みなさんこんにちは。
今月もご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
朝晩かなり冷え込むようになりなかなか布団から這い出すのが億劫な季節となってまいりましたが皆様お元気でしょか?
私は9月の中旬頃から始めたダイエットのお陰もあって夏から秋にかけての季節の変わり目で毎年乱れがちだった生活リズムも今年は安定しており健康的なルーティンを繰り返す毎日を過ごす事が出来ています。
体重も今のところ順調すぎるぐらい順調で
目標であった年内に89.2kgまであと1kgほどまで来ています。しかし年末は長期出張が多く、私にとってはダイエットを進める事が難しい季節でもありますので、ここまで作った貯金を消化しながら三歩進んで二歩下がるぐらいの気持ちで、のらりくらり頑張って89kg丁度ぐらいでお正月を迎えられれば良いなと考えています。
さて今月の話題に入る前にいつものご報告が幾つか御座いますのでお付き合いください。
まずは11月14日(日)に兵庫県明石市のパワーフラッシュアリーナで開催された秋の関西学生パワーリフティング選手権大会に私が監督を務めます関西大学S&Cから17名の選手が出場し、そのうち7名が12月19日に同会場で開催される全日本学生パワーリフティング選手権大会(インカレ)への出場権を得る事となりました。
1人1人紹介したいのですが大変長くなってしまいますので今回は割愛します。
関西大学S&Cは2019年度の秋から関西学連に加盟したのですが、そこからコロナ禍に突入し多くの学生大会が開催出来ない状況が続いたため、このように団体での大会への出場は今回が初めてでした。今回出場した17名のうちパワーリフティング経験者は4名で13名は初出場でした。中には大学までスポーツの経験の無い女子部員も2名含まれていてバックグラウンドも野球、陸上、ラグビー、バスケ、ハンドボール、水泳、柔道、漕艇、空手、日本拳法、フィギアスケートなど様々です。
今年は1回生が8名入部してくれたので4回生3名・3回生4名・2回生4名・1回生8名の合計19名となりました。
みんな普段はラグビーやアメフト、アイスホッケー、ハンドボールなどの体育会の部員たちにトレーニングを指導するサポート活動や体育会以外の学生に対してもパーソナルトレーニングなどを行いながら勉強会や研修を重ねている学生コーチの団体です。
その中で各自が自身のトレーニング時間を捻出し自己研鑽を重ね大会で成果を出すという活動理念を今回は体現してくれて本当に嬉しく思います。
またこのような状況下であるにもかかわらず大会開催のために尽力して下さった各大学の関係者の方々、ご協力いただいた協会関係者の方々にもこの場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
オーバートレーニングの兆候と原因分析
それでは今月の本題に入ります。
冒頭の書き出しで私自身のダイエットが順調に進んでいると申し上げたところではあるのですが、実は先月末あたりに若干オーバートレーニングではないかと疑われる兆候を感じはじめました。
その時に行った原因分析と改善のための対策について今回はお話ししていきたいと思います。
オーバートレーニングの兆候については皆さん個々人で様々かと思うのですが、私の場合は睡眠の質の低下とトレーニング中のセット間インターバルの心拍数の戻り具合が遅くなってくると「ん?おかしいぞ」とオーバートレーニングを疑うようにしています。
他にもいわゆる記録の停滞(プラトー)やモチベーションの低下というのもありますが、今回はダイエット中ですので元々リフティングの記録は向上を期待して取り組んでいる時期ではありませんしダイエットの目安となる体重の減少については1週間や2週間停滞する事は普通の事なのでプラトーと呼ぶレベルには至る前に対策を講じたという状況でした。
モチベーションについてはダイエットに対するモチベーションというのは数字が動けばやる気は出るし進まなければガッカリするというのはオーバートレーニングに関係なく毎朝起きるものなのであまり関係ありませんが、季節的に寒くなってきた事と睡眠の質が低下して来ていた事もあってジムに行くのが億劫になり始めていたかも知れません。
「明日は〇時には家を出て2時間トレーニングするぞ‼」と思ってたのに朝になると
「あと30分寝ても90分トレーニング出来るんだから二度寝していいや」
に変わってしまう程度の話です。
またジムに着いてからも高重量に挑む気持ちになれなかったり、カフェインの入ったドリンクに必要以上に頼っていたり、フリーウエイトよりもマシントレーニングを選択したくなってきていたら私の場合はオーバートレーニングに片足を突っ込む手前ぐらいだと自分で判断します。
オーバートレーニングになる前というのは比較的調子が良いことが多くて、特にダイエット中はトレーニングの調子も良くてダイエットもどんどん進んでまさにフィーバー状態の時に知らず知らずのうちに疲労が蓄積され、多少の異変は感じるもののトレーニングやダイエットの効果は継続して現れているため冷静になることが出来ずに突き進み「もっとやってやれ!もっとやってやれ!」と調子にのっていると怪我をしたり片頭痛が治らなくなったり扁桃腺炎で入院してしまったりと今までも色々と失敗を重ねてきました。
スポーツでも仕事でも日常生活でもなんでも同じだと思いますが、やり過ぎで失敗しないためには常に自分を冷静に見ているもう一人の自分を胸の中に用意しておくことが重要だと私は思っています。
あとは出来る限りの記録を残しておくことで振り返り分析が出来るようにすることが重要です。
イケイケドンドンと自分の背中を押す自分だけでなく、状態を冷静に分析し評価する自分、この両方を持っている事が重要です。
トレーニング記録から原因を探る
何が原因でオーバートレーニングの兆候が表れ始めたのか?それを知るためにまずはトレーニングを定期的に再開し始めた直近7週間のトレーニング記録を振り返る事にしました。
これは7週間のトレーニング記録から週あたりで下記項目について振り返り纏めたものです。
・トレーニング回数
・総セット数
・総レップ数
・高重量セット数(90%以上の重量で行ったセットと補助者によるフォースドレップスを行ったセット)
・高重量レップ数(90%以上の重量で行ったレップ数と補助者によるフォースドレップスを行ったレップ数)
・トレーニングのためにジムに滞在した時間
※高重量セット数と高重量レップ数はフォースドレップスの回数もカウントしているので高強度セット数・高強度レップ数と呼ぶべきかも知れませんが今回は高重量と書いています。
1週目から4週目まではさほど強度には差は無くボリュームだけが段階的に増えていった印象ですが5週目から高重量セット数と高重量レップ数が急に増え、それが6週目と7週目に更にエスカレートしてしまった事が一番の原因ではないかと思いました。
また6週目と7週目は週あたりのトレーニング回数も5回と増えていたのでボリュームも当然増えジムでの滞在時間も長くなっていました。
そこで考えるべき改善策として
①トレーニング回数を減らす
②トレーニングボリュームを減らす
③トレーニング時間を減らす
④高重量トレーニングを減らす
この4つが挙げられるわけですが、この全てを減らすとなると完全なOFFのような状態になってしまうので、そこまでするのではなく最もオーバートレーニングの原因となっているものを選択して減らし、逆に影響を与えていない要素は変更せず続けようと考えました。
その結果、①と④を実行し、②と③はキープするか少し減らす程度に留めようと考えました。
改善後
ではこのオーバートレーニングの兆候を改善する為に設定した8週目と9週目を見てみましょう。
まずトレーニング頻度を5回から4回に戻しました。
ダイエットは緩やかに進めつつも、ある程度短期間で筋肉量を戻したいという思いがあるので、そのために各部位のトレーニング頻度は週1回よりも少し多めにしたいと考えました。そのためには全身を3分割で週4回というのが自分の中ではボーダーラインなのでトレーニング回数を減らすのも4回に留めました。
その代わり高重量トレーニングの割合はほぼゼロに近いぐらいまで減らしました。
高重量で低回数のトレーニングや補助者にスポットをもらってフォースドレップスを重ねるようなトレーニングを減らした代わりにセット数やレップ数は減らさずトレーニング自体のボリュームはある程度キープしました。
こちらは1回のトレーニングあたりの平均値ですが1回のトレーニングあたりのセット数・総レップ数・トレーニング時間はあまり減らさずオーバートレーニングの兆候から回復出来た事が分かると思います。
現在は睡眠の質も元に戻り、眠りが浅く途中で起きてしまったり、なかなか寝付けないという事も無くなりました。
またトレーニングのインターバル中に何度もマスクを外して窓から顔を出さなくてはならないような息苦しさやなかなか心拍数が落ち着かないと言った事は無くなりました。
そして10週目からはまた段階的に高重量トレーニングも再開していますが、逆にボリュームは少し抑えめにして両方を一気に上げないように今はコントロールしています。
まとめ
如何だったでしょうか?今回は久々にハードにトレーニングを再開し始めて1ヶ月半ほどが経過した時に感じたオーバートレーニングの兆候と原因の分析と対処方法について考えてみました。
職業柄かどうかは分かりませんが、自分のトレーニングや食生活も計画を立てて微調整を繰り返しながら、なるべくロジカルに進めていくというのが現在のスタイルではあるのですが、元々は直感型というか気になった事はとりあえずやってみるというのも自分の性格ではあるのでその場の雰囲気や閃きで強度やボリュームを増やす事も実は多いので、あとで振り返る事が出来るように記録を残す事だけは習慣的に行っています。
もちろん自分のトレーニングだけをやっているプロではありませんので調子の良い日もあればそうでない日もあります。なるべくコンディションに波風が立たないようにスケジュールを調整するのですが、それでも予定が狂う事や想定外の事態も日々起こりますので「出来る時にやっておきたい」「調子の良い時にやれるだけやっておきたい」という気持ちは常にあります。
特に年末に近付くにつれて仕事の方も忙しくなってくるので11月~12月のスケジュールやスタッフのシフトを作っていると「今のうちにやっておかなきゃ」という感じで無意識ではあるものの焦っていたのかも知れません。
トレーニングで強度やボリュームを上げていく事自体は全く悪い事ではありません。しかしそれが段階的でなければその強度やボリュームに対して身体が適応する前に疲労が残ってしまいます。それはただ単に筋肉性の疲労感や筋痛だけでは無く神経系の疲労も残っていくのです。
今回は4週目までの強度から5週目・6週目に高重量トレーニングが倍以上に増え、更に7週目にセット数やレップ数まで増えたところで異変を感じました。
しかし異変を感じオーバートレーニング気味であることを疑いはしたが、こうやって数字にして振り返ってみるまではここまで急激に負荷が増えているとは自分では分かっていませんでした。
ここで気が付かなければ大きな怪我をしたり精神的にバーンアウトしてしまったりと、もっと回復に時間を要する状態になっていたのかも知れません。
トレーニング記録はトレーニング自体の効果を振り返るためにも当然必要ですが、今回のようなリスクマネジメントの観点からも非常に重要な情報となりますので、皆さんも負担にならない範囲で構いませんので、必ずトレーニングの記録は残すようにしましょう。
他の誰のトレーニングを見るよりも多くのヒントが隠されているかも知れません。
文:佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg
戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位
ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年 全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年 日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年 関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝
指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター
資格
日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
NSCA認定 CSCS
日本パワーリフティング協会公認 2級審判員