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『カザフスタンより愛をこめて』

ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます。

SBDコラムを執筆させていただいております、東京大学運動会ボディビル&ウェイトリフティング部の久恒歩です。

 

今回の題名からご推察の通り、このコラムを執筆している現在、私はアジアクラシックパワーリフティング選手権出場のため、カザフスタンのアルマトゥイに来ております。

 

今回の大会では以下の結果となりました。

 

一般男子59kg級

検量:58.95kg

スクワット  :207.5kg (種目別1位、一般日本記録)

ベンチプレス :130kg (種目別1位)

デッドリフト :248kg (種目別1位、一般アジア記録、一般日本記録)

トータル:585.5kg (1位)

*各種記録についてはWADAのドーピング検査の結果が出るまで確定ではございません。

 

トータルならびに各種目で1位となることができましたが、ベンチプレスが足をひっぱり、トータルが自己ベストにすら及ばない結果となってしまいました。

またスクワットとデッドリフトについても、一般日本記録を出さなければ自己ベストにならないため、今回の大会では最低限の結果を残したに過ぎないと感じています。

 

今回の試合がこのような結果に終わってしまったことの原因を私なりに考え、それを今回の記事で取り上げることによって、試合に向けた調整や試合での良くない例として皆様の参考になりましたら幸いでございます。

 

(1)減量について

私は59kg級の大会に出場する場合、たいてい1ヶ月前から減量を開始します。

前回の世界クラシックパワーでは、63kg→59kgの4kg(その内水抜きは1.5kg)ほどの減量幅でしたが、59kg級の他の選手の体を見て、また約半数の選手が検量体重が59kgジャストであったことに衝撃を受けました。

 

そのため、世界で戦うためにはもう少し減量幅を大きくして筋量を増やすことが必要であると考え、今回のアジアクラシック出場にあたっては、減量開始の11月初めの時点(試合は12月3日)で65kgの減量幅6kg(内水抜き2kg)で調整しました。

 

私は食べることが好きで太りやすいので、65kgまで体重を増やしても筋量が増えたかは分かりませんが、練習でのメインセットの重量はSQとDLで世界クラシックの時より10kgずつほど増やすことができました。

 

そのため今回の試合ではスクワットとデッドリフトで日本記録をそれなりに更新することを考えていましたが、結果として最低限の更新しかできなかった要因の一つが、今回の減量にあると考えています。

 

今回の減量では、いつも減らし過ぎがちであることを口実に、減量期間も週に2度ほどラーメンを食べたり、11月16日のジャパンクラシックパワーのジュニアの部の後には(自分は出場していませんが)打ち上げという口実で食べ放題に行ったりと、いいかげんに体重を落としてしまいました。

 

最終的に水抜き前の段階で61kgまで落とすことはできたものの、筋量を維持して減量できたかという点では不十分な減量となりました。

 

やはり減量期は良い食生活を心がける必要があると、今回の減量を踏まえて、お恥ずかしながら改めて痛感いたしました。

 

また水抜きで2kg落とした点に関しても、今までで最も喉の渇きが激しかったにも関わらず試合当日の朝も落とす必要があったことや、またセット重量の増加と比較して記録の更新幅がほとんどないことを考慮すると、自分には2kgの水抜きは少し厳しい可能性があると感じました。

 

とはいえ、59kgジャストの選手が多い世界大会においてはベストの検量体重とも考えられる58.95kgに持っていく試合当日や前日の体重調整を、今回のアジアクラシックで経験できたことは大きな糧であると考えています。

 

減量について書かれたものもいろいろありますが、パワーリフティングの場合、自分にあった減量を行うためには、自身で減量経験を重ねて自分によりあった方法を模索することが最も重要になると考えています。

 

他人の成功例や失敗例が自分にも当てはまるとは限りませんので、今回の私の減量の教訓が当てはまるのは私自身だけかもしれませんが、皆様の参考になりましたら幸いです。

(2) 試技について

1.ラック高の確認不足

今回の試合では試合前にベンチプレスのラック高を測っておく機会がなかったため、BULLのラックで普段の練習時に使用している数字でそのまま申請することとなりました。

 

しかし実際にベンチの第一試技に臨んでみると、ラックの高さが予想外に低くて自分でラックアウトすることができず、初めてセンター補助をお願いすることとなりました。

 

結果として、第一試技の重量から上がりが鈍く赤旗が一つあがるという失態を犯す結果となりました。

 

第一試技の感触からラックを変更して臨んだ第二試技についても、予想に反してラックが低く、ラックアウトからすでに重く感じてしまいました。

 

すでに第一試技と第二試技で想定以上に疲れてしまったため、第三試技でのわずかな記録の上乗せを狙うよりもデッドリフトに温存しておいた方がいいと考え、第三試技は棄権することとなりましたが、結果としてベンチプレスは燦々たる結果に終わってしまいました。

 

上記の失敗の原因は、いい加減な減量でそもそも上がる重量が低下していた可能性もありますが、やはりラック高の確認を怠ったことが大きいと考えています。

 

結果としてベンチプレスが足を引っ張り、トータルの日本記録更新や世界ジュニア記録の奪還とはなりませんでした。

 

今さらではありますが、アジア大会だからと油断していた自分の愚かさを反省しており、国際大会ではどんな試合であっても緊張感を持って試合に臨む必要があると痛感いたしました。

2.普段と異なる試合環境

今回の大会ではプラットフォーム上に大きな段差や沈む箇所、さらに傾きがありました。

 

そのため、スクワットでは普通にスタート位置に下がると左右の足に高低差ができるので斜めに下がる必要があったり、またデッドリフトでは足とプレート下端に高低差や左右差があったり、補助員が支えていないとバーベルが転がり出したりと、普段は体験できないような面白いプラットフォームで試技をすることができました。

 

またベンチプレスでは、副審がお尻の見えない位置にいたため、試技前のルーティン途中でお尻をつける前にスタートコールがかかったりと、本当に普段と異なる環境で試技をすることになりました。

 

今回の大会では世界クラシックでの反省から、第一試技の重量を世界クラシックの時よりも落とし、また特に競る試合展開でもなかったため、スクワットとデッドリフトではさらに、第一試技の重量低下申請も行いました。

(ベンチでも第一試技の重量変更をする予定でしたが、私の時間の確認不足でタイムアウトとなってしまい、結果的に危ない第一試技となってしまいました。緊張感がなかったことを本当に反省しています。)

 

そのためスクワットとデッドリフトの第一試技は絶対の自信を持って行うことができましたが、今考えてみると、プラットフォームが上記のような状況であったため、第一試技を下げたことは正解であったと考えています。

(実際にデッドリフトでは軽い重量にも関わらず足元が安定せず、後ろに倒れそうになりました。)

 

国際大会という普段と異なる状況では想定外のことが起こりがちです。

順位が特に重要である国際大会だからこそ、前回のコラムでも述べたように、何があっても成功試技を積み重ねていけるように堅実な重量設定を行う必要があることを、改めて痛感いたしました。

 

またスクワットでは、世界クラシックでは第一試技から赤を取られるなど深さに不安がありましたが、今回は十分に白をもらえると自信を持てる深さで第三試技まで行ったうえで記録を更新することができました。

 

深さを十分に取ったうえでスクワットを行うことができるようになったことをと上記のプラットフォームの条件を考えると、10kgのセットの重量で2.5kgの記録の更新は、妥当なのかもしれないとも考えています。

 

 

終わりに

以上を、今回の私のアジアクラシックの振り返りならびに反省点とさせていただきます。

 

今回の大会での失敗は、減量にしろ試合自体にしろ、私自身の油断と緊張感の欠如から招いたものでした。

 

今回の大会での反省を忘れずに、寒いカザフスタンで頭を冷やして、今後も精進していきたいと考えております。

 

最後になり恐れ入りますが、セコンドをはじめ様々な面でサポートしていただいた日本選手団の皆様、ならびに応援していただいた日本の皆様、この度は本当にありがとうございました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

拙い内容ですが、来月もよろしくお願い申し上げます。

 

アルマトイ2駅にて

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