こんにちは。93キロ級パワーリフターの風張です。
巷では“ハリー”という名前で皆様に親しんでいただいております為、2019ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会(以下JCP)には、思い切って選手登録とエントリー名を“ハリー”にしてみましたが、大人の都合によりエントリー名は本名となってました。
そんな私はエントリーにある自分の意図していない名前にガックシしてしまいましたが、気を取り直して昨年同様、JCP順位予想を独断と偏見により行っていきたいと思います。
■男子59キロ級
昨年と大きく状況が変化しました。
トータル日本記録577.5キロで優勝した佐竹選手と、毎年必ず上位にランクインしている蛯原選手(昨年555キロ2位)の両名が不在です。
更に加えて昨年3位の久保選手までエントリーしていないではありませんか。
ノミネーションでは2018年末に開催された関東学生パワーリフティング選手権大会にて550キロと非常に好記録を叩き出した久恒選手が、2位以下に大きな差を付けている状況です。
昨年はエントリーしていませんでしたが大ベテランの水野選手が505キロでノミネーション2位。
昨年3位の松崎選手が引き続き500キロでノミネーション3位となっております。
中でも特筆すべき点としては久恒選手と松崎選手でしょうか。
両名ともに20歳前後と成長著しいジュニア世代です。
昨年の表彰台に登った全選手が不在ですので、新しいチャンピオンが誕生する事になりますが、ノミネーション記録550キロの久恒選手が、昨年チャンピオンの佐竹選手が出したトータル日本記録577.5キロにどこまで迫れるかが注目です。
■男子66キロ級
順当に行くと国内負けなしの絶対王者である井上選手が断然有利でしょうか。
昨年は自身が持つトータル日本記録を更に更新して650キロとしましたが、昨年635キロで2位になったジュニア木内選手と、同重量3位の20代池上選手が後ろに控えております。
毎年、井上選手の圧勝で終えているイメージがある66キロ級ですが、木内選手と池上選手の若きリフターの成長もあり、年々この差が埋まりつつあります。
今年こそは絶対王者を木内選手と池上選手が陥落させられるか注目です。
池上選手のスゴい点は階級を66キロ級~83キロ級と変動させていますが、階級を下げても記録の減少が少ない事です。
その為、83キロ級の力を持ったまま、66キロに級に降りてきたイメージで、年々フォーミュラが高くなっております。
是非、この辺りの秘訣は本人から伺いたいところです。
更に前述した昨年59キロ級チャンピオンの佐竹選手がまさかの66キロ級に階級アップ。
昨年はフォーミュラが約500の佐竹選手。
仮に66キロでフォーミュラ500を出せたとすると、トータルは約640キロです。
既に日本記録目前の記録ではありませんか。
もしかすると、井上選手のトータル日本記録650キロを、木内選手、池上選手、佐竹選手の誰かが破り、表彰台の様子が様変わりしているかもしれません。
もしくは絶対王者である井上選手の表彰台陥落も可能性としてゼロとは言えないでしょう。
しかしながら、絶対王者であり続けている井上選手が、王者の力を発揮し若いリフターを押さえて1位を死守する展開も非常にアツいものがあります。
■男子74キロ級
絶対王者の比嘉選手がまさかのエントリー無し。
新チャンピオンは誰になるのでしょうか。
順当に行くと昨年2位(645キロ)の宇都木選手。
比嘉選手の強さが光る74キロ級ですが、20代半ばの74キロ級の選手でスクワット235キロ・デッドリフト260キロの数値は非常に強い数値です。
三種目の比率的に将来的に比嘉選手のような存在になる事も十分にあり得るでしょう。
今後の成長が大いに楽しみである選手です。
この階級は突出した選手がいない事もあり、ノミネーション1位から4位が僅か15キロの範囲に収まっております為、どの選手が勝利するのか注目です。
昨年3位であり年末のアジア大会で優勝し勢いのある渋谷選手(630)に加えて、昨年4位の原田選手(637.5)が2位でノミネーションされております。
■男子83キロ級
昨年の1位と2位が不在により今年は新チャンピオンが誕生します。
優勝候補は国体で活躍しており2011年より破られていなかった福島選手のトータル日本記録を更新した松尾選手です。
30歳手前でトレーニング経験年数が決して短くないはずではありますが、昨年の652.5キロから秋の国体予選ではトータルを690.5キロまで大幅に成長させております。
元々、ボディメイク系のトレーニングに強みがあるイメージではありましたので、搭載した筋肉量に出力が追い付いてきたのでしょうか。
成長の秘訣を探りたいと思っている個人的ナンバー1の選手です。
2位は順当に行くと伊勢崎選手(670)でしょうか。
非常に三種目バランスの良い隙の無い選手です。
そして、個人的にダークホース枠としても最も期待している選手が、ノミネーション13位の平向選手(622.5)です。
この名前にピンと来る方はリフター通である事は間違いありません。
ネタばらしをすると、昨年更新されましたが93キロ級元トータル日本記録保持者(717.5)です。
2012JCPで平向選手が717.5キロ、私が710キロと大激戦を繰り広げました。
数年間に渡り表舞台から姿を消していましたが、ついに今年大復活。
平向選手の性格から、地方大会での622.5キロは流している可能性もあります。
練習ではありますが、デッドリフト300キロを引いた経験もあり、非常に高いポテンシャルから、あっさり83キロ級でも優勝してしまうかもしれません。
■男子93キロ級
私が出場する階級です。
優勝候補筆頭は日本記録保持者の古川選手(720キロ)と2連覇中の宇佐美選手(715キロ)でしょうか。
古川選手は93キロ級のエントリーの中で最も若い大学生であり、まだまだ成長していくであろう年代です。
年齢こそはマスターズ2に間もなく差し掛かる宇佐美選手ではありますが、2017年大会の705キロ、そして昨年の715キロと順当に記録を伸ばしています。
宇佐美選手は10年近くのブランクがあった為に、活躍をご存知無い若い選手も多いかと思いますが、全日本パワーリフティング選手権大会での優勝経験もある大ベテランです。
旧階級である82.5キロ級でのノーギアデッドリフト日本記録292.5キロとノーギアトータル日本記録692.5キロも保持しています。
この692.5キロは現在の83キロ級のトータル日本記録よりも高い数字ですので、宇佐美選手がレジェンドと言われる大ベテランである事が、改めて分かるかと思います。
更には毎年コツコツ記録を伸ばしている昨年715キロの落合選手が続きます。
落合選手は過去に私との差が100キロ近くあった時期もありましたが、昨年大会でついに形勢が逆転しました。
まさに努力の選手です。
基本的な展開としてはノミネーション4位の古賀選手(700キロ)とノミネーション5位の私(690)が、この3名の表彰台を阻止する事が出来るか、といった形でしょうか。
私事ですが、年末のデッドリフトはようやく息を吹き返しおよそ5年ぶりに270キロを引く事に出来ました。
たらればで恐縮ですが、昨年大会で270キロのデッドリフトを成功していれば、トータルは720キロとなっておりましたので、まさに93キロ級のダークホースと言えるのではないでしょうか(すっとぼけ)
今年こそは優勝したいです。
■男子105キロ級
今年も武田選手の一人旅です。
30代前半の武田選手は学生からのキャリアなので、経験年数が短い選手に見られる急激な成長はなかなか難しいと私は考えてしまっているのですが、武田選手の姿を見るとそんな事は無いと勇気付けられる思いです。
昨年はスクワット320キロ、ベンチプレス220キロ、トータル830キロとデッドリフトを除いて日本記録更新しております。
トータル830キロという数字にはとても意味があり、超級のトータル日本記録820キロが国内において最高重量でしたが、これを見事に更新しました。
今年の武田選手はどこまで記録を伸ばすのかが大注目です。
ちなみに昨年のJCPは沖縄でしたので、羽田空港から飛行機に搭乗する訳ですが、席についた私の隣で頭上の荷物置きに手を伸ばしている“何やらデカイ人物”に目を向けたら武田選手でした。
105キロ級の武田選手と93キロ級の私の間に挟まれた武田選手の奥さまは、とても窮屈であっただろうとこの場を借りて謝罪したく思います。
その際に武田選手の強さの秘訣を伺いましたが、太ることを恐れない事と胃を鍛える事の2点だそうです。
是非、若いリフターは参考にしてみてください。
■男子120キロ級
762.5キロのトータル日本記録保持者であるジュニアの山川選手と、昨年758.5kgで優勝した阪田選手の一騎討ちでしょうか。
若く勢いのある山川選手が有利で昨年は阪田選手に破れて725キロで3位でしたが、梅雨時期の世界クラシックパワーでは762.5キロまで大成長。
そして、阪田選手が優勝を決めたウイニングデッドリフト301キロの日本記録を、310キロに更新しました。
この勢いある若者を阪田選手が止める事が出来るのかが注目です。
阪田選手は非常に華があり、前述した301キロのウイニングデッドリフトは本来挑戦しなくても良く、実はもっと軽い重量の成功でもウイニングデッドリフトになっております。
失敗すれば敗北するにも関わらず、敢えて重量を被せずに全力で日本記録に挑み、そして勝つ。
このような選手は他にいるでしょうか。
私なら怖くてそんな事は出来ません。
山川選手の勢いと阪田選手の男気対決は、今大会を締め括る最終セッションに相応しいのではないでしょうか。
■男子超級
5名のエントリーと寂しいセッションになってしまいました。
順当に進めばノミネーションで頭ひとつ抜けている齋藤選手の一人旅でしょうか。
彼は同じノーリミッツ所属で、見た目は偉そうな感じに見えるかもしれませんが、実は繊細でトレーニングを開始するまでの準備を周到に行うタイプです。
確実に成功試技を積み上げて、優勝してくれる事を期待しています。
■最後に
昨年の沖縄で開催されたJCPは過去最高人数更新でしたが、今年は初の300人超えと更に出場人数が増えました。
各種メディアでウエイトトレーニングに対する良い意味での露出が増えている事もあり、筋肉を鍛える事の特別感が払拭され、日常の一部になりつつある事を感じます。
パワーリフティングはジムでのトレーニングの延長線上にある競技ですので、今後も参加人数が増え益々盛り上がる事を期待したいです。
実は私は今年でJCPには10大会連続で出場しておりますが、年々確実に選手の記録が高くなってきており、当然勝つことの難易度も比例して上昇しているのを感じます。
その為、JCPのチャンピオンは一種のブランドであり、とても価値があるものだと確信しております。
誰が各階級を制して日本一になるのか、是非会場に足を運んでその目に焼きつけましょう。
それでは、選手の方々はピーキング真っ最中かと思いますので、怪我せず体調も崩す事なく、無事にJCPを終えられるように頑張って参りましょう。
■コラム執筆者
風張透(ハリー)
Twitter: https://twitter.com/harry072088
ノーギア大会ベスト記録
スクワット255kg
ベンチプレス197.5kg
デッドリフト275kg
トータル710kg
フルギア大会ベスト記録
スクワット337.5kg
ベンチプレス240kg
デッドリフト290kg
トータル845kg
戦績
2014ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会93kg級優勝