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第21回ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会レポ

【10年ぶりの愛知県岡崎市でのノーギアパワー全国大会開催】

今年もノーギアパワーリフティング日本一を決める大会、ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会が開催されました。

今回の会場は愛知県岡崎市の岡崎市中央総合公園体育館、2007年3月に開催されたジャパンオープンパワー(ジャパンクラシックパワーの旧名称)以来約10年ぶりの岡崎市でのノーギアパワー全国大会開催となります。

この10年前に開催された大会は筆者の初めて参加した全国大会だったのですが、当時はまだ参加標準記録も無く、ジュニア・一般・マスターズ合わせて参加者130人程、今回と同じ会場で日曜日の1日開催でも終わる規模の大会でした。

その後参加標準記録が設定されマスターズ部門が別開催になったにも関わらず今大会の参加者は245人と10年前の倍近くまで増えています。

レベルや選手層の厚さも随分変わっており、ここ数年は新たな強豪選手が次々と現れて上位入賞のボーダーラインも上がり続け、一昔前とは別世界のようなハイレベルな大会になりつつあります。

【各階級レポ】

 

※男子一般

59kg級

昨年と同様、蛯原選手、佐竹選手、宮城選手の三強の争いとなった男子59kg級。

中でも今回絶好調だったのが大会3連覇中の蛯原選手、スクワットで197.5kgの日本記録を樹立するとベンチプレスでも142.5kgを成功させサブトータルでライバル2人を大きくリードします。

蛯原選手はデッドリフトでも確実に3試技成功させ自らの日本記録を大きく更新する560kgまでトータルを伸ばします、ジュニア世代の旗手佐竹選手も最後まで食らいつきデッドリフト最終試技で逆転をかけますが惜しくも失敗、蛯原選手が4連覇を決めました。

1位、蛯原選手560kg

2位、佐竹選手550kg

3位、宮城選手540kg

《59kg級優勝 蛯原選手》

 

66kg級

今年も2012年世界大会準優勝の絶対王者井上選手の独羶場となった66kg級、選手数が多く層の厚い66kg級ですが他の追随を許さない圧倒的な強さを誇り長年トップに君臨し続けています。

2位と3位には大学生の古清水選手と杉浦選手がランクインしました、ジュニア部門でベストリフターを獲得した木内選手も含めこの階級は若手世代の台頭が顕著となっています。

1位、井上選手645kg

2位、古清水選手575kg

3位、杉浦選手565kg

74kg級

日本記録保持者比嘉選手、前年度チャンピオンの伊勢崎選手、SBDアスリート渋谷選手と鈴木選手、更には若手の池上選手、大島選手、山本選手、初出場のデヴィン選手といった強豪選手が揃い踏みした事で今回注目の階級となったのが74kg級。

この中でも圧巻だったのが比嘉選手、スクワットで世界記録を上回る270kgを成功させ、デッドリフトでも日本記録302.5kgに成功、トータルは725kgと驚異的な記録を叩き出しました。

この数字は昨年の世界大会優勝記録と僅か5kg差という世界でもトップレベルの記録で、比嘉選手は今後世界での活躍が大いに期待されます。

2位は伊勢崎選手、白熱した3位争いは逆転のデッドリフトを成功させた池上選手が制しました。

1位、比嘉選手725kg(男子ベストリフター)

2位、伊勢崎選手640kg

3位、池上選手620kg

 

《お互いをライバルと認める伊勢崎選手と渋谷選手、74kg級は非常にハイレベルな上位争いが繰り広げられました》

83kg級

全階級最多の30人ものエントリーがあったこの階級、国内の大会では過去に例が無いと思われる3グループでの開催となりました。

(三種パワーリフティングのルールでは1グループの人数が14人以下と規定されている為、1階級の人数が29人を超えるとグループが3つに分けられます)

エントリー記録上位選手の集まる最終グループは10人全員がトータル600kgを超える大激戦に。

その中でも確実な試技を積み重ねてトータルを伸ばしたベンチプレス世界チャンピオンの福島選手が今年も優勝を飾りました、過去に2度の優勝経験がある横田選手も自己ベストを更新し福島選手を追い詰めますが最後あと一歩及ばず。

3位は信田選手、ジャパンクラシックベンチに続いてノーギア2冠達成に挑みましたが初優勝はなりませんでした。

1位、福島選手667.5kg

2位、横田選手662.5kg

3位、信田選手655kg

93kg級

ベスト記録が700kgを超えている風張選手、西川選手、重岡選手を始め、急激に記録を伸ばす落合選手と内藤選手、ジュニアの古川選手、2003年以来約14年ぶりのノーギア全日本に出場した地元愛知県の大ベテランの宇佐美選手と大混戦が予想された93kg級。

試合展開はサブトータルの圧倒的に強い風張選手をその他の選手が追う展開となり、デッドリフト第一試技終了時点で1位〜5位までの選手がトータル680kg前後で並ぶ白熱した競り合いとなりました。

一試技毎に順位の入れ替わるシーソーゲームを制したのは46歳大ベテランの宇佐美選手、若い選手達の活躍が目立つ中、今大会男子選手では最年長のチャンピオンとなりました。

1位、宇佐美選手705kg

2位、風張選手705kg

3位、落合選手702.5kg

105kg級

この階級は世界クラシック日本選手団の大黒柱武田選手がどこまで記録を伸ばすのかに注目が集まりました。

武田選手はスクワット310kg(日本記録)ベンチプレス215kgデッドリフト303kg(日本記録)と三種目全てで今大会最高重量を成功させてトータルは828kg(日本記録)、2位以下の選手を全く寄せ付けませんでした。

欧米選手の層が非常に厚い105kg級ですが武田選手の記録は世界でもトップレベル、世界大会でもメダルの期待がかかります。

2位は平井選手が記録を700kgの大台に乗せ武田選手に続く105kg級2番手の地位を確かなものとしています。

3位争いはデッドリフトの強い岡山県の大光選手が制しました。

1位、武田選手828kg

2位、平井選手700kg

3位、大光選手667.5kg

120kg級

気合の入った試技が印象的な兵庫の阪田選手が初制覇、渡辺選手葛西選手という二人の大ベテランの君臨する120kg級ですが阪田選手の出現で今後勢力図も変わってくるのではないでしょうか。

1位、阪田選手702.5kg

2位、秋田選手657.5kg

3位、田邊選手640kg

120kg超級

昨年のチャンピオン海老田選手と岩手国体を制した秋山選手の争いとなった最重量級、勝負はデッドリフトまでもつれ込みましたが海老田選手が連覇しています。

1位、海老田選手695kg

2位、秋山選手680kg

3位、加瀬選手645kg

※女子一般

47kg級

1位、可児選手344kg(女子ベストリフター)

2位、辻選手275kg

3位、青木選手270kg

52kg級

1位、木村選手287.5kg

2位、磯田選手262.5kg

3位、糸井選手240kg

57kg級

1位、中井選手290kg

2位、番選手270kg

3位、田中選手232.5kg

63kg級

1位、西田選手370kg

2位、上田選手362.5kg

3位、堤選手342.5kg

72kg級

1位、岡田選手410.5kg

2位、竹内選手377.5kg

3位、照屋選手340kg

84kg級

1位、梅村選手389kg

84kg超級

出場者無し

女子は世界大会で活躍する47kg級の可児選手が頭一つ抜けた強さで順当にMVPを獲得、毎年着実に記録を伸ばし今大会でも自らの日本記録を更新しています。

今回注目階級となったのが63kg級、地元愛知の上田選手と元ジュニアチャンピオンの西田選手を中心とした戦いが予想され、試合はやはりこの二人の優勝争いに。

最後は西田選手がデッドリフト第三試技で逆転に成功し一般部門での最初の全国大会を優勝で飾りました。

72kg級で初出場初優勝をした岡田選手は非常に筋量が多く欧米の選手のようなバルキーで均整の取れた体型をしており今後女子パワーリフティングを代表する強豪選手になっていきそうな雰囲気を感じました。

 

《女子ベストリフター可児選手》

※ジュニア・サブジュニア

一般部門以上に年々急激に層が厚くなっているジュニア・サブジュニア部門。

全体のレベルも一昔前の一般部門と大差ないくらいまで上がっています。

男子はジュニア世代で佐竹選手と双璧をなす木内選手がウィルクス・スコアでトップを獲得、女子は今年も京都学園勢の活躍が目立ち特に窓場選手は日本記録を大幅に更新する圧倒的な強さを見せました。

サブジュニアでは女子の大西選手がスクワットの一般日本記録を大幅に更新しています、高校生の一般日本記録保持者というのは過去に例が無いのではないでしょうか。

【ウィルクススコアによる種目別トップ5】

今大会各種目のウィルクス・スコア(フォーミュラ)による上位5選手を出してみました。

スクワットトップ5

男子

1位、比嘉選手194.96

2位、武田選手185.87

3位、井上選手177.77

4位、渋谷選手175.44

5位、西村選手173.53

女子

1位、大西選手169.72

2位、窓場選手162.96

3位、西田選手162.87

4位、可児選手157.15

5位、竹内選手150.42

 

ベンチプレストップ5

男子

1位、福島選手134.58

2位、鈴木選手133.07

3位、井上選手130.36

4位、武田選手128.91

5位、信田選手126.92

女子

1位、可児選手104.54

2位、上田選手89.68

3位、竹内選手87.74

4位、窓場選手86.57

5位、照屋選手85.93

 

デッドリフトトップ5

男子

1位、比嘉選手218.21

2位、木内選手207.4

3位、井上選手201.47

4位、大谷選手201.13

5位、佐竹選手200.16

女子

1位、可児選手202.35

2位、窓場選手188.42

3位、木村選手185.52

4位、岡田選手183.99

5位、山崎選手174.69

 

トータルトップ5

男子

1位、比嘉選手523.72

2位、井上選手509.9

3位、武田選手496.39

4位、蛯原選手489.31

5位、佐竹選手478.66

女子

1位、可児選手464.42

2位、窓場選手437.75

3位、岡田選手407.38

4位、大西選手406.02

5位、西田選手401.73

 

優勝選手の平均ウィルクス・スコア

男子一般

463.71

女子一般

387.6

(もし記録に誤り等ありましたらメールでご指摘頂ければすぐ訂正させて頂きます。)

 

【まとめ】

近年ノーギアパワーリフティングは欧米を中心にちょっとしたブームと言っても差し支えない程急速に普及しており、日本でもこの数年は大会参加人数の大幅な増加が見られています。

参加者の増加に伴って国内トップ選手のレベルも年々上がっており、優勝選手の記録の水準は非常に高くなっています。

今大会も比嘉選手、井上選手、武田選手、蛯原選手、可児選手といったウィルクス・スコア上位の選手達は世界大会でメダルの獲得が十分狙える程の記録を残していました。

このまま日本人選手の水準が上がっていけば日本からノーギア世界チャンピオンが誕生する日もきっとそう遠くないと思います、パワーリフティングファンとして今後の日本人選手の世界での活躍が楽しみにです。

しかし一方で、最近はあまりに急激な参加選手の増加で開催都道府県協会がパンク寸前になっているという現実もあり、今回は全国大会の開催に慣れた愛知県協会主催でしたがそれでも役員の方々からはかなりの苦労が伺えました。

土日開催を前提とするなら今大会の参加者245人というのは2日間でやれるほぼ限界の人数、今後更に参加人数は増えていくと考えられますので、来年以降も2日間開催を継続するならば今後は3面開催が前提になると考えられます。

これから大きくなっていく大会規模に対応する為には協会の体制作りや選手一人一人の積極的な協力が必要になってくるのではないでしょうか。

また、4面開催や5面開催を実施している海外の大会運営も参考にしていく必要が出て来ると思われます。

【パワーリフティングの動画配信】

 

パワーリフターYoutuberのハリー君こと風張選手、動画作成の為に2台のカメラで競技風景を撮影していました。

パワーリフティングのようなマイナースポーツは中々マスコミに取り上げられる事も無い為、選手や協会自らがSNSや動画サイトを使い積極的に情報を発信していく事が競技の普及には非常に有効だと感じます。

風張選手のように見やすく編集した動画をアップしている選手の存在は競技の普及にとてもプラスになっているのではないでしょうか。

大会の動画中継も視聴者が増えてきていますので、今後更に高クオリティなものになっていけばいいと感じました。

【自分の結果】

男子一般105kg級6位

検量94.5kg

スクワット240kg

ベンチプレス155kg

デッドリフト255kg

トータル650kg

今回は初めて105kg級でエントリーし、体重を増やしてトータルを自分のパワーリフターとしての大きな目標である700kgまで一気に持っていきたいと考えていたのですが、増量が上手くいかず食べる量を無理に増やした事で逆に調子が落ちてしまい全種目で自己ベストを下回る結果となってしまいました。

5月の国体東海予選は93kg級でのエントリーですので今の体重を維持し大会前にも1〜2kg減量しての出場を目指します、9月の愛媛国体では今度こそトータル700kgを目指します!

 

 

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■コラム執筆者

神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット245kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位

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