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アーノルド&ヨーロッパクラシック選手権 2017

今年もノーギアパワーリフティング最大のイベント、世界クラシック選手権(6月14日~6月25日ベラルーシ共和国ミンスク)が近づいてきました。

エントリーも4月14日の締め切りが近付き徐々に選手の数が増えてきています。

男子エントリー
http://goodlift.info/onenomination.php?cid=403
女子エントリー
http://goodlift.info/onenomination.php?cid=402

昨今のパワーリフティングは欧米での急激な競技人口の増加とレベルの上昇、更にスター選手の出現でかつてない盛り上がりを見せ、これまでで最もエキサイティングな時代を迎えているとも言われます、その中心に位置している大会が世界クラシック選手権と言っていいでしょう。

世界クラシック選手権の盛り上がりに伴って、地域や各国の大会も年々盛り上がりを増しています、今回は世界クラシック選手権の前哨戦とも言える3月に開催された2つのパワーリフティング国際大会についてご紹介します。

【アーノルドスポーツフェスティバル】

3月3日~3月5日 アメリカ、コロンバス

毎年アメリカで開催されるスポーツの祭典アーノルドスポーツフェスティバルUSA。
このフェスティバル中に行われるUSAPL(IPF傘下の米国パワーリフティング協会)主催のパワーリフティング大会は世界大会やアジア大会等と並ぶIPFの国際大会であり、毎年北米の選手を中心とした強豪達によるハイレベルな勝負が繰り広げられています。

※主な開催コンテストと参加条件

アーノルドクラシックではフルギア・ノーギア・三種パワーリフティング・シングルベンチの全てのカテゴリー、更にシングルデッドリフトの大会が開催されます。

特別な大会だけあって参加条件は下記のように非常に厳しく、IPFグランプリは招待選手のみ、名前に「プロ」の付くコンテストは全米チャンピオンクラスの選手か非常に厳しい参加標準記録をクリアした選手のみが参加可能です。

・IPFグランプリ
(ノーギアパワーリフティング、フルギアパワーリフティング)

招待された世界のトップ選手16人によるウィルクス・スコア勝負のコンテスト。

[参加資格]
招待選手のみ

・プロ アメリカン
(ノーギアパワーリフティング、フルギアパワーリフティング)

こちらもウィルクス・スコア勝負のコンテスト、北米のトップ選手が勢揃いしており、優勝するのは世界チャンピオンになるより難しいと言えます。

[参加資格]
ノーギア及びフルギア全米チャンピオン
前年の世界大会一般クラス出場者
ノーギアウィルクス 男子500以上 女子465以上
フルギアウィルクス 男子555以上 女子535以上

・プロ ベンチプレス
(ノーギアベンチプレス、フルギアベンチプレス)

ベンチプレスコンテスト、参加資格はプロアメリカン同様全米のトップ選手か非常に厳しい標準をクリアした選手のみ。

[参加資格]
ノーギア及びフルギア全米チャンピオン
前年の世界大会一般クラス出場者
ノーギアウィルクス 男子125以上 女子100以上
フルギアウィルクス 男子160以上 女子130以上

・プロ デッドリフト
(フルギアデッドリフト)

このデッドリフトコンテストはアーノルドクラシックパワーリフティング大会のメインイベントとも言えるもので、多くの観客が身守るフェスティバル会場でも特に大きなステージ上での試技となります。
動画を見ても他の大会とは全く違う雰囲気での試技になっているのがわかります。

[参加資格]
男性 320kg&200ウィルクス以上
女性 185kg&200ウィルクス以上

このように参加基準は非常に厳しいですが、クリアしてさえいればアメリカ人でなくとも参加の申込みが可能です。

ここで紹介した以外にも少し参加しやすい一般レベルの選手向けコンテストや、地元選手向けのコンテストも開催されています。

※派手な演出

ステージのセット、照明や音響といった演出、それら全てが独特でIPFの国際大会の中でも異色の存在となっています。
今年はそれぞれに特徴のある3つのプラットフォームが用意されていました。

プロアメリカンの行われたプラットフォーム

Arnold setup underway. #usapl #usapowerlifting #asf2017 #arnoldsportsfestival

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正方形に近いバックボードの両サイドに、大きな液晶パネルが設置されたレイアウト。
ノーギアの全米大会等と似た雰囲気で、USAPLらしいデザインのプラットフォームです。

IPFグランプリやプロベンチの行われたプラットフォーム

@roguefitness Strength Stage at the @arnoldsports . #usapl #usapowerlifting #asf2017 @theipf

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@roguefitness Strength Stage at the @arnoldsports . #usapl #usapowerlifting #asf2017 @theipf

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アーノルドならではの巨大なセット、ステージが高い位置にありパワーリフティングでは珍しい雰囲気です。

プロデッドリフトのプラットフォーム

こちらも非常に広いステージ、日本では馴染みの薄いデッドリフト大会ですがアメリカではいくつか大きな大会があり多くの選手が参加しています。

会場の雰囲気(IPFグランプリ)


選手側からはこのような雰囲気になります、これを見ると選手達が「特別な大会」という理由がわかる気がします。

※賞金総額42000ドル

アーノルドクラシックはIPFでは珍しく賞金の出る大会で各階級上位やベストリフターに数百ドル~千ドル程度、2017年は総額で42000ドルの賞金が設定されています。
パワーリフティング大会に多くのスポンサーが付くアメリカならではですね。

※世界記録連発!

北米の強豪選手にとっては地の利のある地元で世界記録を出すチャンスとなりますので、攻めた重量申請が見られ、高記録が連発する傾向にあります。
しかも近年はパワーリフティングの著しいレベルアップもあり、毎年数多くの世界記録が誕生するのが恒例となっています、今年も例に漏れず多くの世界記録が誕生しました。

※今年のアーノルドクラシックパワー、主要選手の試技

《レイ・ウィリアムズ選手》

アーノルドでも主役はやはりこの人、向かうところ敵無しのレイ・ウィリアムズ選手。
今大会ではスクワット477.5kgベンチプレス235kgデッドリフト392.5kgトータル1105kgを記録しパワーリフティングの歴史で初めてノーギアトータルを1100kg台に乗せました。
ウィルクス・スコア(フォーミュラ)は591とこちらもIPF史上最高、その勢いはとどまる事を知りません。

スクワット477.5kg

《ケリー・ブラントン選手》

ウィリアムズ選手と並ぶ北米スーパーヘビー級の雄がカナダのブラントン選手。
アーノルドでは独走するウィリアムズ選手をストップをかけるべく、果敢に高重量に挑戦しました。
スクワットではしゃがみで判定赤だったものの440kgを立ち、ウィリアムズ選手とウェパ選手に続く史上3人目のノーギア1000ポンドスクワットを射程圏内に捉えています。

ベンチプレス265kgと惜しくも失敗したスクワット440kg

《マリア・ティー選手》
女子で最も大きなインパクトを残したのがカナダのティー選手、世界最強のアメリカ代表勢も霞む程の高記録を連発しました。
カナダのパワーリフティングはこの数年の間に驚くほどのレベルアップしており、特に前述のブラントン選手とこのティー選手の二人はカナダチームを牽引する中心人物となっています。

スクワット181kg、ベンチプレス102.5kg、デッドリフト185kg

 

このようにアーノルドスポーツフェスティバルのパワーリフティング大会は豪華な会場や賞金が出る等他の国際大会とは一味違った魅力のある大会になっています。
過去にはフルギアベンチ部門で日本人選手も出場していますので、興味がある選手の方はアーノルドクラシック出場を目指してみるのもいいかもしれません。

アーノルドクラシックパワーリフティング選手権全結果

http://www.usapowerlifting.com/wp-content/uploads/2017/03/2017-Arnold-USAPL-Powerlifting-1.xlsx

【ヨーロッパクラシックパワーリフティング選手権】

3/12~3/19 デンマーク、ティステズ

約30ヶ国から370人もの選手が参加し、ノーギアの国際大会でも世界クラシックに次ぐ規模なのがこのヨーロッパクラシック選手権。
近年は北米の勢いに押され気味ですが元々パワーリフティングの中心地はヨーロッパ、こちらもアーノルドに負けないハイレベルな戦いが繰り広げられました。

※会場

アーノルド程の派手さはありませんが、プラットフォームやアップ場は整然とまとまっており、ヨーロッパらしさを感じさせます。
派手なセットやショー的な演出を好む北米に対して、あくまでもオーソドックスで質実剛健なヨーロッパと、会場の雰囲気には地域の柄が出ますね。

EM weightlifting 😁 #em #weightlifting #gainz #workout #muscles #energy #food #crossfit #fitness #power

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※変化が見られるヨーロッパの勢力図
今大会では団体戦男子でポーランドがロシアとウクライナを抑えて優勝、女子は多くの強豪選手を擁するスウェーデンが圧勝しています。
それにここ数年はイギリスが急激に強くなってきているようです。
ヨーロッパ内でも一昔前のようにロシアとウクライナが圧倒的に強いという時代は終わりつつあります。

※今年のヨーロッパクラシック、主要選手の試技

《ヴィエルズビツキ・クシシュトフ選手》

『ミスターデッドリフト』の異名を持つIPF最強のデッドリフター、93kg級で世界大会を4度制した強豪ですが、今大会は105kg級に階級を上げて初の国際大会参加となりました。
IPFで最初のノーギア400kgデッドリフターになるだろうと言われているヴィエルズビツキ選手、注目の集まったデッドリフトは第一試技370kgを軽く引くもバランスを崩し失敗した為400kg挑戦はせず390kgまでとなりました。
しかし105kg級での国際大会初戦でトータルとデッドリフトの世界記録を更新、体重が100kgを切っている点も驚きです、世界クラシックではデッドリフト400kgオーバーが見られるかもしれません。

デッドリフト390kg

 

《イザベラ・フォン・ワイセンベルグ選手》

人気急上昇中のワイセンベルグ選手も出場、スクワットで世界記録を二連発と世界大会に向けて好調さを伺わせました。
女子72kg級に君臨するキンバリー・ウォルフォード選手とアナ・カステラン選手という二人のベテランを切り崩せるか、注目が集まります。

スクワット192.5kg

ヨーロッパクラシックパワーリフティング選手権全結果

http://goodlift.info/onecompetition.php?lid=0&cid=395

http://goodlift.info/onecompetition.php?lid=0&cid=394

以上、近付く世界クラシック選手権に向けて熱気が高まっている海外のノーギアパワーリフティング大会を紹介させて頂きました。

今年はロシアの薬物問題に伴う出場制限処分も解け、世界のパワーリフティングは昨年以上の大きな盛り上がりが予想されます。
私も、海外のパワーリフティング情報をどんどん発信して、この競技の面白さを皆様にお伝えしていければと考えています。
新しい年度も何卒よろしくお願いいたします。

 

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■コラム執筆者

神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット245kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位

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