ようこそのお運び、厚く御礼申し上げます。
SBDコラムを執筆させていただいております、東京大学運動会ボディビル&ウェイトリフティング部の久恒歩です。
いよいよジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会(以下「JCP」)も1ヶ月後に迫りエントリーも公開され、皆様の中にも試合前の機運が高まっている方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
私の出場する一般男子59kgでは、去年のつくばの大会には出場しておられなかったベテラン選手の方々が多く出場されるようで、私自身もそのような選手と戦えることを楽しみにしております。
特に世界クラシックパワーリフティング選手権出場の先輩でもある蛯原選手や、今年度の世界パワーリフティング選手権に出場された久保選手、現在の59kg級の3種のベンチプレスの日本記録を所持されている久米選手など日本トップレベルの選手の方々と戦う中で、私も様々なことを勉強させていただきたいと考えております。
▲SBD Apparel Japan 2019年冬期限定モデル
(SBD Apparel Japan様より一式ご提供いただきました。文章中にて失礼いたしますが、誠に感謝申し上げます。今期の製品では特にシングレットがこれまでのものと素材が異なっているようです。早速来月のJCPで使用させていただきたいと考えております。)
さて今回は、試合前の約1ヶ月間の練習などで私が心掛けていることにお付き合いいただければと思います。
大きく分けて、(1)減量と(2)試合前の練習の2つの観点からご紹介させていただきます。
(1)減量
以前のコラムでも多少触れましたが、私は普段体重が59kgを超過しているため、試合前に減量を行わなければなりません。減量幅や期間は試合ごとによっても異なるため一概に言えませんが、普段は一つ上の階級である66kgを超えないように意識しているため、減量幅は水抜きも含めて4〜6kgほどです。私の場合、減量期間は1ヶ月で3kg落とすくらいのペースに設定すると、扱える重量の明確な低下もなく、またストレスを溜める事もなく絞ることができています。
私が行っている減量の具体的な方法としては
①外食をなるべく控える
②高脂質のものを控える。
③夕食の炭水化物の量を減らす
④白米を玄米に変える
などが挙げられます。
ただしこれらの方法を最初から全て一気に始めるのではなく、徐々に解禁するようにしています。その理由としては、一気に減量の方法を全て解放してしまうと、体重が落ちなくなった場合に克服する方法がなくなってしまうためです。
また摂取カロリーの計算は面倒なのでやっておらず、毎朝の体重計の値と練習の感覚をもとに減量の進捗を管理しています。ボディビルダーの方々のように数ヶ月もの長期間をかけて計画的に絞るわけではないため、練習で扱う重量や重さの感覚が変わらず、体重がそれなりに落ちていれば問題ないと考えています。
私が減量で最も重要視しているのは、「いかに食べる量を減らさないか」ということです。パワーリフターの減量で重要なのは、体の見た目ではなく扱える重量です。
そのため、食べる量を減らして元気のない状態でトレーニングをするよりも、減量中もしっかり食べて元気な状態で重量を伸ばす意識を持ってトレーニングをすることが重要だと思います。
(2)試合前の練習
試合前になるとピーキングという言葉をよく聞きます。人によってピーキングのやり方は異なるかと思いますが、私自身は意識的にピーキングを行うことはありません。
ピーキングは大抵の場合、扱う重量を上げて練習量を落としていくと聞いています。しかし私の場合、試合前は減量期間でもあるため、上述したように食べる量をなるべく減らさないために、消費カロリーもあまり減らしたくないと考えています。そのため試合前も基本的には、厳密な意味でのピーキングを行うことはなく、普段行っている低重量高レップの練習を行っています。
ただし1発上げの練習を全くしないまま試合に臨むのは、さすがに重量設定に不安が残りますので、試合の1ヶ月前あたりから重いものも持つようにしています。以下で私が試合1ヶ月前の期間の練習で、特に1発挙げを行う際に気をつけていることを紹介させていただきます。
① いきなり重いものを持たない
普段の低重量高レップの練習と1発挙げとでは、動きや感覚もかなり変わってきます。そのため1発挙げの練習でいきなり重い重量から始めることは、フォームの乱れや怪我に繋がりかねません。最初は第1試技以下の軽い重量から始めて、週を重ねるごとに重いものを持つことで、体を重さに慣れさせていくようにしています。
② 重くても第2試技あたりまで
普段の練習にも当てはまりますが、試合前の練習で潰れることは絶対に避けるべきだと考えています。これは怪我をしないためでもありますが、試合前に潰れることは肉体的にも精神的にもダメージが大きいためです。そのため私は試合前であっても、第3試技に持ってくるような自分のマックスの重量は扱わないようにしています。また第3試技の重量を練習で扱わないのは、自分の記録を知る楽しみは試合まで取っておきたいという理由もあります。
③ 試合と同じウェアで行う
試合を想定した練習では、試合と同じウェアを使用することが重要だと思います。特にシングレットは、着用しないとしゃがみの感覚が変わりしゃがみの深さやお尻の浮きも確認できないため、1発挙げをする際は着用すべきだと考えています。また普段の練習ではニースリーブを使用しないのですが、さすがに試合1ヶ月前からは着用するようにしています。
④ コールをかけてもらう
他人からコールをかけてもらわずに行うと、ついつい自分にあったタイミングで試技を始めてしまいがちです。しかし実際の試合では、主審は2人の副審の合図を確認した上でコールをかけるので、選手が準備ができたと思った時点からコールがかかるまで想像以上に時間がかかります。また自分では試技開始の状態ができたと思っていても、他人から見ると膝や肘のロックが不十分である事もよく見受けられます。そのため1発上挙げでは練習の段階から、審判員資格を持っている人にコールをかけてもらって試技をすることが重要であると感じています。
終わりに
今回のコラムでは、試合前の期間に私が注意していることなどを紹介させていただきました。JCPの出場者は標準記録が改定されるほどにまで年々増加し、毎年のように日本記録が更新されなど大会のレベル自体も上がってきているようです。私自身も他の選手に負けないように、優勝や自己ベストの更新を目指して頑張りたいと思います。会場でお会いした際には、皆様よろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
つたない内容ですが、来月もよろしくお願いいたします。
文:久恒 歩(東京大学運動会ボディビル&ウェイトリフティング部)