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産後8カ月を迎えた体の変化

コラムニスト福島未里です。
9月で産後8カ月になりました。
小さかった我が子はあっという間に大きくなり、子供の成長の早さを感じています。
現在、富士市パワーリフティング選手権大会に向けてトレーニングをしています。
今回は出産後8カ月がたち、体の様子やトレーニング状況などを紹介していきます。

1.産後直後〜1カ月まで
2.2カ月〜5カ月ベンチプレス大会出場
3.6カ月〜7カ月
4.体重の変化
5.最後に

1.産後直後〜1カ月まで
産後6週~8週は産褥期と呼ばれ、妊娠・出産に伴う生理的変化が妊娠していない状態に戻るまでの期間です。
あくまで子宮の状態をはじめとした内部環境が回復するだけであり、筋肉や靭帯、骨、アライメントなどが元に戻っているわけではありません。
そういった身体的状態が元に戻っていないにもかかわらず、状態に合わない運動を始めてしまうと腰痛などの問題が深刻化し、長期的に残ってしまう可能性があります。
私は出産を終え、1カ月間は車で1時間の位置にある実家にお世話になりました。
産後早期に運動を開始してしまうリスクを考えたうえで、運動できる環境がほとんどない場所に身を置くことに決めたのです。

体は会陰の裂傷の痛み以外、大きな問題はこの時点でもありませんでした。
ただ、抱っこや授乳、おむつ替え、沐浴など赤ちゃんのお世話をするために長時間の同じ姿勢を取り続けたことによる肩こりなどの不快感が現れました。
体とも相談しながら、股関節周囲筋群・胸郭などのリリースやストレッチを行うだけにとどめ、最初の1カ月間は回復に努めました。

2.2カ月〜5カ月 ベンチプレス大会出場
6月2日(5カ月目の月)に静岡県ベンチプレス選手権大会が予定されており、それを復帰戦としました。
スクワットとデッドリフトはベンチプレスと比較して腹圧のかかり方が大きいため、重量を求めたトレーニングを行うのに不安がありました。

産後6週で産前からお世話になっていた理学療法士の方に来ていただき、体のチェックをしてもらいました。
産後、特に確認が必要な部分の2つを紹介します。

腹直筋離開
妊娠して、お腹が大きくなるにつれて左右の腹直筋をつなぐ白線がさまざまな理由から脆弱化することで発症します。
腹直筋が離開すると腹圧がかかりにくくなります。
産後トレーニングを実施して、お腹に力が入りにくいと感じた方は、まだ腹直筋がしっかり治癒していなかったことが原因としてあったかもしれません。

多くは産後6~8週で自然に元に戻りますが、自然治癒の妨げにならないためにも、産後早期にシットアップやカールアップなど表層筋を動員するエクササイズは避けるべきだと言われています。

私の場合は6週の時点でほぼ産前の状態まで戻っていると評価していただきました。
産後なかなかお腹がフラットにならないため、腹筋運動をたくさんしてしまう方もいるようです。
出産を経験した方はご存じだと思いますが、産んだらすぐに元の体に戻ることはありません。
私も産後6カ月たってやっと妊娠前に履いていたズボンを履くことができました。
長い目で見て健康でいるためにも、回復に努める期間は大切です。

腹直筋離開のレベル

骨盤底筋の収縮
妊娠の際の子宮の増大により、骨盤底筋群は押し下げられ、出産に向けたホルモンの影響で弛緩性が高まります。
私もその結果、妊娠中はくしゃみや咳などの瞬間的に腹圧がかかる動作で尿もれが発生してしまっていました。

妊娠中から骨盤底筋群の収縮はもちろん、出産時は弛緩しないと出産がスムーズに進まないため、弛緩するトレーニングを継続してきました。
産後6週たち、まず①しっかりと収縮ができるかどうか(最大収縮)、②最大収縮を一定時間継続し、弛緩もできるか、③最大収縮と弛緩を繰り返し反復して行えるか、などコントロールも含めたうえで、運動を始めても問題ないレベルまで回復したと評価していただきました。

妊娠中は骨盤底筋群に常に負荷がかかっている

評価していただいてから約3カ月後に静岡県ベンチプレス選手権大会が予定されていたので、100㎏を挙上することをひとまずの目標としてベンチプレスを中心にトレーニングを進めていきました。
70㎏~80㎏までは妊娠中も扱っていたので、特に問題なく挙げることができましたが、そこから100㎏を試合形式で扱うようになるまでのハードルが高かったです。

抱っこや授乳で長時間同じ姿勢を取り続けることにより、体が凝り固まり柔軟性が低下していました。
妊娠前の自分のフォームを取ることができなくなり、不調になっているようでした。
自分が悪い姿勢をとっていると理解したうえで、正しい姿勢の意識とそれを改善するためのストレッチやエクササイズを取り入れました。

骨盤底筋群は回復していると評価していただいたものの、産後約4カ月は骨盤が妊娠前の状態に戻っていく期間とも言われています。
それを考慮し、スクワットやデッドリフトはベルトを巻かずにフォームが崩れずにできる重量までにとどめておき、腹圧のかかりすぎによって骨盤周囲に負荷がかからないようにしました。

大会当日は周りの方々に子供を見ていただき、目標としていた100㎏を挙上することができました。
自分のベストと比べてしまいがちですが、大会に出ることによって今の自分を見つめなおすことができますし、参加される方とのコミュニケーションが楽しく、また次も頑張ろうと思うことができました。
産後、体に問題がなければ積極的に大会に出場することをお勧めします。

3.6カ月〜現在
ウェイトリフティングの練習もスタートしました。
スクワット・デッドリフトもベルトを巻いての練習を始め、Max測定も行いました。
その結果、スクワットは120㎏、デッドリフトは130㎏でした。
筋力的には少し余裕がありましたが、それ以上の重量にチャレンジしようとした際に骨盤底筋群に圧がかかり、尿が漏れてしまいそうな感覚を覚え、挙上を中断しました。
回復も早く、大きな問題もなくここまで来ていましたが、まだ完全には回復していないのだなと改めて感じた瞬間でした。

次の目標は10月の富士市パワーリフティング選手権大会で標準記録を取ることです。
大会に向けてとりあえず週4日ならできるだろうとプログラムを決め、スタートしました。
仕事もしているし、子供のお世話もあるし…と余裕を持った内容を選択したつもりでしたが、全然思うようにはいきません。

まず1回のトレーニング時間が長く取れないことがわかりました。
不規則に変化する自分のスケジュールと子供の生活リズムが合わず、トレーニングをするタイミングが定まりません。
時間ができても、アップもままならずバタバタと重量を持ってなんだかやりきれずに終了、といった具合です。
決めたことがやれない自分に対してイライラしてしまい、元も子もないと思ったので、あらかじめプログラムを決めるのをやめました。

今自分が楽しくトレーニングを継続できる方法は何だろうと考えた結果、大会が予定されているのでスクワット・ベンチプレス・デッドリフトを中心に据えつつ、シンプルに自分がやりたい種目をやりたいだけ行うことにしました。
楽しくトレーニングができるようなり、気持ちも乗ってくることでトレーニングがはかどり、体に刺激もしっかりと入るようになりました。
重量も本当に少しずつですが戻ってきたような気がします。

4.体重の変化
出産前が58~59㎏台。妊娠したピーク体重が68.75㎏で約10㎏増加しました。
妊娠後の体重増加は個人によって許容範囲が変わってきます。
私の場合は特に担当医からの指導もなく許容範囲に収まりました。
出産後62㎏まで落ちた後、産後3カ月まではほぼ体重は変わらず、4カ月目になってからまただんだんと落ち始め、ここ最近は60㎏を切りそうな日もあるようになりました。

停滞していた体重が落ち始めた要因は4月から本格的に仕事を再開し、日常生活でより多く体を動かすようになったことや、産後の体の回復が進んだことがきっかけになったのではと自己分析しています。
6月の大会は授乳もあり、減量をしたくなかったので63㎏級で出場しました。
現在、授乳もミルクに移行したので10月の大会は63㎏級で行こうか57㎏級で行こうか検討中です。

5.最後に
子どもがいる中で、妊娠前と大きく変わらず仕事ができているのは自分の両親や義理の両親はもちろん、子連れでも大丈夫と言ってくださるお客様やサポートしているチームのコーチ・選手の理解があるからです。
ありがとうございます。

サポートしている選手が空いている時間に子どもを見てくれている

正直、自分が一番調子良かったところまで戻せる想像がついていません。
しっかりトレーニングができていないのが一番の要因だと思いますが、そうそう筋力って戻らないものなのだと改めて感じています。
出産は交通事故に例えられることもあるくらい負荷が高いものです。
新しい自分に生まれ変わったつもりで、子育てを楽しみながらトレーニングも初心に帰って一から頑張っていきます。

参考文献
・Antonio Corvino “Diastasis of rectus abdominis muscles: patterns of anatomical variation as demonstrated by ultrasound” Pol J Radiol 2019; 84: e542-e548
・東京大学医学部付属病院 女性診療科・産科、2019、『Health Management for Female Atheletes -妊娠期・産後/更年期・高齢期のコンディショニング-』

◆コラム執筆者

福島未里(ふくしまみさと)
静岡県富士市FTGYM所属
FTGYM(https://ft-gym.com/)

ベスト記録
パワーリフティング(ノーギア)
SQ145kg
BP113kg(一般女子57kg級日本記録)
DL165kg
TL423kg(一般女子57kg級日本記録)

2013年度
アジアベンチプレス選手権大会(フルギア) ジュニア57㎏級1位
2014年度
世界ベンチプレス選手権大会ジュニア57㎏級(フルギア)2位
2017年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57㎏級1位
2018年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級1位
2019年度
世界ベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級 5位
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会 一般女子57kg級1位
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子63kg級1位
2021年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級2位
2022年度
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会一般女子57kg級1位

保有資格
日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー
NSCA公認CSCS
健康運動指導士
柔道整復師

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