皆さんこんにちは!SBDコラムニストの鈴木佑輔です。
今年はやたらとくしゃみが多く、とうとう花粉症になってしまったか・・・という感じです。
5月には南アフリカ共和国にて開催される、「第1回世界クラシックベンチプレス選手権」がありますので、トレーニングにも熱が入っております!
新年度が始まり、日本各地で県大会が多く開かれる時期です。
長野県でも5月8日に春季パワーリフティング・ベンチプレス選手権が開かれますが、大会初参加の方も多くいらっしゃいます。
大会において重要なのは、運営を支える事務局の方はもちろん、リフターにとってある意味生命線でもある補助員の存在を忘れてはなりません。
補助員の方々に活気があり、素晴らしいサポートだな、安心できるなと感じることが出来るならば、より良いパフォーマンスが期待できますよね。
それは普段からの練習でも同じことが言えると思います。
SNSなどで動画がたくさんアップされているのでご覧いただければと思いますが、強豪ジムでのサポートは見ていて本当にリフターがやりやすいように声かけや立ち位置など工夫されています。
普段はサポートを受ける側の方も、自分自身がサポートすることが上手になれば、周りの成績も伸びてくるのを肌で感じることが出来ますし何より自分自身にとってメリットがたくさんあります。
今回は、サポート、リフターの補助について書かせて頂きたいと思います。
補助員を行うメリット
もっとも近い位置でリフターの動きを見ることが出来る
例えば周りに強い選手がいるのであれば、その選手を参考にすることが多いと思います。
その際に選手の考え方なりトレーニングルーティンなり、聞いて覚えることもありますが、何より体の動かし方やシャフトへのアプローチ、さらに細かい部分(手首足首、指など)を観察することが重要です。
センター補助やサイド補助など、様々な角度から見ることが可能です。
横から見る場合と上から見る場合、両方を合わせて3次元で見ることでより深い理解が得られるはずです。
修正点を客観的につかむことが出来るようになる
逆に、自分よりも未熟な選手のサポートに入る場合です。
もちろん、自分よりも強くキャリアの長い選手につく場合も同様ですが、上から見た時にシャフトが傾いているだとか、体の動きがスムーズではないなと感じることがあると思います。
意外と本人が気付いていないところにも補助をしていると気付きがあります。
この感覚をより多く養っていると、自分にとって良いフォームとそうでないフォームが客観的に分かるようになります。
常に他者のことを自分に置き換えて、良いところと悪いところを取捨選択できるようになりましょう。
デメリットとしては、あまりに自分とかけ離れた動きや印象の悪い動きを見続けると、自分のフォームが崩れることが非常に多いので注意が必要です。(動画なども同様です)
視覚による影響は本当に大きいので注意してください。
その点については良し悪しを自覚しておくことでシャットアウトすることが出来ますので、補助についた後は脳内の整理をすることを忘れずに。
練習環境をより快適なものに出来る
ジムの雰囲気など目に見えないけれど肌で感じるものってあると思います。
メンバー同士がサポートしたり声を掛け合ったりなど、ポジティブな要素が増えれば増えるほど、活気があふれて自分にとっても快適で安心できる環境になるはずです。
自分がサポートに入り、安心してリフターがトレーニングしてもらえれば、逆に自分のサポートも頼みやすいですしお互いにアドバイスなども積極的にしやすくなると思います。
もちろん黙々とトレーニングに励むのも良いですが、上記のようなメリットもありますので、いろいろな人のサポートについて交流を深めつつ自分自身の参考にしていくと良いかと思います。
最低限のマナーを守りつつどんどんサポートしていきましょう!
実際の流れ
それでは、どのようなサポートをしていくのが良いのかを書いていきたいと思います。
これは人それぞれサポートされることにも好みの問題がありますので、一概にこれが一番のサポートだ!とは言えないですが、基本的な部分を守りつつリフターの集中力を妨げずにサポートすれば間違いないと思います。
スクワット編
特に高重量のスクワットの場合、リフターの後ろに1人、シャフトの左右に1人ずつと、3人がかりで行うことが多いです。
まず、後ろ側の補助をする場合ですが必ずリフターの下から支える意識を持ってください。
ごく軽い重量の場合にはバーの上から手を出すこともありますが、基本的には脇の下から支えます。
リフターがスクワットする動作に合わせて自分もスクワットするイメージで一緒に動き、その際には常に補助がすぐに出来るように脇の下から10センチくらいのところに手を入れておきましょう。
例えば8レップ目標でセットを組む場合、6回目以降などは要注意です。
もしも潰れてしまったら、なるべく素早く補助に入りますが、リフター自身が力を抜かないように声を掛けることも大事だと思います。
(試合などでは負担を掛けないように一気に取る)
次にサイド補助ですが、これもシャフトの動きに合わせて自分もスクワットしますが、シャフトの先を見ているのではなく、あくまでもリフターの動きを見てサポートしてください。
そして8レップ目標で完遂した場合も、リフターの余力がなさそうであればラックに戻すときにサイド側でラックインをサポートすることで未然に事故を防ぐことが出来ます。
ベンチプレス編
基本的にはリフターの頭側に1人の補助が一般的かと思います。
ステップ台がある場合にはステップの上で構え、掌は自分側に向くようにします。
シャフトの動きに合わせて上体を前傾させていくイメージで行いますが、ここでの立ち位置が地味にリフターに影響を与えますので、写真のように股関節を後ろに引いてスタンバイするのが良いです。
少し高度なサポートになりますが、レップの途中でシャフトの軌道がずれることがある場合には、指の第一関節を添えておくようなイメージで軌道を修正してあげるのも良いでしょう。
軌道がずれると怪我のもととなります。
補助に入るタイミングですが、基本的にはリフターが頑張っている場合にはなるべく触れないようにしますが、バーが少しでも下がった場合には速やかに取ってしまった方が良いです。
人によっては「まだ頑張れたのに何で取ったんだ!」という場合もあるかと思いますが、自分の場合は一旦ごく短い休憩を入れてもう1レップするように勧めます。
あらかじめリフターとサポートについて話し合って決めておいたほうが間違いないです。
シャフトをラックに戻す際にはしっかりと握り、少し上に引きながらラックの背にシャフトを押し付けるようにして戻すようにします。
特に高重量の場合は股関節をシャフトに押し付けて自分側に引き込むようにし、シャフトがバウンドしてリフター側に戻らないようにしましょう。
センター補助(リフトオフ)
特にベンチプレス競技をされている方は、ラックから外す時に補助の方に手伝ってもらうことが多いです。
センター補助は力の入れ加減が非常に重要ですが、第一にセンター補助につく相手のウォームアップから見ていることが大事です。
それにより、大体のシャフトの構える位置や手首の形、取るタイミング(呼吸や体の力加減に合わせる)などをあらかじめ確認することが出来ます。
基本的に力いっぱい補助することはなく、足りない分を補うようなイメージで良いかと思います。
140kgの重量を動かす際に、センター補助で10kg分、といったイメージでしょうか。
これが40kgの重量に対して10kgだと多すぎるので3~5kg助ける、という具合で調整してください。
リフターが実際にシャフトに対して力を入れ始めるよりも前から、シャフトを少し引っ張り上げておくと良いでしょう。
また、構えの位置まで来たら急激に手を離すのではなく、リフターの掌にそっと置くようなイメージで行うとフォームも崩れづらくなります。
リフターの気持ちになって動くことが重要です。
筋トレ編
難しいのがダンベルのサポートです。
例えばダンベルショルダープレスなどはリフターの力とサポートの力のバランスが崩れるとダンベルが頭上に向かって落ちてきますので注意が必要です。
肘もしくは手首を支点にサポートしますが、どちらもダンベルの軌道がずれないように力を加えていく必要があります。
とはいえ、1RMを狙うことはダンベルトレーニングにおいてはそこまで多いことはないので、ダンベルに対してリフターの力が足りなすぎることはないかと思います。
10レップで8・9・10レップ目に多少のサポートが必要な程度です。
これも40kgのダンベルに対してせいぜい5kg分が必要なくらいですので、力をいれるというよりはバランスを保持し、リフターの身体の動きを見て軌道がずれないようにサポートしましょう。
この写真ではダンベルショルダープレスのサポートを例に取っていますが、どちらもリフターの動きをサポートし、左右のバランスをしっかり取ることで怪我の防止につながります。
おまけ
フォースドレップス
これはリスクを伴うので行わない場合も多いですが、たとえば100kgで8回が限界の人に対して、少しのサポートを入れて10回まで行わせるようなトレーニング方法です。
ネガティブ(シャフトが降りる)際に発揮できる筋力はポジティブ(シャフトが挙がる)の筋力の1.5倍とも言われていますので、仮に8回しか挙がらなくても、降ろすことは出来ます。
そして自力で降ろしたら挙げる際にサポートをし、レップを積み重ねていきます。
サポートにおいても声掛けを十分にしてあげると良いと思います。
ただし、重要なのは降ろす時に十分にコントロール出来ていることが必須ですので、+3回が限度かと思います。
サポートする場合には、挙げる力をスムーズに出すことを心がけ、降ろす時にも軽く手を添えておくと軌道がずれずに怪我のリスクを軽減することが出来ます。
フォースドレップスに関しては最後の1セットで十分ですし、サポートする側のトレーニングにならないようにリフターも注意しましょう。
徒手抵抗
これは補助というよりもトレーニング器具になるつもりで行います。
バーベルカールのネガティブ動作を例にあげると、バーベルの中央を持ち、リフターとサポートする側との力比べのようなイメージです。
ただし、あくまでもサポートする側は急激な出力を行わず、ゆっくりじっくり降ろす(降ろさせる)ことで筋肉の緊張時間を伸ばし、相手の力が本当に出し切れるようにしてあげましょう。
様々なパターンで使えますが、対象の筋肉にしっかりと自分の力を乗せることが重要で、あまりに体を反ってしまったり首に力が入ると怪我の原因となってしまうので、軌道がずれるようであればそこを修正してあげつつ、場合によっては相手に声を掛けて中断するのも必要です。
これもある意味熟練の技が必要ですし、相手の顔色を見ながら行うのでよく相談して決めると良いと思います。
以上、補助のやり方をテーマに書かせて頂きました。
補助は人のためにするだけでなく、自分のためにもなることです。
補助が上手な人は総じて自分のトレーニングの仕方も上手です。
自分のトレーニングが上手になれば補助も上手になりますし、逆もまたしかりということで、積極的に補助についてみてください!
皆さんのご参考になれば幸いです。
ありがとうございました。
コラムニストやコラム内容についてのメッセージは下記のアドレスまでお送りください。
コラム用メールアドレス: column@sbdapparel.jp
※どのコラム宛かを明記してください。
※お送りいただいたメールの内容は、コラムで取り上げられる事があります。
■コラム執筆者
鈴木佑輔
長野県パワーリフティング協会副理事長
所属 B.A.D.
http://www.bodyartdesign.net/
ジャパンクラシックベンチプレス選手権5連覇
2010年~2015年
2014年アジア・オセアニア選手権MVP
66㎏級ベンチプレス ベスト記録 190.5㎏
日本記録・アジア記録保持
74㎏級ベンチプレス ベスト記録 212㎏
アジア記録保持