【はじめに】
いつもご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
ようやく本格的な夏到来という感じですが皆様如何お過ごしでしょうか?
私はというとこの7月後半は学生達の定期試験に合わせて、多くのクラブが2週間程度のオフに入るため例年は私自身もここで休暇を頂くようにしていて、昨年はちょうどこの時期にあった香港での国際大会に出場していましたが
【元老達が行く‼ 香港国際クラシックインヴィテーショナル参戦記】
今年は6月の世界クラシックで悪化した膝の具合があまり良くないのでトレーニングは軽めにして治療に専念しながら身体全体を休めるように努めています。
【ご報告】
さてそんな休養重視の日々ではありますが、今月も幾つかのご報告から書かせていただきます。
まず1つ目は
7月14日に行われた近畿パワーリフティング選手権大会に私が代表を務めるJPA加盟団体、関西大学S&Cから8名の選手が出場しました。
4月の大阪パワーに引き続き出場している選手もいるため詳しくは4月末のコラムをご覧ください。
【大阪パワーリフティング選手権参戦記 ~3種目をバランスよく強化する難しさと種目間相性~】
男子ジュニア59kg級:優勝
田中晴大選手(関西大学学生S&C:1年)
関西大学学生S&Cにこの春入部した1年生で普段はアメリカンフットボール部をサポートしてくれています。ウエイトトレーニングは大学から初めてまだ3ヶ月ちょっと。勿論パワーリフティングも初出場です。
何と緊張し過ぎて日にちを1日間違えて前日の朝に一度試合会場に来てしまったというハプニングはありましたが、何とか2日連続明石まで行って試合に臨みました。
初出場とは思えない落ち着いた試技で練習ベストを大幅に更新。
8試技を成功させ見事に優勝です。
次はジュニアのJCP標準記録を目指して頑張ります。
男子ジュニア66kg級:優勝
安積祐貴選手(関西大学卒:硬式テニス部トレーナー)
4月の大阪パワーで優勝した硬式テニス部OBの安積選手が近畿にも出場。大阪パワーの記録を3ヵ月で75kg更新し優勝を果たしました。
最早テニスよりも向いてるんじゃないのか?という声が出始めていますがパワーリフティングで得た経験は本業のテニスでも必ず役立ちます。
今後も並行して競技を続けて欲しいと思います。
男子ジュニア66kg級:2位
村山諒選手(関西大学アメリカンフットボール部学生S&C:4年)
4月の大阪パワーで優勝した重田選手に引き続きアメフト部の学生S&Cチームから村山選手が参戦です。
普段はアメフト部のウエイトトレーニングやウォーミングアップ、コンディショニングまでを担当する多忙な時間を割いて自分のトレーニングにも打ち込む村山選手ですが、今回は就職活動の末期とも重なり更に調整が困難な状態ではありましたが、何とか気合で乗り切りパワーリフティング初出場を果たしました。
普段同じジムでトレーニングする安積選手との一騎打ちで、練習でのベスト記録もほぼ同じという接戦でしたがリード出来るはずのベンチを2本落とした事が響き、無念の2位に終わりました。
しかし他競技に挑戦する事で得た経験は必ず本業のアメフトにも生きるので今後の活動に期待します。
男子ジュニア74kg級:優勝 / 男子一般74kg級:3位
藤井崇彰(関西大学学生S&C:4年)
関西大学学生S&C主将の藤井選手がパワーリフティング初参戦です。元々はフィジークやサマスタに出場していた選手で最終学年となる今年はボディビルにチャレンジするものと思われていましたが、就職活動中に方向転換し内定が出た瞬間からパワーリフティングへの転向を表明しました。
最終調整ではスクワットの高さ修正に苦しんでいましたが、本番では勝負強さを発揮しスクワットは三本取り、トータル520kgでジュニアは優勝。一般の部でも三位に入りました。
ジャパンクラシックの標準も獲得したので11月に行われるジャパンクラシックに出場する予定です。
男子ジュニア74kg級:3位
宮森駿(関西大学学生S&C:2年)
大阪パワーでデビューし優勝した宮森選手が近畿大会にも挑戦し3ヵ月で30kg記録を伸ばし3位となりました。
今回はトータル480kgでしたが、今年中には500kgを超えてくれると思います。
普段はアメリカンフットボール部のトレーニングをサポートしながら体育会本部役員も務める多忙な日々ですが、是非時間を作り自分のトレーニングにも力を注いでほしいと思います。
男子ジュニア74kg級:4位
宮本佳樹(関西大学学生S&C:2年)
昨年のジャパンクラシックベンチのジュニア66kg級で3位となった宮本選手がパワーリフティング初参戦です。
ベンチプレスでは第三試技でジュニアの日本記録にも挑戦しましたが残念ながら失敗。しかし未知数だったスクワットとデッドリフトは見事に3本成功させました。
次のターゲットは9月にモンゴルで開催されるアジアベンチプレスです。66kg級まで絞れるのか少し心配ですが頑張ってくれると信じています。
男子一般74kg級:優勝
福住昌也(関西大学卒:ウエイトリフテインング部コーチ)
大阪パワーで最優秀選手賞を獲得した福住選手が安定した強さで近畿パワーも優勝し、今年も国体出場権をゲットしました。
若干スクワットの調子が悪かったため大阪パワーよりは記録を落とす結果となりましたが国体までには調子を戻して今年も上位進出を狙います。
男子一般83kg級:8位
宮崎達也(関西大学卒:アメリカンフットボール部コーチ)
関西大学アメリカンフットボール部コーチの宮崎選手がパワーリフティングに初挑戦しました。
残念ながら選手登録を済ませ近畿パワーの申し込みを済ませた直後にアメフトの練習で指を脱臼してしまい、殆ど練習出来ないままルールの確認だけをして試合に臨む事となってしまい、本来の力を出し切れずに終わってしまいました。
しかし他競技にチャレンジした経験は必ずフットボールのコーチングにも生きると思いますので今後の活躍に期待します。
パワーリフティングはウエイトトレーニングの基本三種目の挙上重量を競う競技ですので、彼のように他競技からでも挑戦が可能です。今後も他競技からの挑戦者をどんどん受け入れスポーツ界全体のフィジカル活性化へ繋げていきたいと思います。
因みに私は審判として参加させていただき、2つのセッションを担当し主審も経験させていただきました。
これで私の審判経験は合計6試合で4試合がパワー三種、2試合がベンチプレス大会となりそのうち3試合で主審を経験しているため、二級審判昇級試験までの条件は残り11ヶ月で2試合を経験すれば受験可能となります。
これらについてはまた別のコラムで書かせていただきます。
続きまして
7月21日に行われました大阪クラス別ボディビル選手権大会にも関西大学学生S&Cより1名の出場者がおりますのでご紹介させていただきます。
竹中勇斗(関西大学学生S&C:2年)
ボディビル初出場でしたがジュニアの部で準優勝いたしました。
元々陸上競技の短距離選手だった経験を活かし、普段は関西大学のラグビー部のウエイトトレーニングや怪我から復帰する選手に対するスプリントフォームの改善などを行ってくれています。
トレーニングに対しても非常に研究熱心でサプリメントなど栄養に関してもしっかりと勉強し考えて取り組んでいるといった印象です。今年のオフは必死でバルクアップして来年こそは優勝して全日本ジュニアへもチャレンジして欲しいと思います。
いつもながら長々と申し訳御座いません。
最後に私事ですが、7月9日から11日にかけて東京ビックサイトにて行われました。スポルテックにて9日は
スポーツ/フィットネスの価値創出、トレーナー/インストラクターの価値を如何に高めていくか~本物のボディメイクと身体づくりの専門家とは
というテーマで講義とディスカッションを担当させていただきました。
久々にボディメイクを題材としたセミナーで錚々たるメンバーに囲まれ緊張いたしましたが自分の原点であるボディビルディングが、現在自分が大学で取り組んでいる事にどのように生かされているかについてお話させていただきました。
翌10日は
BULLのブランド名で御馴染みの株式会社ザオバ様のブースにてBIG3セミナーのスクワットのコーナーを担当させていただきました。
因みにベンチプレスはSBDアスリートの鈴木佑輔さん、デッドリフトはSBDコラムニストの栗原弘教さんでしたのでSBD関係者での共演となり楽しくも学びの深い時間となりました。
【今月の本題】
それではようやく今月の本題に移ります。
今月は先月に引き続き6月の世界クラシック参戦記その②として世界大会出場のために必要なトレーニング以外の準備と現地での自分の試合までの過ごし方についてです。
以下の内容は日本を出発した2019年6月2日から私の試合の前日、現地での6月6日までに書いた内容ですので、皆様がご覧になるまでかなりの時差がありますことをご了承ください。
【渡航前の準備と予算】
それではいきなり生々しい話ではありますが、パワーリフティングの国際大会に出場するための費用についての話です。
既にパワーリフティングについて詳しい方は御存知かと思いますが、パワーリフティングでは日本代表として国際大会に参加する場合も基本的に費用はすべて個人負担です。
その為、無事に予選で優勝し国際大会への出場権を得てもお金が無ければ出場する事は出来ません。
そこで今回は「ところでどのくらいお金要るの?」という素朴な疑問にお答えするために今回のスウェーデンでの世界大会に出場するために掛かった金額を例としてあげさせて頂こうと思います。
今後国際大会にチャレンジしようとお考えの方は参考にしていただければと思います。
※日本パワーリフティング協会はIPF(International Powerlifting Federation)の傘下なのでここでいう世界大会・国際大会とはIPF主催の世界大会・国際大会の事ですが、現在ではIPF以外にも国際的に大会を行っている団体はあります。
しかし加盟国数やアンチドーピング、ワールドゲームスへの参加など総合的に見てIPFが最もメジャーな団体であると考えられます。
【必要なお金①:申し込み金】
3万円
まずは最初にJPAに大会への参加申し込みを行わなければなりません。
申し込み金は大会参加費とアンチドーピング費用、団長経費、諸費用などに使われます。
今回は6月2日に出発する日程でしたが書類が届いたのは3月の下旬頃で締め切りは4月10日でした。
この申し込みをした時点でノミネーションに登録されますが、4月30日までに参加中止の連絡をすれば申込金は返って来ます。
【必要なお金②:航空券・旅行保険】
今回の渡航に関わった航空券と必要な旅行保険の料金内訳です。
海外航空券 成田⇔コペンハーゲン 137000円
燃油/入国税 19710円
空港施設使用料 2610円
国内線 行き 伊丹⇒成田 7000円
国内線 帰り 羽田⇒伊丹 7000円
高速バス 帰り 成田⇒羽田 3100円
エイチ・エス損保のネット海外旅行保険(たびとも) 3730円
昨年のカナダカルガリー大会や香港国際の時は関西国際空港から直接行けましたが今回は成田で日本選手団として集合して全員同じ便で現地へ向かいます。そのため国内線での移動も必要でした。
旅行保険はネットで契約出来る安いタイプのものをチョイスしました。
【必要なお金③:ホテル代・バス代・現地通訳代・バンケット代】
ホテル代 16600円×6泊 = 99600円
往路送迎バス 5000円
復路送迎バス 12000円
通訳 1000円
バンケット 4500円
今回はスウェーデンのヘルシンボリという街での試合なのですがスウェーデンの首都ストックホルムから移動するよりも隣のデンマークのコペンハーゲンから陸路で移動した方が近いためコペンハーゲンからのバス代が必要でした。また現地ではテクニカルミーティングなど通訳が必要な場合があるため今回は通訳が帯同していました。
私は国際大会4回目ですが通訳がいるのは初めてでした。
マスターズの世界大会の場合、選手の年齢幅も広く海外渡航経験の無い人や英語に自身の無い人もいるため必要だと思いました。
【必要なお金④:JAPANユニフォーム代】
JAPAN-Tシャツ 2052円
バックプリント代 1080円
ユニフォームジャージ上下 21384円
JAPANハーフパンツ 3078円
送料 1330円
私は4回目の国際大会ですが、JAPANのジャージは3種類持っています。
つまりそれだけジャージがコロコロ変わっているという事です。
普通の競技なら日本代表なのでジャージやユニフォームぐらい協会からもらえるところですが、パワーリフティングの場合これも購入です。
今年は去年のデザインのジャージでも使用して良いとの事でしたが階級を1階級上げたため少し小さくなっていたので今年のものを買いなおしました。
またJAPAN- Tシャツはその大会の名前と出場選手の名前がプリントされた特別なもので記念に1枚買うというのが一般的です。
【必要なお金⑤:メディカルチェック】
健康診断 4860円
これは今年から必要になったもので会社の健康診断と同じような内容なので代用できないのかと聞いてみましたが駄目でした。
【必要なお金⑥現地通貨】
500デンマーククローネ 9540円分
1750スウェーデンクローナ 24937円分
北欧はキャッシュレス化が進んでいると聞いていたので必要ないかとも思いましたが、全然無いのも不安なので少しだけ準備していきました。
因みにホテルは朝食がついていましたが、昼食と夕食は自分で調達するか外食する事になります。
換金は阪急三番街の池田泉州銀行です。
【必要なお金⑦グローバルWIFI】
グローバルWIFI 15833円
これはパワーリフティングの国際大会に限ったものではありませんが、海外旅行に行く際に現地で携帯電話を使えるように準備しなくてはなりません。
勿論ホテル内ではWIFI環境が整っている場合が多く問題ありませんが、今回のように大人数で移動する場合、集合場所が分からなかったりして時間通り集まれない方もいるためホテルの外、特に試合会場でメールやLINEグループを駆使してコミュニケーションをとり合ったりGoogle Mapなどを使えるようにしておく必要があります。
私は毎回グローバルWIFIという海外渡航用のサービスを利用しています。
200ヵ国以上で使えますしネットで簡単に申し込める非常に便利なものです。
事前に申し込んでおけば出発前に日本の空港で受け取り、帰ってきたら返却するというものです。
今回、空港はデンマークで滞在はスウェーデン、そして最終日はデンマークでの観光が3時間あるのでスウェーデンとデンマーク両方で使えるように事前に注文し伊丹空港で出発前に受け取りました。
帰国したら成田空港で返却予定です。
【総合計】
これら事前に準備した今回の総額は416344円でした。
勿論去年はカナダのカルガリーでの開催でしたのでもう少し安かったと思いますし香港国際は1/4ぐらいだったかと思います。
2012年のインドは覚えていませんが…これよりは安かったと思います。
来年もしも同じ世界クラッシクマスターズに行くとすれば開催地は南アフリカのケープタウンですので旅費はもっと高くなるでしょう。
しかし自分の好きな競技で日本代表として海外に行って戦うというのはお金には代えられない素晴らしい経験です。
これを安いと思うか高いと思うかは皆様の御判断に任せるところではありますが、選手はこれを全て自費で支払って国際大会に参加しています。
※世界チャンピオンクラスの選手は自分で払わなくても良い(スポンサーなど)場合もあると思います。
パワーリフティングは他競技に比べ国際大会に参加するハードルの低い競技と言えます。
特にマスターズは出場しやすいと思います。
しかし実は競技レベルのハードルよりもこの費用の負担が大き過ぎて実力のある選手が国際大会に参加しないという事も起こっています。
私のようなマスターズⅠ(40代)の選手は子供の学費や受験、住宅ローンなどにお金がかかる場合が多く、自分の競技(趣味)のために数十万円をかけられる人は多くは無いと思います。
今回も最初のノミネーションで名前の挙がっていた選手は64人でした。
少なくとも最初は「出場したいな」と思っていた人数かと思います。
しかし最終的に参加したのは58人です。
勿論これは費用だけの問題ではなく、仕事や家庭の都合がつかなかった人もいたでしょうし怪我などの故障で参加できなかった人もいるでしょう。
しかし最終的に渡航費の具体的な金額を見て諦めた選手も中にはいるはずです。
これをどうした方が良いとかどうするべきだとか、言う権利は私にはありませんが、今回ありのままに書かせていただいた事で皆さんが考えるきっかけになってくれればと思います。
【11時間35分の移動】
それではお金に纏わる話は終わりにして次は移動時間の話です。
今回の旅程は先に述べた通り一旦成田空港で日本選手団全員が集合して同じ便でコペンハーゲンに向かいそこからバスで国境を越えてスウェーデンのヘルシンボリへ行くという長旅です。
私は自宅最寄り駅を日本時間の朝5時51分発の電車に乗り伊丹空港へ向かいました。
伊丹空港で安倉選手と古田選手と合流し7時50分発の便で成田へ移動します。
成田に着くとそのまま国際線へ移動し指定された搭乗口付近に行くと既に北海道や中部地方から到着していたメンバーがいましたので挨拶と自己紹介を済ませ、そこに関東組が到着して日本選手団合流完了です。
今回は旅行会社HISの添乗員さん付きでしたので団長の中村さん(M1-120kg級:TXP所属)と添乗員の佐藤さんから今後のスケジュールについての説明を受けました。
その後時間となり11時10分発のスカンジナビア航空でコペンハーゲンへ移動しました。
昨年の世界大会で私個人的に最も苦しんだのが時差ボケと白夜でした。
詳しくは昨年のコラムをご覧ください。
【World Classic Championships 2018 Calgary / Canada 参戦記 前編(調整編)】
【World Classic Championships 2018 Calgary / Canada 参戦記 後編(試合編)】
現地に着いてから夜に眠くならなくて眠れずにズルズルとコンディションを崩す事が一番嫌なのでこの行きのフライトでなるべく眠った方が良いのか?我慢して起きていて現地で眠った方が良いのか?
色々と意見はありますが私の場合はなるべく眠らずに眠い状態で現地入りして現地の時間でしっかり初日から寝ようと考えました。
私が過去に経験した最も長いフライトは昨年のカルガリーからの帰りのフライト10時間40分でした。
しかし今回のフライトは11時間35分と更に長いものであったため色々と過ごし方について考えてはみましたが結局映画を観まくるという時間の使い方になってしまいました。
今回のフライト中にチョイスした作品と面白かった順位は以下の通りです。
1位:ボヘミアンラプソディ
もう現地に着いてからもずっとYouTubeでクイーン聞いてます。
2位:グレイテストショーマン
ミュージカル系は苦手なんですが何故か最後まで楽しく観れました。
3位:クリードⅡ
実際に戦っている2人よりセコンドのロッキーとドラゴにばかり感情移入してしまいます。力が入り過ぎて少し首が痛くなりました。
4位:アクアマン
アクション的には良かったのですが、内容が色んな映画の良いとこ取りみたいな感じでした。あと水中アクションものは観ていて息を止めてしまうので飛行機に酔いそうになります。
そんな感じで映画鑑賞と機内食を繰り返し
時間を潰していたのですが、何故か途中から両膝が痛くなって来て長時間同じ姿勢で座っていられなくなってきました。
最終調整でスクワットをした時も痛かった場所なのですが何故こんな座っているだけで悪化したのかは分かりませんが、とにかく酷く痛むようになってしまいました。
そんな訳で最後の1時間ぐらいは殆ど席には座らずトイレ付近で立ってストレッチをして過ごしました。
【コペンハーゲンに到着】
そんな膝の痛みに耐えながらですが何とかデンマークのコペンハーゲンに到着しました。
バスに乗るまで少し時間があったので空港内で物価チェック
早速ダイエットコークと焼き鳥みたいなものをバスの中で食べるために購入しました。
価格は空港内なので少し高い事を計算に入れてもダイエットコーク500mlが24クローナなので380円程度です。
う~ん…高い。
チキンスティックも2本で35クローネなので約560円…まぁ美味しかったけどね。
【バス移動】
コペンハーゲンからエーレスンド海峡を渡ってスウェーデンへ渡ります。
綺麗な海の上に風車が回る光景は「あぁ北欧に来たんだな」と実感させてくれます。
途中国境で一旦バスを止められてパスポートのチェックがありました。
なんかヨーロッパって感じです。
海を渡ってからはのどかな田園風景がひたすら続きます。
北海道から来た選手達と「北海道そっくりじゃないですか?」と会話するほど景色が似ていました。
【ヘルシングボリに到着】
コペンハーゲンを出て凡そ1時間40分ぐらいでしょうか?
ようやく目的地のヘルシングボリに到着しました。
ここはスウェーデン南部の港町でオーレスン水道を挟んだ対岸(4km先)はデンマークのヘルシンゲルという街なのでフェリーに乗れば30分で行く事が出来るそうです。
今回日本選手団が宿泊しているホテルはELITE HOTEL MOLLBERG HELSINGBORGというホテルで大会公式のホテルではないそうですが大会公式ホテルまで徒歩で1分でした。
部屋も広々としていて快適ですが、残念ながらバスタブが無くシャワーだけでした。
チェックインを済ませるとすぐに最寄りのスーパーマーケットに皆で買い出しに行きました。
心配していた物価ですが、そこまで高くもなく夕食用に計り売りのサラダバーを買いましたが63クローナですので720円程度でした。
あと水を購入したかったのですが殆ど炭酸水ばかりだったので「まぁええか」と思い購入しました。色んな味がついていて美味しくて1.5ℓのものが2本で25クローナなので280円程度です。
他には計り売りのバナナやリンゴ、ツナ缶などを購入して帰りました。
その後は試合会場となるヘルシングボリアリーナまでみんなでホテルから歩いて会場までの行き方を確認し、まだ設営中ではありましたがアップ会場なども下見する事が出来ました。
勿論ホテルから試合会場まではシャトルバスが出ているのですがセコンドも含め全員が乗れるかどうか分からないのでバスに乗るのは選手とメインセコンドを優先的に乗せ、乗り切らなかった場合はサブセコンドと応援団は歩いて行こうという事になりました。
ホテルから試合会場まではゆっくり歩いても15分程度でしたので全く問題ありません。
日本を出たのが6月2日の11時10分でデンマークに着いたのが6月2日の15時30分
つまり6月2日をもう一度やり直す形で身体は疲れていましたが色々と現地を散策して夜になりました。
とは言っても昨年のカルガリー同様の白夜です。夜は22時半~23時頃まで明るいです。
【6月3日朝】
さて私は眠れたでしょうか?…
そんなに甘くは無いですよね。
飛行機や現地に着いてから頑張って起きていたのでさすがに1時頃には眠くなり一旦眠れましたが、なんと4時にしっかり目が覚めてしまいました。
何故だか分かりませんが他の日本人選手もだいたい4時に目が覚めたそうです。
人間の身体って凄いですよね。
幸いまだ自分の試合まで4日あるので4時半から腹減らしに散歩に出かける事にしました。
明るいですよね。でも4時半なので車はほとんど走っていません。
町中色んなところで世界クラッシクパワーのポスターが張られています。
潮風に誘われて港に出てみました。
肉眼でもハッキリデンマークのヘルシンオアが見えます。
街並みは中世の面影を残し古き良き北欧を感じる事が出来ました。
町の中心には古いお城があり、城壁の向こう側には高い塔があり周辺は公園になっていました。
公園の芝では野ウサギがいて、城壁の上からは町が一望出来ました。
少し残念だったのは前夜に近くのサッカースタジアムでホームチームの試合があったようで夜遅くまでサポーター達が街中で大騒ぎしていたのですが酒の瓶やスナック菓子の空き袋、煙草のカスなどのゴミが色んな所に落ちていました。
「阪神戦の後の甲子園球場前みたいやな…」と思いながらも「外国人からの印象ってこういうところで下がるんやろうな」と矢印を故郷に向けるのでした。
1時間半ほど歩いてホテルに戻りシャワーを浴びて待ちに待った朝食です。
これから5日間はこれがメインの食事となります。
去年のカナダに比べれば種類も多くて凄く良いです。
パンとハム、チーム、ヨーグルトは種類が多くて食べきれません。
ただどれも少ししょっぱいのであまり沢山食べられません。
【ギブスを横目に最終調整】
この日は夜のテクニカルミーティングまでチームとして特に動く事は無いので出番が最終日の重量級のメンバーでトレーニングする事にしました。
【掲載動画①②】
ちょうど試合の4日前という事でここで三種目共に最終ウォーミングアップの重量まで持ちフォームの確認と試合で使われる新しいエレイコラックの感触を確かめました。
新しいエレイコラックはご覧の通りシートがラバーのようで堅く滑り止めも付いているので普段使っているBULLとは少し感触が違いました。
事前に確かめておいて良かったと思います。
隣のプラットフォームではニュージーランド代表でSBDエリートのブレットギブス選手もトレーニングしていて最終調整と思われるデッドリフト305kgを見る事が出来ました。
帰りは重量級メンバーでハンバーガーをテイクアウトしたので翌朝は91kg体重がありました。
この日の夜はテクニカルミーティングがあったので、日本選手団でその後にミーティングがありました。
事前に試合会場のパスが選手に手渡されたのですが、なんと私のパスには83㎏クラスとプリントされていました。
「まさか階級変更されてないなんてことないですよね?」と確認しましたが、さすがにそれは無いだろうとの事で少し不安ではありましたが、IPFのHPに記載されているノミネーションではしっかりと変更されているので、たぶん大丈夫なんだろうと自分を納得させてベッドに入るしかありませんでした。
国際大会は何があるか分からないので基本的に自分の身は自分で守るしかないのです。
【6月4日:大会開始!セコンドについた選手の紹介】
この日からいよいよ大会が始まりました。
初日はマスターズ4-59kg級の平松選手のサブセコンドです。
検量時間はなんと6時! なので5時にフロント前に集合して5時10分のバスで会場へ移動します。
この日ばかりは時差ボケで4時に目が覚めてくれるのが嬉しく感じました。
国際大会は団長が事前にセコンドとサブセコンドを割り振ってくれます。
今回私は最終日が自分の試合なので初日と二日目にサブセコンドとセコンドが入っていました。
セコンドに入るメリットは自分の試合前にコスチュームチェックや検量、アップ会場や試合のステージなど色んなところを実際に選手と一緒に見て回り事前にチェック出来ることにあります。
これによって自分の試合までに試合をイメージしやすくなり落ち着いて試合に臨む事が出来るので、私はセコンドには積極的に入るようにしています。
さて平松選手は大会初日特有のトラブル(検量時にもらえるはずの試技カードがもらえなかったり、セコンドのIDカードに貼るはずのシールが足りなかったり)にも動じる事無く飄々とアップを済ませスクワットは三本目を落として三位、ベンチは逆に他の選手が一本しか取れないなか二本とって一位、デッドはきっちり三本取りで二位、トータルも二位で見事に銀メダルを獲得しました。
セコンドは愛弟子の女子M1-57kg級の田中選手。
初日の感想は昨年同様ですが、判定が非常に、非常に厳しいです。
これはどんな大会でもそうですが必ず初日が一番判定が厳しいです。
これは自分自身が審判をやってみて思う事ですが、審判の心理的に初日はとにかくミスを見逃さないように気持ちが張っているため判定が厳格になる傾向があります。
また大会の最中に少し基準が動く場合があるのですが、それも「甘いと言われてから辛くする」のは難しく「辛いと言われてから甘くする」方がやりやすいのだと思います。
そのため大会初日に行われる事の多い女子のM2~4の軽量級や男子M4なんかは他の階級よりもかなり厳しい判定をもらっている事が多いです。
スクワットの深さは勿論の事、日本ではあまりとられない、スクワットのスタート姿勢の前傾や膝の伸び、ベンチのスタートの肘の伸びや胸の押し返しの僅かな弾み、デッドリフトのフィニッシュ時の肩の返しや膝の伸び、更にはダウン時のコントロールなどです。
これは経験した者にしか分からないのかも知れませんが初日の選手たちは、出場者が少なくメダルの取りやすいクラスが多いとも思われがちですが、実は皆一般よりも厳しい判定と戦っているのです。
【練習エリアでナウル代表と】
平松選手の試合は午前中に終わりとりあえずこの日の役割は終わりました。
次に日本選手はM2-74kg級の大賀選手が18時から登場するので一旦ホテルに帰って休憩してから大賀さんの試合を応援しながら練習会場でベンチプレスだけを軽くやろうと考え試合会場に戻りました。
練習エリアに行くとナウル代表の選手達がトレーニングしていたので一緒にトレーニングする事にしました。
超級のウエパ選手は言うまでもありませんが、他の選手もとにかくデカい。強い。そして優しく親しみやすいアイランダー達です。
あっという間に打ち解けて仲良くなりました。
何か一つぐらい日本語を覚えて欲しくて、彼らにためにある日本語「デカい」を教えてあげました。
【6月5日:安倉選手のセコンド】
この日は同じ大阪の安倉選手M3-74kg級のセコンドです。
安倉選手とは昨年のカルガリーでも一緒で去年もお互いのセコンドについたのでこれで二度目のサポートとなります。
10時検量なので9時20分のバスで移動となるので、昨日は食べられなかった朝食を同い年の宮本選手(M1-120kg級)と食べました。
ホテル前の通りが通行止めで急遽駅前のバス停まで歩いて移動する事になりましたが、何とか無事にバスに乗り込み前日同様にコスチュームチェックと検量を済ませます。
前日に配る、配らないでモメたセコンドがIDカードに貼るシールはこの日から配られなくなってIDカードがあれば誰でもアップ会場に出入りするようになってしまいました。
何があったか詳細は分かりませんがどう見てもセコンドじゃない人や子供まで好き勝手に出入りするようになってしまったので、そこはちゃんとやって欲しいと思いました。
マスターズ3とは言え74kg級の出場者は12名と昨年の6名から倍に増えており混戦模様です。
前のセッションが押して試合開始時間が1時間も伸びたので、やりかけたアップを一旦スローダウンして再度やり直すような形で調整しなければならなくなりましたが、ベテラン安倉選手は動じる事無く冷静に試合を楽しんでいるようでした。
昨年もそうでしたがあまり周りに流される事無く自分の試技に集中しているので慌てたり、愚痴を口にするような事は全く無く、私自身見習うべきだと思いました。
試合ではスクワットを手堅く3本取りましたが、ベンチを2本落としてしまい、デッドは私のミスもあって予定していた重量に届かず残念ながら7位でした。
それでも明るく「次は佐名木くんの番や!頼むで!」と逆に励ましてくださり本当に救われました。
【6月6日:休養日】
相変わらず4時半に目が覚めますが今日は特にセコンドも入っていないので二度寝して気が付いたら7時になっていました。
ようやくこちらの時間に身体が慣れてきたようです。
朝食前に徒歩1分の大会指定のホテル地下にあるジムに設置されている体重計に乗ると89.35kgでした。
日本を出る時は89.0ぐらいだったので少し太ったようですがまだまだリミットまでは余裕があるので朝食はガンガン食べました。
8時からM2-120kg級の伊藤選手とM2-105kg級の吉松選手の試合がありますが、申し訳ないですが明日のために午前中は部屋でストレッチやフォームローラーを使った身体のケアなどをして過ごし2人の試合はGood liftで観戦しました。
12時からはM1-59kg級の小野選手とM1-66kg級の西塚選手が出場するので11時45分ごろからウォーキングがてら試合会場へ向かいました。
試合会場へ向かう途中に明らかにキョロキョロと道に迷ってそうな動きをする、どデカい大男がいたので声をかけてみたらM1-120kg超級でノミネーション1位のセルビアのミラン選手でした。
一緒に会場まで歩きながら色々話をして「元々ラグビーの選手だったんだよ!」「なんだそうか!絶対フロントローだろ!」ってことでこちらもすぐ仲良くなりました。
ちょうど今日到着したようで(女子のジュニアの選手がもう一人いると言っていました)セルビアでももっとパワーリフティングを盛り上げたいと言っていました。
世界大会は初めて?だそうで受付でIDカードをもらって明日の試合の検量やコスチュームチェックの場所(セコンドもいないんだって)を教えて「じゃぁまた明日ね!と別れました」なかなかのチャレンジャーですね。
でもこういう選手がナチュラルに強いから面白いです。
その後は観客席で小野選手と西塚選手を応援。
小野選手は見事に銀メダル‼西塚選手もベンチプレスで銅メダルを獲得しました。
2人の表彰台での勇姿を見届け、また徒歩でホテルまで戻りゆっくりストレッチとフォームローラーを繰り返しながらスーパーで買ってきたサラダとミートボール、日本から持ち込んだオートミールをお茶漬けにして栄養補給をして準備万端。
今は19時から始まった女子M1-57kg級の田中選手をGood liftで応援しながらコラムを書いているというわけです。
明日はいよいよ最終日、私の出番です。
昨年カルガリーで悔しいスクワット赤だらけ。
第一第二を落として飛びかけて怖気づいてその後は順位を守る戦いしか出来なかった。
今度は全力を出し切って帰る。その為に一年間準備をしてきました。
たとえ膝が壊れても必ずスクワットで白9つとってやる。
来月に続く・・・
■コラム執筆者
佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg
戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・一般男子83㎏級スクワット日本記録樹立
・ジャパンクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・2018年世界クラッシクパワーリフティング選手権大会 マスターズⅠ83㎏級 5位
・2018年日本クラシックマスターズ83㎏優勝
・2018年香港国際クラッシクインヴィテーショナル大会 マスターズⅠ83㎏級 優勝
・マスターズⅠ83㎏級スクワットアジア記録樹立
・2019年世界クラシックマスターズ93㎏6位
ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年 全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年 日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年 関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝