皆様いつもご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
ようやく朝晩は冷え込むようになってまいりましたが皆様如何お過ごしでしょうか?
私は例年このような季節の変わり目に、寒暖差や乾燥などの影響から体調を崩してしまう事があるので今年はいつもよりも早めにビタミン系のサプリメントを摂るようにしました。
マルチビタミンは基本的に1年中摂っているのですが、それに加えてビタミンC・B・Eのサプリメントを朝晩の食後に摂っています。
これらはボディビルダー時代から「そろそろインフルエンザが流行って来るな?」とか「来週は大事な仕事があるから絶対に体調を崩したくないな」というようなタイミングで摂っていたサプリメントでしたが、今年は例年以上に仕事でもプライベートでも全力投球が出来ていて「勿体無いから1日たりとも休みたくない」という状況が続いているので早めに導入したというわけです。
先々月のコラム中に書いていた膝の痛みもかなりマシになり、週に1回の頻度ではありますがスクワットも再開出来ています。
このまま怪我無く練習を続けて年明けの大会でベストな記録を出せるよう頑張りたいと思います。
【ご報告:ジャパンクラシックパワージュニア@白馬村】
それでは今月もご報告からとさせていただきます。
私が監督を務めますJPA加盟クラブの「関西大学S&C」、そして今年の9月から新たに学生連盟に加盟した「関西大学学生S&C」より、10月16日(土)に長野県の白馬村にて開催されましたジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会のジュニア部門に5名の選手が参加しましたので結果をご報告させていただきます。
Jr66kg級
安積祐貴 6位 (硬式テニス部コーチ)
4月大阪パワー⇒7月近畿パワー⇒11月JCPと着実に記録を伸ばしパワーリフティングを始めて8ヶ月でジュニアのカテゴリーながら全国6位まで上り詰めました。
この経験を生かして本業のテニスでも良いコーチに成長してくれると思います。
Jr74kg級
藤井崇彰 4位 (学生S&C4年)
関西大学学生S&C主将の藤井選手も7月の近畿パワーでデビューを果たした、まだパワー歴5ヶ月(2試合目)の状態ではありますが大幅に記録を伸ばし4位に入賞しました。
今後は国際大会出場を目指して頑張ってくれると思います。
宮森駿 9位 (学生S&C2年)
宮森選手もパワーを始めて僅か8ヶ月ですが着実に記録を伸ばし三試合目の今回も自己ベストの記録で9位でした。
来年は表彰台を目指して頑張って欲しいと思います。
宮本佳樹 失格 (学生S&C2年)
宮本選手は本来シングルベンチを得意とする選手で、今回は三種ベンチプレスのジュニア日本記録を狙って出場したのですが残念ながらベンチで三振して失格となってしまいました。
この悔しさを次のジャパンクラシックベンチで晴らしてくれると期待しています。
Jr120kg級
山川太希 優勝 (カイザーズクラブ所属S&Cコーチ)
普段私と一緒に働いてくれている山川選手がジュニアとして最後の試合に臨み見事に優勝しました。
次は3月に愛知で行われる一般のジャパンクラシックでも優勝できるようサポートしていこうと思います。
【アスリートも取り入れたい!フィットネスビキニ選手のための美尻トレーニング】
それでは今月の本題に入ります。
今まで何度かボディビルディングを題材としたボディメイクの話を書いた事があったかと思いますが、女性のためのボディメイクについて今まで書いた事が無かったので、今回はフィットネスビキニ選手のためのお尻のトレーニングというテーマで書いてみようと思います。
「フィットネスビキニ選手のための…」と言ってもお尻の筋肉を鍛える事は各競技アスリートから高齢者の健康増進まで様々な世代や目的の方々にとって有効なトレーニングとなりますので幅広い方々に取り入れて欲しいと思います。
【フィットネスビキニとは】
その前に「フィットネスビキニってなに?」って言う人のために簡単に説明をしたいと思います。
私も最近まで詳しくは知らなかったのですが…
男子ボディビルに最近新しく「フィジーク」というカテゴリーが出来て、寧ろボディビルよりも注目を集めているように、女子ボディビルにも新しく「フィットネスビキニ」というカテゴリーが出来てボディビルよりも競技者も多く人気を集めています。
(女子のボディビルは今は女子フィジークと名前が変わっているそうですが、ややこしいのでここではボディビルと書きます)
女子フィットネスというと私ぐらいの世代だとミスオリンピアではスージーカリーやケリーライアン、日本では齋藤円選手や山中輝世子選手などといった選手を思い出しますが、ビキニフィットネスはフィットネスのようなアクロバティックなパフォーマンスラウンドはありません。
※現在は女子フィジーク(昔の女子ボディビル)・フィットネス・ボディフィットネス・フィットネスビキニ・健康美といった感じでかなりカテゴリーが細かく分かれています。
クォーターターンとLウォークやTウォークと呼ばれるウォーキングで審査が行われます。
審査基準も筋肉美を競うというよりは、より女性らしいボディラインやバランスの取れたプロポーション、表情やメイク、ヘアスタイル、肌の色艶に至るまで…総合的に判断される競技です。
【女性らしさの象徴】
何をもって“女性らしい身体”と表現するかは人の価値観によって様々であると思いますが、“男性的ではない”という見方をするとやはりボディラインが全体的にふっくらと柔らかみがあるように見えた方がより女性的に見えるのではないかと考えられます。
その中でも丸みのあるヒップはその象徴的な部位であり“女性らしさ”を表現するうえで欠かせない部位の一つと言えるでしょう。
【臀部の筋肉】
お尻の筋肉は大・中・小と3種類の大きさの異なる殿筋から構成されます。
日本人は欧米人に比べお尻が小さい場合が多く、あまりイメージしにくいかも知れませんが、殿筋は身体の中でも大きな筋群の一つで、下半身の中では大腿四頭筋(ふとももの前側)に次ぐ大きな筋肉です。
殿筋は骨盤と大腿骨にまたがる筋肉である事からもわかる通り股関節を動かす役割があります。
3つの殿筋のうち一番大きな大殿筋は脚を後ろに振る動作(股関節の伸展)で大きな力を発揮します。
股関節の働きの中で伸展動作は走ったり飛んだり様々な運動で最も強いパワーを発揮します。
また大殿筋は脚を外に捻る動作(股関節の外旋)でも働きます。
中殿筋と小殿筋も股関節の伸展動作で働きますが、その大きさからも大殿筋ほどのパワーは無く、主な役割としては脚を外に開く動作(股関節の外転)で重要な役割を果たします。
スポーツの動作で言えばランニングなど片足で地面を蹴る動作の時に骨盤が傾かないように横方向に支えているといったイメージです。
【推奨される種目】
話しをビキニ選手に戻します。
丸みを帯びたセクシーなヒップを手に入れるために殿筋のトレーニングを行うわけですが、一体どの種目をレギュラー種目として選ぶべきでしょうか?
「そら絶対にスクワットやろ!」
「いやいや…ちゃうって!デッドリフトに決まってるがな!」
パワーリフターの皆さんからはこんな声が聞こえてきそうですが、確かにパワーリフターでスクワットとデッドリフトを高重量でやり込んでいる選手の中にも見事なお尻をしている選手は沢山います。しかしここではあえて違う種目をメインに推したいと思います。
それは片足で行う股関節の伸展動作、つまりランジ・ブルガリアンスクワット・ボックスアップ・スプリットスクワット・シングルレッグデッドリフトなどです。
ランジ
ブルガリアンスクワット
ボックスアップ
スプリットスクワット
シングルレッグデッドリフト
これらの種目は先に記した股関節の伸展動作だけでなく股関節の外旋を伴う運動です。
片足でしゃがんだり踏み込んだりする動作では骨盤を平行に保つために自然と股関節に外旋のストレスがかかり、外旋の力を発揮しながらの伸展動作が行われます。
両足立ちのスクワットやデッドリフトでは得られにくい刺激が殿筋にかかるというわけです。
また通常のスクワットやデッドリフトで、股関節伸展動作で強い負荷をかけようとすると同時に体幹部にも強い伸展ストレスがかかります。
(背中が丸まらないように耐えるアイソメトリックな負荷)
トップレベルのパワーリフターがSBDベルトのような高性能なベルトを使用しスクワット・デッドリフトを行う場合はまた別なのかも知れませんが、通常は股関節の伸展筋力は体幹部の伸展筋力よりも強いと言われています。
という事は股関節の伸展筋をオールアウトさせる前に体幹部の伸展筋力が限界を迎えセットを終えてしまう可能性が高いのです。
勿論体幹部の伸展筋力は片足の動作でも働きますが、片足の動作では股関節の伸展筋力は片側の股関節に集中しているので半分(単純に1/2ではないが)になっているのに対し、体幹部の伸展筋力は左右に分散したままなので体幹部の伸展筋力が尽き果てる前に股関節の伸展筋をオールアウトする事が可能だという事です。
【アスリートのお尻は何故美しいのか?】
ヒップの美しい女性アスリートと言えばどんな競技を思い浮かべますか?私は真っ先に陸上競技の短距離や跳躍系の選手を思い浮かべます。
高強度のスプリントやジャンプはそれ自体が強度の高い殿筋のエクササイズであると言えます。
それは効率的に出力を発揮し推進力を得るためには殿筋を上手く使って股関節を伸展させなければならないからです。
またその競技特性からウエイトトレーニングもランジなど片足で股関節を伸展させる動作をメインに行う場合が多いのです。
お尻の奇麗な人が最初から脚が早かったり高く飛べるのではなく、目的に合ったトレーニングと競技動作を繰り返す事で結果的に美しいヒップが完成されるのです。
【片足でバランスを取るのは良い事だけど…】
アスリートがウエイトトレーニングで片足系の種目を選択する時に「バランスを良くするためのトレーニング」という目的で行う場合もあります。
勿論片足でバランスを取る能力を高める事で競技パフォーマンスや怪我の予防に効果があるスポーツも沢山あると思いますしそれ自体を否定するつもりは毛頭ありません。
しかしそのトレーニングも目的が殿筋を鍛える事なのであれば、バランスを取る事に意識が集中するあまり肝心のトレーニングの強度を高める事が出来なくなってしまい、結果「片足立ちは上手くなったけど筋力はつかなかった」といった事になってしまいます。
臀部を鍛える事が最優先なのであれば無理にアンバランスな条件を作ってトレーニングを行うのではなく、バランスを気にせずお尻が意識できる条件を作りましょう。
【例:スミスマシン】
【スクワットやデッドでお尻を発達させたい場合は】
片足種目ではなく両足でのスクワットやデッドリフトでお尻を発達させたいという場合は、メインのスクワット・デッドリフトを行う前に殿筋をアイソレートして刺激する事の出来る種目で事前疲労させたうえでスクワット・デッドリフトを行うと殿筋を意識しやすくなり効果的に効かせる事が出来ます。
【殿筋ウォーミングアップエクササイズ】
パワーポジションサイドステップ(足首バンド)
シングルレッグヒップリフト
サイドヒップアブダクション又はクラムシェル
ヒップエクステンション又はプランクキックバック
クロスランジ
サイドスクワット
これらの種目は腰痛を予防する効果もありますので是非行ってみて下さい。
【まとめ】
下半身のトレーニングといえば?
と問われると多くの人はまずスクワットを頭に思い浮かべると思います。
また部位を想像する人は大腿四頭筋やハムストリングス、そしてカーフという順番に思い描くと思います。
しかし実は下半身で最もパワーを秘めている関節は股関節です。
そしてその股関節の中心選手と言える大殿筋は人体の中で最も大きな体積を持つ筋肉です。
私がボディビルを行っていた時の反省点の一つが実は臀部のトレーニングを怠っていた事です。
どうも性格が大雑把なのでスクワットやデッドリフトで高重量を使ってガツガツ下半身をトレーニングするのは好きだったのですが片足種目は時間が倍かかるのであまり好んでやっていませんでした。
その結果、大殿筋や中殿筋の筋量が不足しダイエットの終盤で臀部にカットを出す事がなかなか出来ず焦って最後は無理なダイエットをしなければならなくなるという悪循環に陥ってしまいました。
ボディビルキャリアの終盤はパワーリフティング競技にも並行して出場していたので多少は改善されたのですが、もっとウエイトトレーニングを始めた初期の頃、特に時間に余裕のあった学生時代にランジやブルガリアンスクワットを沢山やっておけば良かったなと思います。
今回初めてビキニフィットネスの選手を指導する機会を得てトレーニングルーティンの中心に臀部のトレーニングを組み込んだわけですが、プログラムを作成するにあたり、動作のスピードやレップス数などは違えど、選択する種目はどれも球技や陸上競技系のアスリートのための種目選択と殆ど同じである事に気付きました。
つまり逆に考えるとボディメイク系の情報サイトなどで紹介される美尻を目的としたトレーニング種目の多くはアスリートのパフォーマンスアップや怪我予防のためにも有効だという事です。
また殿筋のトレーニングはボディメイクのためだけではなく、健康的に二足歩行を続けるために最も大切なトレーニングの一つです。
中高年の方も是非取り入れてみて下さい。
■コラム執筆者
佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg
戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・一般男子83㎏級スクワット日本記録樹立
・ジャパンクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・2018年世界クラッシクパワーリフティング選手権大会 マスターズⅠ83㎏級 5位
・2018年日本クラシックマスターズ83㎏優勝
・2018年香港国際クラッシクインヴィテーショナル大会 マスターズⅠ83㎏級 優勝
・マスターズⅠ83㎏級スクワットアジア記録樹立
・2019年世界クラシックマスターズ93㎏6位
ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年 全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年 日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年 関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝