皆様いつもご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
毎回このようなご挨拶から始まるこのコラムですが、
なんと今回でついに50回目となりました。
流石に、4年2ヶ月も毎月毎月コラムを書いているとネタも尽きてきますので、
途中でお休みしたいと弱音を吐いた事もありましたが、
読者の皆様に支えられ、なんとか休まず続ける事が出来ました。
「100回まで頑張ります!」と勢いで書いた方が良いのかも知れませんが、
私の性格上あまり大きな事を書くと後から後悔するので、
パワーリフティングと同じで目の前の1回1回を丁寧に楽しみながら仕上げていこうと思いますので、今後ともお付き合いの程宜しくお願いいたします。
【ご報告】
それでは今月も誠に勝手ながら、御報告から始めさせていただきます。
まず一つ目は、以前からご紹介させていただいており、
私がポージングやダイエット、トレーニングなどボディビルコンテスト出場のための準備について指導させて頂いております大阪のマグナムフィットネスセンター所属の村上勝英選手の大会結果ついてです。
村上勝英選手が
9月8日に福岡県で行われたジャパンオープンボディビル選手権大会で準優勝。
9月22日に兵庫県神戸市で行われた日本クラス別ボディビル選手権大会の75kg級でも準優勝しました。
昨年コンテストに復帰して以来、
大阪クラス別⇒MR大阪⇒MR関西⇒西日本と4連勝してきたのですが
ジャパンオープンで久々に負けてしまいました。
2週間で少しでも改善する為に、
総カロリーもPFC割合も変えずに炭水化物の種類だけを少し変えて調整をしてみたところ、
上手くハマり仕上がりを進める事が出来ましたが、
それでも体重別日本一には惜しくも届きませんでした。
ただ、来年以降に向けての更なるレベルアップをするための
引き出しを増やす事は出来たシーズンでした。
来年は今年取れなかったタイトルを奪取し、
国際大会への挑戦も視野に頑張ってもらいたいと思います。
「どうやったらデカくなりますか?」とか「どうやったら絞れますか?」
という質問をよく受けますが、結局は個人差のある事なので
自分自身の身体を実験台としてデータを蓄積していくのが一番大切です。
勿論冷静且つ客観的に正しい評価をしてくれる仲間の存在は必要だと思いますが、
本当に自分の全てを分かるのは自分自身だけです。
また、このあたりの話に関しては別の回で書こうと思います。
「もっとボディビル系のコラムを増やして欲しい」などご意見がありましたら、
メールでいただければ幸いです。
2つ目の御報告は、誠に恐縮ながら私の試合結果についてです。
実は今月のコラムを書き始めた当初は、
今回の試合については結果だけをこの【ご報告】スペースで書いて終わりにしよう
と思っていたのですが、思いの外色々と考えさせられ、思い出に残る大会となりましたので、
急遽このまま今月の本題としてジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会(以降JCMP)参戦記として綴っていきたいと思います。
【JCMP参戦記:前書き】
さて、記念すべき50回目のコラムをどのような内容で書こうかと考えた時に
「季節的にボディビルやボディメイク、ダイエットに関して書こうか?」
「元々のテーマである競技スポーツネタに戻そうか?」
「いやいやパワーリフティングネタで押し通そうか?」
と色んな事を考えている間に気が付いたら締め切り10日前まで何も書かないまま、
時間が過ぎてしまいました。
このままではヤバいと思い、
一旦競技スポーツネタで少し書き進めたところで今回のJCMPに出場しました。
そして、試合会場で沢山の人から
「いつもコラム読んでいます」
「先月の参戦記も面白かったです」
と有難い事にお声がけを頂き、
「試合以外の過ごし方や選手の心の葛藤などが垣間見えて面白いです」
と本当に有難いご意見を頂戴し、
「こんな自分の参戦記でも誰かの参考になっているのであれば」
と考え急遽JCMP参戦記を書かせていただく事としました。
お声がけいただいた皆様、本当に有難う御座いました。
【JCMP参戦記:準備とモチベーション】
そもそも何故、今回のJCMPについて参戦記を書くつもりが無かったのかというと、
気持ちも身体も全く準備が出来ていない状態での出場だったので、
「良いパフォーマンスが発揮出来るわけがない」
「国際大会の出場権だけとれれば良い」
と非常に情けない気持ちで臨んでいたからでした。
今振り返ってみるとそうなってしまった要因は幾つもあり、
まずは一番の目標としてきた世界クラシックを終えて気持ちの上でバーンアウトしてしまった事、
そして世界クラシック前から抱えていた膝の痛みが一向に良くならなかった事、
仕事の関係で8月に充実したトレーニングを行う事が難しく9月にピークを作る事がほぼ不可能だと思っていた事などがあげられます。
そのため初めはエントリーすること自体を躊躇っていたのですが、
私が監督を務める関西大学学生S&Cの部員が数名、
11月に長野県白馬村で行われるジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会のジュニア部門に参加する事が決まり、
「こんな状態でもなんとか4位以内に入っておけば彼らと一緒に国際大会に出場する事が出来るかも知れない」
と考えギリギリでエントリーを決めました。
9月に入ってからようやく練習時間が確保出来るようになったものの、
試合まで2週間しかなかったので、3
種目通しの練習を3回やって今の状態でどんな内容の試合が出来るかを見極める事にしました。
事前に考えていたプラン
スクワット225kg
ベンチプレス145kg
デッドリフト245kg
このあたりを第二試技でやって、トータル600kgをちょっと超えておけば
最低限2位には入れるのではないかと考えていました。
今回の大会で初めて国内の93kg級に挑戦するわけですが、
エントリー表を見てみるとなんと愛知県の宇佐美選手がエントリーしていました。
宇佐美選手と言えば、既に40代後半でありながら
いまだに一般のジャパンクラシックでも連勝を続けるレジェンドリフターで、
私も大学時代に買った月刊ボディビル誌で宇佐美選手の特集を読んで以来、
秘かに憧れていた選手でした。
日本トップの選手と戦う事が出来る貴重な機会なので本来ならば、
1kgでも近づこうと頑張るところでしたが、
今回の自分にはそのように気持ちを奮い立たせる余裕も無く、
ただ自分が出来る事を最低限やろうとする事しか出来ませんでした。
【葛藤と足掻き】
そんな状態で大会2日前の金曜日を迎えました。
お昼過ぎに大阪を出て車で三時間ちょっとで岐阜県美濃加茂市に到着しました。
予定よりも早く着いたので、
本来ならば土曜日の夜に受講するはずだったアンチドーピング講習会を
1日前倒しして金曜日の夜に受講し、
少しでもスケジュールに余裕を作り試合に集中できるように調整しました。
(事前に岐阜県協会に連絡し、了解を得てから受講日を変更しています)
土曜日は朝5時に起きて、正装して試合会場へ向かい、
午前中だけコスチュームチェックとテクニカルコントローラーを担当させて頂きました。
先にも記した様に、試合会場では多くの方から
コラムについてのご意見やお声がけを頂き大変励みになりました。
そして、
「明日の試合は期待してるよ!」
と沢山の方から声をかけて頂くたびに、
「いやぁ~今回は調子が悪いので…」
と言い訳ばかりしている自分に対して徐々に嫌気がさしてきました。
「こんなに沢山の人が応援してくれているのに、俺はやる前から何を言っているんだ。情けない」
「全力で戦う姿を見せなければいけない」
「諦めず出来る準備は全部して最後まで足掻いて足搔いて試合に臨もう」
そんな気持ちが湧きあがってきました。
午後に一旦ホテルに戻り、仮眠をとって夕方もう一度試合会場に戻りました。
本来試合当日の検量前に行うコスチュームチェックを前日のうちに出来るという話を聞いて、
試合道具を持って行ったのですが、残念ながらスタッフの人員不足という事で出来ませんでした。
その代わり、初日の試合が全て終わってから翌日に私が試合をするBコートで
実際に使用するラックを使ってスクワットとベンチプレスのラック高を確認しました。
パワーラインのラックを使うのは久しぶりですが、
軽くベンチのフォームを組むだけでも
シートの幅や高さがしっくりきて肩や腰にストレスの無い良いラックだと感じました。
また今回使用するバーベルは、
ローグのオハイオパワーバーというバーベルでこちらも触った事の無いバーだったので、
事前に握って感触を確かめました。
堅さやローレットの感じはエレイコに似ているのですが、
ローレットの無い部分がエレイコに比べるとツルツルして滑るので、
デッドリフトのグリップをいつもより指1本分広く持って第一試技を引いてみて、
グリップのかかり具合の様子を見ようと考えました。
ラックとバーのチェックが終わったら、
実際にステージに上がりスクワットの立ち位置から見える景色を確認しました。
これは初めて試合をする会場では必ず確かめる事で、
一番緊張するスクワットの第一試技の時に落ち着いて試技が出来るように、
予めどのような風景が見えるのかを確認し、
しゃがみ始める時の目線の位置などを確認しておきます。
私が試合をするBコートの反対側、Aコート側のアップ場には
ローグのコンボラックが設置されていました。
これも初めて見るものなので試しにベンチのブリッヂを組んでみました。
非常に重厚感があり安定感は抜群、
シートは滑らないようなラバー?加工?になっているので
アーチを作る時に肩甲骨を立て易くブリッヂを組みやすいベンチ台だと感じました。
イメージとしては、ベンチプレスの練習用に
Tシャツの背中部分に滑り止めのような加工がされているものが売られているかと思いますが、
シート全体があのようなグリップが効いているような状態です。
ベンチプレスを強化するには、非常に良い商品だと思いました。
しかしその反面、シート自体のグリップ力があまりにも他社のラックと違うので
「こんなにブリッヂし易いベンチで練習してしまったら、
本番が他社のラックだったら凄く滑るように感じてしまうんじゃないか?」とも感じました。
また、私のように身体が硬いのに無理してブリッヂを組んでいる選手が、
急にこのベンチを使っていつも通り全力でアーチを組んで全力で足を蹴った場合は、
グリップが効き過ぎて腰に負担がかかるのではないかとも感じました。
いずれにせよ、今後国内の試合で採用される可能性もあるので、
試合で使われる事が決まった場合は事前に慣らしておく方が良いと思いました。
ラック高や目線の確認を終えた後、ホテルに戻る途中でドラッグストアに寄り、
咳止めの薬を購入しました。
実は、1週間ほど前から咳と痰が絡み喉が腫れる状態が続いていたのですが
「そのうち治るやろ、ドーピングチェックもあるから薬出されても飲みたくないし…」
等と思って、放置していたのがどんどん症状が酷くなってきて、
「このままやと試合で思いっきり息吸った時に咳込んで腹圧かけられへんのんちゃうかな」と
不安になり、
スマートフォンで日本薬剤師会が作成している
「薬剤師のためのアンチドーピングガイドブック2019年版」をダウンロードし、
使用可能薬を調べて咳止めを購入しました。
https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/activities/guidebook_web2019.pdf
→30ページ目記載
購入した咳止めはこちら
よくルールを理解していない人は、
薬は全部駄目だと勘違いしてしまっている場合もあるのですが、
ちゃんと調べれば使えるものもあります。
ただ、これは私の個人的な体感ですが、
特に風邪薬や咳止めの使用可能薬は劇的には効きません。
やはり事前に病院に行き、早めに対処すべきだったと反省しています。
(結局アレルギー性の気管支炎でした。)
また、買い物途中に6月の世界クラシックで
身体が攣ってしまって最後まで力が発揮できなかった事を思い出し、
念のために塩を買いました。
もっと良い塩を探したのですが、
これぐらいしかなかったので取り合えず気休め程度にはなるだろうと思って買いました。
なんと翌日、この判断に救われる事になるのですが、
この時は想像していませんでした。
【試合当日】
ほんの少し咳が治まったためか比較的深く眠れて、
朝7時に目覚めた時点で体重は90.75kgでした。
つまり、リミットまでまだ2.25kgあるので
安心してプロテインを40gほど飲んでからホテルの朝食会場へ行きました。
ホテルの朝食会場では、
ごはん1杯・みそ汁1杯・サラダ少々・
ゆで卵2個・サバの塩焼き2切れ・梅干し・海苔などを食べました。
先月のコラムで書いた通り
世界クラシックでは、
ナトリウムのコントロールを怠った事が原因と思われる筋肉の攣りで
力を発揮出来ませんでした。
今回はその反省を生かし、朝食で塩分を多めに摂りました。
朝食後の体重は、92.15kgだったので
500mlのスポーツドリンクをチビチビ飲みながら、試合会場へと向かいました。
【コスチュームチェック&検量】
試合会場に着いて暫くすると、コスチュームチェックの開始予定時間となったので、
カウンターへ行き一番に済ませました。
今回はシングレット・Tシャツ・ソックスは、
先日発売されたばかりのLimitedEdition2019Summerバージョンで揃えて、
ニースリーブとリストラップは一番使い慣れたもので準備しました。
コスチュームチェックを終えると、
すぐに検量開始の予定時間となり、検量室に行ってみました。
しかし、係の人が居らず、他の選手も数人集まっていたのですが、
検量が始まりませんでした。
張り出されている名簿を見ると、
検量開始時間が1時間ほど押している事に気付きました。
そのまま待っていても良かったですし、
試合会場ですから色んな人と喋っていると勝手に時間は潰れていくものですが、
今回は出来るだけ時間を有効に使おうと考え、
人があまり居ない場所を探して、
フロスバンドによる圧迫と電動フォームローラーを使ったマッサージ、
それと静的ストレッチを膝関節と股関節を中心に繰り返しました。
前日同様沢山の方から
「いつもコラム読んでるよ!今日も頑張ってね!」
と声をかけて頂き、益々「恥ずかしい試技は出来ない」と気持ちにスイッチが入っていきました。
検量体重は91.35kg
検量後は軽くサンドイッチと甘いコーヒーで30分ほどリラックスして、
スクワットのウォームアップへと向かいました。
【スクワット】
この日のBコートの第2セッションは、
男子M1-74kg級とM2-83kg級を合わせたSグループと
男子M1-93kg級とM1M2-120kg級を合わせたTグループの2グループ回しで行われ、
私が出場するM1-93kg級は後半のTグループでした。
しかし、スクワットに不安のあった私は、
まだ第1セッションのデッドリフトが行われている最中、
つまり前半のSグループの選手がスクワットのウォーミングアップを始める時間から
少しずつウォーミングアップを開始しました。
インターバルをしっかりと取りながら、
20kg-60kg-100kg-140kgとベルト無し・ニースリ無しで行い、
180kg-200kgはベルトもニースリーブも着けて行いました。
国際大会などでは25kgプレートがアップ会場にも揃っているので、
70kg‐120kg‐170kgと結構雑に上げてしまうのですが、
今回は20kgプレートしかなかったのでアップも軽めからやる事になり、
それが逆に今回の私には良かったと思います。
検量時に申請した第一試技は、
スクワット215kg・ベンチプレス140kg・デッドリフト235kgでした。
ベンチはだいたいいつも通りですが、
スクワットは20kg、デッドリフトは15kg、6月の世界大会よりも軽いスタートです。
しかし、これは練習不足から自分がどのくらいやれるのかの想像がつかないので、
最低限失格しないための設定であり、
2日前までの弱気な気持ちは既に自分の心からは消えていました。
「第一試技をとったらその後は強気で上げていこう」
「応援してくれている人に良い試技を見せよう」
皆様のお陰で強い気持ちでステージに向かう事が出来ました。
第一試技 215kg 〇〇〇 成功
ステージに立ち、昨夜に下見していた通りのイメージで視線は観客席最上段へ。
私は主審と目が合うのが苦手なのですが、
今回の主審である照屋さんは少し座席を左にズラしたポジション取りをしていたので、
バーを担いで顔をあげた時にス~ッと視線をターゲットに合わせやすく、
耳だけでコールに集中する事が出来ました。
前日の下見で確認した通り、
ローグのオハイオパワーバーはローレットの無い部分がツルツルしているので、
「もしかしたらローバーで担いだ時に滑るのかな?」
とも思っていたのですが、今回は全く滑りませんでした。
また、人工芝?のようなプラットフォームは、
恐らく愛知県の試合に出ていた時に経験して以来久し振りだったのですが、
グリップが良くて試技がしやすいと感じました。
この第一試技で、
「大丈夫や!そんなに弱くなってないかも!いける!」
と自信を取り戻しました。
第二試技の申請は10kgアップの225kgです。
第二試技 225kg 〇〇〇 成功
「軽っ!」
深さも迷い無く、自然に一番良い場所で切り返す事が出来ています。
第三試技も10kgアップの235kgを申請しました。
また、若干ラックの高さが高いように感じたので、
ラックの高さを132㎝から131㎝に1㎝低く変更してもらいました。
これは恐らくラックの高さを調べた時よりも肩の状態が良いので、
より低い位置にバーベルを担ぐ事が出来ているために、
少し高いと感じたのではないかと思います。
132㎝のままでも恐らく大丈夫だと思いますが、
重量を上げていくと若干バーがしなる事とバーベルが背中の肉に食い込むので、
万が一ラックから外すのがギリギリになってしまってはいけないと思い念のために1㎝下げました。
この微妙な調整が出来るパワーラインは、本当に素晴らしいラックだと思いました。
第三試技 235kg 〇〇〇 成功
ラックアップの時に「軽っ!」と感じたので、
成功すると確信したまましゃがむ事が出来ました。
ラックの高さを変更したのは正解だったと思います。
「なんやこれ?第一試技でもええやん」と思いましたが、
よく考えたら6月のスウェーデンではこれが第一試技だったので
「自分で思ってるよりもそんなに弱くなってないぞ…いや寧ろ練習してないから疲労が無くて今日の方が強いんちゃうか?」
とさらに自信を深めると共に、
「だったら今日の目標はトータルで6月の自分に勝つって事に設定しよう!」
と考え、
ここから先は6月の記録640kgに2.5kgかぶせるように重量を設定していく事としました。
【ベンチプレス】
どんな大会でも、私はスクワットが最後の方でベンチプレスは真ん中か最初の方なので
スクワットが終わるとすぐにベンチプレスのウォームアップに取り掛かります。
20kg‐60kg‐100kg‐120kg‐130kgとアップしている最中にも
「このベンチめっちゃやり易いやん」と久々に使うパワーラインのやり易さに感動します。
「これやったら160kgぐらいいけんちゃうか?いやいやアカンアカン調子に乗ったらロクな事無い」
と手堅くいきたい気持ちとせっかくのパワーラインなので記録を狙いたい気持ちが交錯します。
第一試技 140kg 〇〇〇 成功
「空気やん」ここまで普段とフィーリングが違うと逆に困ります。
予定では145kgを申請するつもりでしたが、
あまりにも勿体無いので147.5kgを申請しました。
第二試技 147.5kg 〇〇〇 成功
「ホンマにちゃんとプレートついてる?」と疑うほど軽い。
しかし、150kg以上なんてここ数年ちゃんと持った事がありません。
考えた挙句、2月のジャパンクラシックの第三試技で挑戦して、
肩を怪我した苦い思い出がある152.5kgをクリアしておこうと申請しました。
第三試技 152.5kg 〇〇〇 成功
「一緒やん!」
そう140kgも147.5kgも152.5kgも全部同じにしか感じません。空気です。
「何なんだこのベンチは!欲しい!家に欲しい!」
試技を見ていたSBDアスリート鈴木佑輔選手も
「今日強くない!?」「今の第一でも良くない!?」
とお褒めを頂くほどの好調で、気持ちよくベンチを終え、ここまで6試技パーフェクト。
会場にいた世界クラシックを一緒に戦った仲間からも
「本当に怪我してるんですか?」と疑いをかけられるほどの好調で、
「やっぱやる前から弱気な事なんか言うもんじゃないな」と少し恥ずかしいぐらいでした。
【デッドリフト】
検量時に申請したスタート重量は235kg、ちょっと軽すぎるかなとも思いますが、
実は6月の世界クラシック以来、デッドリフトの練習は4回しかしていません。
しかも、そのうち3回は最後の2週間の1発上げのみ。
それでも、その練習で245kgがあがっているので、235kgは消極的過ぎるように見えます。
しかし、先に述べたように、
初めて扱うローグのバーはローレットの無い部分がツルツルしているので、
万が一グリップが決まらなかったらヤバいと考え(アップ場のバーはエレイコでした)
235kgスタートです。
6月のスウェーデンで起きてしまった
①食べ過ぎ飲み過ぎでベルトがきつくなり腹圧がかかり辛くなった。
②攣ってしまった。
この2点を改善する為に、今回は、
- 試合中、固形物は食べない(エネルギーゼリーとサプリメントを混ぜた水分)
- 朝食でしっかり塩分をとり試合中もミネラルの入ったスポーツドリンク(ポカリスエット)をこまめに飲む
- カフェインの量を減らす(世界クラシックではスクワット前に200㎎、ベンチ後にも100㎎を摂取したが今回はスクワット前に100㎎、ベンチ後に100㎎)
等の対策をとりました。
また、このコラムを長く読んで下さっている方は覚えているかも知れませんが、
私は2015年に一度オープン参加で岐阜県パワーリフティング選手権大会に出場した際に、
デッドリフトの最終アップでギックリ腰になるという苦い思い出がありました。
今回岐阜で試合と決まって以来、
あの悪夢を思い返す度に腰が重だるく感じるようなトラウマとなっていました。
そのため、アップも恐る恐る慎重に行いました。
60kg‐100㎏-140kg‐180㎏-210kg‐220kgとやって特に問題無し。
腹圧のかかり具合も良好、吐き気も無し。
「大丈夫!大丈夫!ここはあの寒い体育館じゃない。
今日はレストも十分ある。同じ事は起きない。」
と自分に言い聞かせ心を落ち着かせました。
第一試技 235kg 〇〇〇 成功
普通にあがったのですが、バーを下ろした瞬間に右腕の上腕三頭筋が攣ってしまいました。
「うわっ!またか!」そうです。
6月の世界クラシックのデッドリフト第三試技直前に攣ったのと全く同じ場所、同じ感覚でした。
「なんでやねん!」
しかし、1分以内に重量を申請しなければならないので、
取り合えず10kg増しの245kgを書いて出しました。
次の自分の試技まで大凡10分ちょっとあるので、
まずはベルトを外して気持ちを落ち着かせながら、
こんな時のためにと前夜に買っておいた塩を口に多めに入れて、
スポーツドリンクで流し飲みます。
少し治まってきたのでストレッチをしようと思ったのですが、
元々肩周りが硬いのでストレッチしようとすると
他の筋肉が変に収縮して攣りそうになるので、
ストレッチではなくこちらもこんな事もあろうかと用意していた
O2クラフトというマッサージオイルを塗ってもらう事にしました。
ちょうど近くに関東学連時代の同期で東大B&WOBの加藤君がいたので、
お願いして塗ってもらいました。
(自分で塗ると手にオイルが付いてグリップが弱くなってしまうので本当に助かった!
加藤君ありがとう!)
O2クラフトは、
高濃度酸素を含んだオイルで乳酸を分解して筋肉の緊張をほぐす効果があるそうで、
私の体感ですが攣ってしまった筋肉を元に戻すのに、非常に効果があります。
世界クラシックで攣ってしまった時に、他の選手が用意していたのを見て、
今回は私も用意しました。
塩分を補給して、O2クラフトを塗って暫くすると攣りは治まり、
何とか試技が出来そうな状態に戻りましたが、
「また攣っちゃうんじゃないか」という不安が頭を過ります。
しかし、ステージの真ん前の座席を見ると一番前に、
世界クラシックを一緒に戦った仲間達が陣取り声援を送ってくれていました。
「もう攣らない!絶対にあげる!」
雑念を振り払い集中しました。
第二試技 245kg 〇〇〇 成功
攣りませんでした。そして軽い!
ここまででトータル632.5kgなので6月の自分に勝つには、
あと10kg必要なので第三試技は255kgを申請しました。
第三試技 255kg 〇〇〇 成功
軽いですね、でも今回はこれで十分です。
終わってみれば9本取りの白27本パーフェクト試技でした。
トータルは642.5kg、順位は2位。
試合前不安要素しかなく、全く自信が無かったのに、
あれだけ準備した世界クラシックの記録を2.5kg上回る結果となりました。
【教訓】
まず、会場で応援していただいた皆さんに本当に感謝しています。
弱い自分の気持ちを奮い立たせてくれたのは、間違いなく皆さんの力です。
今回の試合に向けた準備は、私の今までの競技生活で最低のものだったと思います。
試合前のモチベーションも最低でした。
しかし、気持ちを切り替え、
最善を尽くそうと手持ちのカードをフルに活用した結果、
好調時の記録を上回る事が出来ました。
6月よりも間違いなく、コンディションは悪く筋力も弱かったと思いますが、
多くの失敗を積み重ねた結果6月よりも賢くはなっていたのだと思います。
どんなスポーツでも同じだと思いますが、諦めてしまったらそこで負けです。
調子が悪くても、何とかしてベターを拾いに行く努力をしなければ、
舞台に立つ価値がありません。
そんな当たり前の事を思い出させてくれた、私にとっては思い出深い大会となりました。
愛知から応援に来てくれた高橋選手(ラグビー選手)
久々に再会した東海大学ボディビル部同期の滝田君(左)と東大B&WOBで岐阜県パワーリフティング協会理事の加藤君(中央)
105kg級2位のMBCパワー小早川選手。
今回はお互い2位でしたが日本一目指して頑張りましょう!
120kg超級の癒しキャラ塩谷さん(左)とスウェーデンで団長を務めて下さった120kg級中村さん(右※佐々木健介ではありません)
さて次の目標ですが、
まずは1ヶ月完全に膝を休めながら治療を続け経過を見ながら考えていこうと思います。
皆さん本当に有難う御座いました。
感謝の気持ちを胸に50回目のコラムを閉めさせていただきます。
■コラム執筆者
佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg
戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・一般男子83㎏級スクワット日本記録樹立
・ジャパンクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・2018年世界クラッシクパワーリフティング選手権大会 マスターズⅠ83㎏級 5位
・2018年日本クラシックマスターズ83㎏優勝
・2018年香港国際クラッシクインヴィテーショナル大会 マスターズⅠ83㎏級 優勝
・マスターズⅠ83㎏級スクワットアジア記録樹立
・2019年世界クラシックマスターズ93㎏6位
ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年 全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年 日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年 関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝