皆さま、今月もご覧頂きましてありがとうございます。
SBDコラムニストの栗原弘教です。
今回は、多くの方がスクワットなどのトレーニングで感じている股関節の可動域改善の為に必要なMobilityドリル、Activateドリルをご紹介いたします。
目次
・股関節の作用
・股関節の硬さの原因
・股関節の硬さにより生じるデメリット
・股関節の硬さを改善することで得られるメリット
・Mobilityドリル、Activateドリルの紹介
・まとめ
股関節の作用
股関節は球関節といって、可動域が非常に広い関節構造をしています。
動作としては、
・股関節屈曲 = 腿を上げる動き
・股関節伸展 = 脚を後ろへ蹴る動き
・股関節内転 = 脚を内側へ閉じる動き
・股関節外転 = 脚を外へ開く動き
・股関節内旋 = 脚を内側へ捻る動き
・股関節外旋 = 脚を外側へ捻る動き
があります。
それぞれの動作が円滑に行われていれば、スクワットなどのトレーニング中にも痛みや違和感、詰まり感などを感じずに行えるのですが、なかなかそうは行かないのが現実です。
股関節の硬さの原因
股関節の各動作の硬さの原因としては、
・股関節周辺の筋肉の張力関係が崩れている
・股関節周辺の軟部組織の硬さ
・関節包の硬さ
などが挙げられます。
上記の様に、原因が筋肉なのか、軟部組織なのか、関節包なのか、によって適切なアプローチは異なります。
一例としてですが、
◉筋肉の硬さ = ストレッチ、PNF(注)、マッサージなど
◉軟部組織の硬さ = 俗に言う筋膜リリース、フォームローラー(振動付きならなお良し)、コンプレフロスなど
◉関節包 = 関節モビライゼーション(施術 or セルフ)
(注) *PNF=proprioceptive neuromuscular facilitaition:固有受容器神経筋促通法
リハビリが発祥の方法。可動域改善や筋出力の改善といった効果がある。
などが挙げられますので、いつも行なっているケアで効果が現れにくい場合は、違ったアプローチを試すことも必要かもしれません。
股関節の硬さにより生じるデメリット
股関節が硬い事で生じるデメリットは、適切な関節可動域が取れない事で筋肉を最大伸展最大収縮させる事ができないと言う事が一番大きいかと思います。
スクワット動作などでは、深くしゃがめない事が多いのと、股関節前部に詰まり感や痛み、違和感を覚える場合が多くなってしまいます。ランジ動作やワイドスタンスでのデッドリフトでも同様のケースが考えられます。
加えて、股関節の可動域をカバーする代償動作として、腰部や膝関節に過負荷がかかり、二次的にそちらへ痛みや違和感が出てしまうといったケースも、指導現場では多く見受けられます。
股関節の硬さを改善することで得られるメリット
上記に記した点が全て改善していきますので、とても大きなメリットになるでしょう。
筋肥大を目的にしたボディメイクの為のトレーニングでも、重量を追い求めて行うパワーリフティングの為のトレーニングにおいても、関節可動域を確保し、最大収縮最大伸展が行える様にする事はとても重要になります。
また、代償動作の改善にも繋がる事で、腰痛や膝痛の緩和、改善として効果を表す事もあるでしょう。*これは特にケースバイケースです。
Mobilityドリル、Activateドリルの紹介
【Mobilityドリル①】
目的:股関節前方の詰まり感の改善、股関節屈曲可動域の拡大
下の写真の様にやや強めのテンションのバンドを、硬い方の脚の股関節に引っ掛けます。
この時、バンドはしっかりと脚の付け根まで引っ掛けてください。
また、バンドは脚の真下方向から引っ張る位置に固定してください。
引っ張る方向がズレてしまうと狙った効果が出せない事があるので、フラットベンチやパワーラックなどで固定して行うと良いですね。
次に、下の写真の様に膝を抱える様にしながら股関節を屈曲していきます。
膝を抱えた状態で2〜3秒程度静止し、股関節前方にテンションが掛かるのを感じましょう。
その後はゆっくりと脚を戻し、また膝を抱えると言う動作を繰り返します。
回数は10〜15回もできれば十分かと思います。
1セットやってみて、スクワット動作や腿上げなどで動作チェックを行い、まだ詰まり感や違和感が強ければ再度継続して数セット繰り返して見ると良いでしょう。
【Mobilityドリル②】
目的:股関節内側の詰まり感の改善、股関節内転可動域の拡大
下の写真の様に、股関節の真横からやや強めのバンドで股関節に引っ掛けます。
上の写真の状態から、下の写真の様に脚と反対側の手をサポートとして使いながら脚を内側へ倒していきます。
この時、股関節内側にしっかりとバンドに引っ張られている感じが出る程度のテンションを確保しましょう。
これを①と同様の回数、セット数をこなします。
【Mobilityドリル③】
目的:股関節前方内側の詰まり感の改善、股関節内旋可動域の拡大
②の様にバンドをセットしますが、下の写真の様にやや身体より外側に足を着き、膝を曲げた状態で行います。
上の写真の状態から、下の写真の様に、膝を内側へ倒す(自然と内旋動作が入ります)様に動かしていきます。
他のドリルと同様に、内側へ倒した時にしっかりとバンドに引っ張られる感じが出るのが理想です。
注意点としては、脚を内側へ倒した時に背中や腰が浮かない様にしてください。
しっかりと動作を股関節で行うのが重要になります。
回数、セットは①②と同様です。
【Activateドリル①】
目的:大臀筋の促通と股関節伸展、外転動作の獲得
下の写真の様に、仰向けの状態でループバンド等を膝上まで通し、足裏を合わせた状態で両膝を大きく開いた状態をとります。(スタートポジション)
その状態から、大臀筋の力を使って股関節を天井に突き上げる様にして臀部を持ち上げます。
この時、開いた膝がバンドの力に負けて閉じていかない様にしてください。
しっかりと最大に膝を開いた状態で、股関節伸展動作を行いましょう。
また、臀部が上手く使えない場合は、腰部の伸展動作(=腰を反る)で臀部を持ち上げる代償動作が出る事が多いので、その点には十分注意してゆっくりと行なってください。
この場合は、腹筋の力も抜けている事が殆どなので、腹筋の意識も常にしておきましょう。
トップの位置が一番臀部、腹筋共にキツくなります。
*トップポジションでは、太腿、股関節、胴体が一直線になるのが理想です。
回数、セットは10〜12回を1〜3セット行うのが目安です。
メイン種目の前やスクワットなどのセット間に取り入れるのがおすすめです。
【Activateドリル②】
目的:大臀筋による股関節伸展動作(促通)+反対側の腸腰筋のstability能力、同時収縮の能力向上
仰向けになり、ループバンドを写真の様に足の甲辺りに通します。
その状態から、下の写真の様に股関節の制限が掛かっている側の脚(写真:左脚)を伸ばしていきます。大臀筋による股関節伸展の動作ができていれば、しっかりと臀部に収縮感を感じられるはずです。
この時、反対側の脚(写真:右脚)はつま先を上げ、しっかりと股関節屈曲90〜100度程度を維持しましょう。
また、股関節伸展の代償動作として腰部の伸展(腰を反る動き)も出易いので、しっかりと腹筋の意識を持ち腰部の伸展が出ない様にキープしながら動作を行う事もとても重要です。
上の写真の動作に慣れてきたら、下の写真の様に股関節伸展の意識(=大臀筋を使う意識)で踵を地面に着く程度まで下げていきます。
そうする事で、よりダイナミックな股関節伸展動作と、大臀筋の収縮感が感じられます。腸腰筋などの拮抗筋にも能動的なストレッチがかかり、動作の改善へとても役立ちます。
当然ですが、この場合は体幹部のstabilityの能力もより重要になるので、意識を疎かにしない様に心がけてください。
回数、セットに関してはActivateドリル①と同様に行なってみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか?
股関節に関しては、普段からケアやトレーニングを行なっている方も多い部位ですが、中々動作が改善していかないというお声も多いので、今回は私自身やMaster Mindのクライアントも行なっている方法を幾つかご紹介させて頂きました。
ストレッチ → Mobilityドリル → Activateドリル → トレーニング
と言う順番で、トレーニング前にしっかりとコンディションを最適化した状態を作る事を習慣にしてみてください。
今回ご紹介した内容も、ぜひお試し頂いてスクワット動作の改善や、トレーニング効果の最大化をさせて頂ければと思います。
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■コラム執筆者
栗原 弘教
Training-studio“Master Mind”:https://mastermind85.com
Twitter:@kuririn_h
instagram:hirokurihara
:mastermind2012ebisu
東京都 Training-studio“Master Mind”所属(https://mastermind85.com)
ベスト記録(ノーギア)
93kg級
スクワット 240kg
ベンチプレス 150kg
デッドリフト 250kg
トータル 635kg
105kg級
シングルベンチプレス 170kg
戦績
ジャパンクラシックパワーリフティング大会 出場4回 最高8位
2017 東京都秋季パワーリフティング選手権大会 93kg級 3位