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世界クラッシックパワーリフティング選手権大会参戦記①

【はじめに】

 

いつもご覧いただき有難う御座います。

SBDコラムニストの佐名木宗貴です。

いつもご覧いただくのに時差があり大変申し訳御座いませんが、今回もこのコラムを書いているのは5月31日の夜から6月1日(出発前夜)にかけて。

ちょうど昨日(5月30日)の昼に世界クラッシックパワー(以下WCPと略す)へ向けた最後のトレーニングが終了したという状況です。

先月のコラムでも紹介したトレーニング仲間

【審判から見える世界 2級審判への道③(はじめてのフルギア3種、全日本パワーリフティング選手権大会)大切なのは仲間】

とWCPの第一試技と第二試技を想定した試合形式の練習を行い、大変良い感触を得ました。

 

 

明日(6月2日)の朝7時50分の飛行機で一旦成田へ飛び日本選手団集合、そこから皆でデンマークのコペンハーゲンへ約11時間強のフライトで、更にコペンハーゲン空港からバスでスウェーデンのヘルシングボリへ2時間かけて移動するという長旅です。

時差は-7時間ですので現地に到着するとまだ6月2日の午後3時か4時頃に戻るので6月2日をもう一度やり直すような形で、帰りは勿論その逆です。

ノミネーションでの順位は14人中8番目ですが6月3日の最終テクニカルミーティングまでは階級変更などもあると思いますし、当日の検量が終わってみなければ実際には何人出場するのか分かりませんが、ノミネーションの数字を信じるならば上位5人は予選で690kg以上の記録を出していますので現在の私の力で勝つことは現実的ではありません。しかし6~7位の選手は届かない数字ではありませんので6位までは順位が伸ばせるのではないかと思っています。

またM1-93kg級のトータルアジア記録が652.5kgであることから、もしも試合展開の中で順位が孤立し順位的モチベーションが低下する様ならこの数字を超える655kgをターゲットに試合を進めようと考えています。

 

今月から3ヶ月のコラムはこのWCPへむけた

【準備】※出発前に書いたもの

【渡航から試合前夜】※滞在期間中のホテルで書いたもの

【試合当日と帰航】※大会後帰宅してから書いたもの

と三段階に分けて参戦記を綴っていこうと思います。

当然このコラムをご覧になっている皆さんは既に結果を御存じだと思いますので結果を見ながら「あぁそうだったのか」と振り返っていただければと思います。

 

 

【世界クラッシックへ向けた調整】

 

 

まずはこのWCPへの準備を行う中で中間試験的に出場した4月上旬の大阪パワーまでの取り組みについては4月末のコラムの最後の方に書きました【大阪パワーへ向けたトレーニング】の部分をご覧ください。

さてこの大阪パワー以降、体重を気にせず思いっきりトレーニングに打ち込めるようになり特にスクワットで大幅に記録を伸ばせるのではないかと考えました。

そこでこの大阪パワーまで取り組んできたスモロフプログラムの設定重量を大阪パワー以降はもう一段階重くして更なる記録の向上を狙いました。

ただしデッドリフトやベンチプレスも疎かにしないよう、また直前まで高頻度スクワットを行って肝心の試合日に疲労を残してしまわぬようにオリジナルのスモロフプログラムを自分用に緩和改良して試合日にピークを持っていくように作り変えました。

 

 

【改良スモロフプログラム】

 

 

それでは大阪パワーまでとそれ以降のトレーニング内容を以下の表にまとめてみました。

13週間あるオリジナルスモロフプログラムの最初の5週間を大阪パワーまでの準備としました。5週目に予定よりもオフを増やし4回目のスクワットを6週目の頭に持ってきています。これは疲労回復の為でもありましたが大阪パワーまでの日数を考慮して若干のピーク合わせを行ったためです。

オリジナルでは6週目はMAX測定をして7週目と8週目は移行サイクルとして疲労回復に努めるのですが

私は6週目にスクワットだけ大阪パワーの第二試技想定まで行って、7週目の最終日に大阪パワーが来るようにスケジュールを組みました。

この間のベンチプレスは以下のようにしました。

ベンチプレスはメインが上半身の種目ですのでそこまでスクワットに影響を及ぼすものではないのと、2月のジャパンクラッシックパワーで肩を再度痛めてしまった関係で重量的にもリハビリ程度でしかトレーニング出来ていませんでしたので空き時間を利用して軽い重量で肩が痛まず出来るフォームを探しながらやっていたという感じです。

問題はスクワットに影響するであろうデッドリフトですが

ご覧の通りスクワットに影響の出ない日を選んで少な目で行いました。

結果的に大阪パワーで最も調子が良かったのはデッドリフトなのでこの時点で

デッドはあんまりやりこまん方が調子ええな…」と考えて8週目以降も最小限でWCPまで行こうと思いました。

 

本来スモロフプログラムの重量設定はプログラム開始時点でのMAX数値から換算された重量で行われるべきだと思いますが、この大阪パワーに向けた最初の5週の重量設定は230kgが1RMとして換算していました。

昨シーズンの私の試合でのスクワットは

カルガリーWCP:220kg
香港国際:235kg

ジャパンクラッシックマスターズ:230kg

JCP:220kg

でした。

今回細かい説明は割愛しますが実はこの4大会で使用したシューズは以下の通りでした。

カルガリーWCP:リフティングシューズ

香港国際:レスリングシューズ

ジャパンクラッシックマスターズ:リフティングシューズ

JCP:レスリングシューズ

簡単に言うと私はスクワットを「バーベルと地面に身体を挟む行為」と捉えていますので最も重要なのはバーベルと身体の接地面と地面と身体の接地面だと考えています。

つまりバーベルの担ぎとシューズです。

私の場合残念ながら肩が悪いので、肩関節の調子によって実行できる担ぎが変ります。

担ぎが変ればシューズも変えるのは当然の事です。(すいません話が長くなるので別の会で書きます)

この1年間肩の調子と向き合いながら試行錯誤した結果、2019年WCPにはレスリングシューズで挑む事としましたので、この2月からスタートしたプログラムもレスリングシューズで行いました。

直前のJCPもレスリングシューズでしたので、JCPで記録した220kgを現状のMAX値として換算するべきかとも思いましたが、数値化してみるとあまりにも簡単であると思いました。しかし香港で記録した235kgで数値化すると若干キツイように感じました。ですので、230kgで手を打った、そんな感じです。

 

大阪パワーでの結果は220kg-〇、230kg-〇、235kg-×潰れ

でした。

つまり9週目からの重量設定も変わらず230kgからの換算とするべきですが、4月のコラムでも書いた通り、階級を上げる決意をしましたので少し無理をしてでも練習重量を上げてやり切ろうと考えました。

そこで希望的MAX値を242.5kgに設定して重量設定を行いました。

これは83㎏級での自己ベストである241kgを超えるという気持ちと2012年のアジアクラッシックで挑戦して失敗した(色々あって失敗した)重量を世界の舞台でとりたいという思いからでした。

オリジナルであれば7週目と8週目を移行期として回復に努めるのですが先に記した通り7週目に大阪パワーが来るようにしたので私の移行期は8週目だけです。WCPまでの日数を考えると、もう1週ずらして9週目も移行期にして続けても良いかと思いましたが重量設定を上げているので途中で余分に回復日が必要になる可能性がある事と4月5月は仕事も忙しくなるので予定通り出来なかった時の保険としてある程度の日数が必要だろうと考え9週目から再スタートしました。

 

想定通りと言うか何と言うか、今年はゴールデンウィークが長かった関係で、11週目にスケジュールが合わなくなって予定がずれ始めました。

しかしこれも疲労を回復させるためには丁度良いとプラスに考え仕事や家庭のスケジュール優先で微調整を繰り返し表のような形で続けていきました。

11週目の3回目が12週目の最初に、12週目にやるはずだった内容は12週目に1回、13週目に2回、とやってオリジナルでのMAX測定への準備にあたる13週目の1回目を14週目の頭に迎える事となりました。

この時点(5月20日:スウェーデンへ出発する13日前:試合の18日前)でWCPに向けてピークを作る2つの選択肢を考えました。

  • このまま14週目の週末(恐らく試合の12~13日前)にMAX測定を行い、ピークをキープしながら他の2種目の調整を行う。
  • スクワットのピーキングをもう1週かけてゆっくり行い、その間に他の種目(特に調子のあがっていないベンチプレス)を行い、試合の8日前に3種目通しの最終練習を行い、そこをMAX測定とする。

私の選択したのは後者でした。

ベンチプレスはゴールデンウィーク以降ようやくフォームが固まってきましたのでラックアップやプレスコールももらいながらの調整を行いました。

デッドリフトはメインセットを1セットしか行わないようにしてスクワットの後の疲労した状態で行っていたのですが、最後はデッドリフトのみの日を作りセットの自己ベストを更新できました。

グリップさえ問題無ければ試合でも自己ベストを更新する265kgが引けると思います。

 

そして予定通り試合の8日前にあたる5月30日に第二試技想定重量までを試合形式で行って調整を99%終えました。残りは現地での微調整となります。

 

 

【最終調整を終えて】

 

 

最終調整で上げた重量は今コラム最初の動画の通りです。

スクワットは240kgが軽くあがったのでスモロフで設定していた242.5kgを第三試技でやるのか?245kgをやるのかは当日の調子で決めたいと思います。

ベンチの動画は実は145kgを1回潰れた後に再挑戦であげたものですので第三試技想定という事になります。

試合でもある事だと思うので良い調整が出来ました。

140kgは安定しているのでスタート重量は140kgで良いと思いますが、現地でエレイコの台でも練習して最終的に判断したいと思います。

デッドリフトは260kgが軽かったのでオマケの2発目で締めました。

大阪パワー前と同様に練習量は少なく刺激だけ入れるような調整でしたが感触は悪くありません。

 

 

【次回予告】

 

 

次回はスウェーデンに着いてからWCPに行くための渡航準備、特に費用について振り返りながら書いていこうと思います。

今年度より追加された健康診断についてや、ユニフォーム、SBDから商品を提供される場合の届け出など世界大会ならではの「そんなんせなあかんの?」「ホンマに全部自費なん?」っと突っ込みどころは多いものの今後出場を目指される方々のためにありのままに書いていこうと思います。

また現地で自分の試合(マスターズの最終日です)までの日本選手団の結果、特にセコンドに入った選手についてなどを書いていこうと思います。

それでは今回もお付き合いいただき有難う御座いました。

行ってまいります!

 

 

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■コラム執筆者

佐名木宗貴
ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦跡
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇

・一般男子83㎏級スクワット日本記録樹立
・ジャパンクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシクパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝

・2018年世界クラッシクパワーリフティング選手権大会 マスターズⅠ83㎏級 5位
・2018年日本クラシックマスターズ83㎏優勝
・2018年香港国際クラッシクインヴィテーショナル大会 マスターズⅠ83㎏級 優勝
・マスターズⅠ83㎏級スクワットアジア記録樹立
・2019年世界クラシックマスターズ93㎏6位

ボディビルディング
2000~2001年  関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年     全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年     日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年     関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

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