冬の大会の体調管理の難しさを感じさせました。
《93kg級》
1位山本選手710kg
2位久保選手707.5kg
3位風張選手690kg
4位西川選手685kg
5位落合選手680kg
ウェイトリフティング日本記録保持者山本選手の参戦で今大会最注目の階級となった93kg級、優勝はその山本選手と目下急成長中の久保選手との間で争われました。
山本選手はスクワットで第二第三試技を落とすも前回の大会から20kg以上伸ばしてきたベンチプレスで挽回、デッドリフト第三試技では逆転の282.5kgを成功させて衝撃的な優勝を遂げました。
3位には長引く怪我でここ数年本来の実力を発揮できていない風張選手、来年は怪我を治しての復活を期待したいです。
この階級も5位の落合選手や6位の内藤選手といった新しい力が台頭しており、今後急激に勢力図が変わっていく可能性がありそうです。
《105kg級》
1位武田選手768kg
2位平井選手680kg
3位佐野選手675kg
4位山田選手650kg
5位中根選手625kg
66kg級井上選手と並んで日本ノーギアパワー界の絶対的エース武田選手、今大会でもベンチプレス日本記録213kgを成功させるなど圧倒的な強さで他を寄せつけずに優勝を決めています。
武田選手は日本の三種パワーリフティングの歴史でも数少ない重量級で世界に通用する選手であり、6月に開催される世界クラシックパワーリフティング選手権での表彰台獲得が期待されています。
長身デッドリフター佐野選手と近年頭角を現している平井選手の勝負になった2位争いは、昨年から大幅に記録を伸ばした平井選手に軍配が上がりました、3位となった佐野選手は今大会唯一のデッドリフト300kgオーバーを成功させています。
《120kg級》
1位葛西選手750kg
2位渡辺選手735kg
3位及川選手725.5kg
4位宮本選手682.5kg
5位松澤選手645kg
数年ぶりに全国大会に登場した青森の葛西選手と和歌山国体で57歳にして日本記録を更新した渡辺選手のベテラン対決となった120kg級は葛西選手がトータル日本記録750kgを樹立し優勝、世代交代が進む各階級の中で120kg級は大ベテランの二人がトップを守り続けています。
《120kg超級》
1位海老田選手662.5kg
2位秋山選手630kg
3位辻見選手625kg
4位大坊選手622.5kg
5位高橋選手612.5kg
海老田選手と秋山選手の優勝争いとなった120kg超級、海老田選手がサブトータルで大きくリードし、デッドリフトを得意とする秋山選手は最終試技で逆転をかけるも失敗、海老田選手の連覇となりました。
【女子一般】
《47kg級》
1位可児選手338kg(女子ベストリフター)
《52kg級》
1位古屋選手358kg
《57kg級》
1位加藤選手355kg
《63kg級》
1位前野選手325kg
《72kg級》
1位野間口選手395kg
《84kg級》
1位梅村選手378.5kg
《84kg超級》
出場者無し
女子は47kg級と52kg級で可児選手と古屋選手が順当に優勝、毎年着実に記録を伸ばす可児選手は今回も自身の日本記録を更新しています。
57kg級ではフルギアチャンピオンの加藤選手が居鶴選手との戦いを制しノーギア全国大会初参加にして初優勝、63kg級は若手の前野選手が初優勝をしています。
72kg級は野間口選手と竹内選手の争いになり、デッドリフトを得意とする野間口選手が逆転勝利。
84kg級ではこちらも全国初出場の梅村選手が優勝しました。
【ジュニア】
男子ジュニア
《53kg級》
1位丹選手415.5
《59kg級》
1位佐竹選手535.5
《66kg級》
1位木内選手592.5
《74kg級》
1位池口選手567.5
《83kg級》
1位古川選手650kg
《93kg級》
1位伊藤選手560kg
《105kg級》
1位坂本選手615kg
《120kg級》
1位佐野選手712.5kg
《120kg超級》
1位船水選手651kg
女子ジュニア
《43kg級》
1位藤野選手165kg
《47kg級》
1位入船選手245kg
《52kg級》
1位伊東選手280kg
《57kg級》
出場者無し
《63kg級》
1位寺原選手392.5kg
《72kg級》
1位窓場選手400kg
《84kg級》
出場者無し
《84kg超級》
出場者無し
ジュニア部門も参加人数が昨年より大幅に増加しレベルも急上昇しています。
中でも京都学園大学や青山学院大学の選手が高記録を連発。
男子では佐竹選手(59kg級、青山学院大学)、木内選手(66kg級、青山学院大学)、古清水選手(66kg級、国際武道大学)、古川選手(83kg級、京都学園大学)、佐野選手(120kg級、京都学園大学)の5人が一般部門のデッドリフト日本記録を更新、トータルでも一般部門の上位陣に引けを取らない記録を出しています。
女子では寺原選手(63kg級、京都学園大学)がスクワットで、窓場選手(72kg級、京都学園大学)がデッドリフトで一般日本記録を更新、この二選手はトータル記録で一般部門の優勝者を上回りました。
【総評】
今回のジャパンクラシックパワーリフティング選手権は参加者の増加に伴い選手層も厚くなり、どの階級も見応えのある戦いが繰り広げられていました。
若手選手やジュニア選手の活躍も目立ち、他競技からの参加者も増え、今後のパワーリフティングの発展に大きな期待が持てる内容的にも素晴らしい大会になったのではないでしょうか。
そして今大会最大の衝撃はやはりウェイトリフター山本選手の見せた驚異的な強さでした。
フォームもトレーニング内容も一般的なパワーリフティングのスタイルとは全く違う山本選手の強さには、日本のパワーリフティングが今後レベルアップしていく為のヒントがあるのではないかと感じました。
今大会では他にも、高頻度高強度での練習を導入している京都学園大学パワーリフティング部の選手達も日本記録を連発し非常に高い実力を見せています
これはやはり、日本のパワーリフティングのトレーニング理論がこれまで主流であった「スクワットやデッドリフトは週1回、頻繁に高重量を持つべきではない」というどちらかと言うとボディビル的な理論から大きく転換する時期に来ているのだと考えられます、これからは国内外の強豪選手や他競技のトレーニング理論も研究し、新しいパワーリフティングのトレーニング理論を構築していく必要があるのではないでしょうか。
【私自身の結果】
私の結果は以下のようなものになりました。
スクワット235kg(自己ベスト-5kg)
ベンチプレス160kg(自己ベスト-5kg)
デッドリフト267.5kg(自己ベスト+5kg)
トータル662.5kg(自己ベスト+2.5kg)
男子一般93kg級7位
スクワットとベンチプレスで目標としていた記録を出せず、デッドリフトでなんとか持ち直しトータルは自己ベスト+2.5kgと少しだけ更新する事ができましたが、順位は過去に参加した全国大会で最低の7位となり、目標としていた国際大会の出場権を得る事は出来ませんでした。
10回目のジャパンクラシックパワー参加で初めて6位入賞も出来ず、年々レベルアップするノーギアパワーの厳しさを感じています。
この先もう一度全国で表彰台争いが出来る位置に戻るには、もう一段階レベルアップする必要があり、その為には現在一番の弱点で尚且つ伸びしろがあると感じるスクワットの強化が鍵だと考えています。
これからまた5月の国体東海予選、そして9月の岩手国体に向けて練習を再開していきます。
急速に世代交代が進むノーギアパワーリフティングですが、新しい世代の選手達に置いて行かれぬよう私も更に記録を伸ばしていきます!
<デッドリフト動画>
自己ベストを5kg更新したデッドリフト、フックグリップによりグリップの不安が無くなった事が記録の伸びにに繋がりました。
※掲載している記録に誤りがありました場合は、都度修正させていただきます。
コラム用メールアドレス: column@sbdapparel.jp
※どのコラム宛かを明記してください。
※お送りいただいたメールの内容は、コラムで取り上げられる事があります。
■コラム執筆者
神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット240kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位