皆様いつもご覧いただき有難う御座います。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
毎年同じですがこのコラムが掲載されるのは2019年12月末日ですので、皆さん既に大掃除など年越しのための支度を終えて今年一年を振り返っている頃でしょう。
その一方でボディビルやフィジーク、ボディフィットネス、ビキニなどの所謂ボディメイク系競技に来年もチャレンジされる方々は「年が明けたら減量だ・・・」と友人知人や家族との“最後の晩餐”を名残惜しく楽しんでいる頃かも知れません。
そこで今月はボディメイク系競技のためのダイエットを成功させるために、年明けから頑張ろうと決意を固めている方々へ向けた内容とさせていただきます。
その前に、今月もご報告をさせて頂きます。
【ご報告①:ジャパンクラシックベンチプレス@兵庫県明石市】
2019年11月30日(土)~12月1(日)に兵庫県明石市のパワーフラッシュアリーナで開催されましたジャパンクラシックベンチプレスのジュニア部門に私が監督を務めます「関西大学学生S&C」より1名の選手が参加しましたので結果をご報告させていただきます。
Jr74kg級 藤井崇彰 6位 (学生S&C4年)
関西大学学生S&C主将の藤井選手が2週間前のジャパンクラシックパワーに引き続き参戦し初めてのベンチプレス大会ながら6位と健闘しました。
今年の7月から急遽フィジークから転向した選手でしたが見事にハマり短期間で立派なパワーリフターへと成長しました。
社会人になっても競技を続けて欲しいと願います。
そしてこの大会には私自身も初めて出場いたしましたので続けてご報告となります。
マスターズⅠ93kg級 佐名木宗貴 5位
第一試技145kg〇〇〇
第二試技150kg〇〇〇
第三試技155kg×××潰れ
という内容で5位となりました。
私にとっては2012年の大阪ノーギアベンチ以来7年ぶりのシングルベンチ大会だったので、多くの方から「ベンチも出るんですか?」「なんで出るんですか?」と聞かれたのですが、一つは9月のクラシックマスターズから次の大会までの期間が開きすぎて試合感覚が鈍るのを防ぐのが理由です。
また9月以降にスクワットの頻度を減らすことを予め予定していたので「その代わりベンチの頻度が上がってメチャ強なるやろな~」という淡い期待から「近場であるし、どうせ学生も出るから応援だけじゃなくて自分も出よ」という感じでエントリーしました。
数字的な目標設定は9月のクラシックマスターズで成功した152.5kgをエレイコ台でも成功させるというのが目標でしたが、途中の練習で既に152.5kgがあがっていたので(BULLの台で)目標設定をここ数年挑戦すらしていない155kgへ修正して臨みました。
予定通り第二試技で150kgを成功しましたので第三試技で155kgに挑戦しましたが、残念ながら潰れてしまいました。
しかし目的としていた試合感覚を得るには十分な緊張感を味わい、また三種の試合と違い試合時間も短く身体への負担も少なく目的を果たす事が出来たので私にとっては収穫の多い試合でした。
応援して下さった皆さん、大会関係者の皆さん有難う御座いました。
次は2020年2月末のアジアパシフィック選手権にエントリーする予定ですので引き続き応援を宜しくお願いいたします。
それでは今月の本題に戻ります。
【中・長期的なダイエットを計画するための注意点】
ボディビル・フィジーク・フィットネス・ビキニなどなどボディメイク系の競技にはつきもののダイエットですが、皆さんはコンテストのためのダイエットをどのぐらいの期間行うのでしょうか?
オフ期とコンテスト当日の体重・体脂肪の差によると思いますが、おおよそ半年ぐらいの準備期間を設ける方が多いのではないでしょうか?
勿論この半年の中にも助走期間のような軽めのダイエットで過ごす時期もあればラストスパートで地獄のように追い込む時期もあり、そのペース配分は人それぞれだと思います。
今回はそのダイエット期間をどう過ごすべきか?失敗しないために注意すべき事について私の考えを書いてみようと思います。
【ゴールまでに使えるカードはいくつあるのか?】
私はコンテストへ向けたダイエットの事をゲームのようなものだとイメージしています。
どのようなゲームなのかというと、自分の身体が「これ以上体脂肪を落とすんじゃない!」という警告を発し防衛反応を示そうとするのに対して「いやいや別に無理なんかしてないよ!そんなに警戒しなくても大丈夫!」と自分の身体を騙し防衛反応を起こさせないように理想の身体へと近づけるゲームです。
この半年に及ぶゲームの中で使えるカードは幾つもあります。
・炭水化物を減らす。
・脂質を減らす。
・食事のタイミングを調整する。
・炭水化物や脂質の種類を変える。
・水分摂取を増やす。
・有酸素運動。
・高強度インターバルトレーニング。
・ウエイトトレーニングのボリュームや強度の増減
・サイクルダイエット
・ダイエットに効果のあるサプリメントの摂取
などなど代表的なものだけでも沢山のカードを持って旅に出ます。
しかしそのカードも劇的に効果が出るような極端な使い方をしてしまうと身体に負担をかけている事がバレてしまいますので、気づかれないようにゆっくりとゆっくりと計画的にカードを切っていきます。
【最後の一番キツいところまで何枚のカードを隠し持てるか?(余力)】
どんなダイエットでもプラトーは必ず訪れます。
1日や2日体重計の数字が動かなかったからと言ってすぐに取り組みを変えたり、プランを変更するのは我慢が足りないと言わざるを得ませんが3週間も4週間も変化が見られないならそれは次のカードを切るタイミングかも知れません。
しかしこの変化が無いというのも体重計や体脂肪計の数字だけを頼りにするよりは、写真や動画で記録したり、信頼できるコーチに客観的に判断してもらった方が良いでしょう。
数字が動いていなくても見た目は変わっている時期というのは必ずあります。
ボディメイク系のコンテストで競うのは数字ではなく見た目です。
見た目が変わっているかどうかが一番重要です。
話を元に戻します。プラトーが訪れた時に次なるカードを切るわけですが初心者が陥りやすいことの一つがこのカードを序盤に使い果たしてしまうという失敗です。
例えばダイエット開始から最初の1ヶ月ほどは、特にそんなに頑張らなくても炭水化物を少し減らすか、脂質を減らすか、軽い有酸素運動を行うぐらいで十分効果が表れます。
しかしその序盤で「おぉ!メチャクチャ減るやん!もっとやれ!もっとやれ!」と調子に乗ってあれもこれもとカードを何枚も使ってしまうと一番キツい最後の1~2ヶ月で使えるカードが無くなってしまうのです。
そうなってしまうと今度は既に使っているカードを重ねて使い続けるしかありません。
低炭水化物⇒ゼロカーボ、低脂質⇒無脂肪食、有酸素運動の時間・頻度増、ウエイトトレーニングのボリューム増、色んなサプリに手を出すなどなど、どんどん身体も苦しくなり運動に費やす時間が増え無駄なお金を使い生活や仕事にも影響を及ぼしストレスも増えどんどんドツボにはまっていきます。
そして筋肉も失い基礎代謝も下がりボロボロに疲弊している割には不本意な身体になってしまいます。
そうならないために大切なのはなるべくカードを使わずに次の一手を残したままダイエットを進める事です。
例えば、低炭水化物だけでダイエットが進んでいるのならば脂質を減らしたり有酸素運動を行うのは後にとっておく。低炭水化物一辺倒でプラトーが来たら炭水化物の種類を変えてみる。それでも進まなければ炭水化物の量に強弱をつけてサイクルさせてみる。それでも進まないなら・・・ようやく次のカードを切ります。
【最後は誰でも地獄を見る】
ボディビルであれ、フィジークであれ、フィットネスであれ、ビキニであれ・・・誰でも最後の1~2ヵ月は地獄を見ます。
私は何も最後まで楽にダイエットが出来るなどと言うつもりはありません。
ただ、その地獄を乗り切るための最後の一手を残したままラスト1ヶ月を迎えるべきだと考えます。
特にコンテストの1ヵ月前には98~99%ぐらいは仕上がっているはずです。(そうでなければ失敗です)しかしあと1~2%を仕上げる余力が無ければ逆にこの最後の1ヶ月でコンディションを崩す可能性もあるのです。
【早過ぎるに越した事は無いが】
ダイエットを開始して最初の2~3ヵ月で予定よりも早く仕上がりが進んでいく事があると思います。
もちろん予定より早く進むことは良い事です。しかしそれが前半戦でカードを使い果たし最後まで続けられないようなペースで走った3ヵ月ならばあまり良くはありません。
残り1ヶ月で「あと一絞り」という状況で私のところにやってきて「ここまでどういうダイエットをしてきましたか?」と尋ねると「出来る事は全て全力でやりました」という人がたまにいます。
しかし逆にこういう人は最後の一手を打つのが難しいです。
(少しボリュームを減らしなさいと言っても今さら怖くて受け入れられない場合もあります)
「あっ!そう言えば今シーズンはまだ有酸素はしていません」
「昨シーズンに比べてまだ500kcal多く摂っています」
「朝と昼は普通に白米を1合食べています」
「週3日しかトレーニングはしていません」
このような状態で最後の1ヶ月を迎えられるようにカードを使い果たさぬよう注意しましょう。
【まとめ】
今回失敗例として挙げた「早期にカードを使い果たしてしまう」人は、ある意味ダイエットに入る前に事前によく勉強している人だと思います。
コンテストに出るのが2回目か3回目の人で「次こそは失敗したくない」と意気込んでいる人に多いと思います。
私もそうでしたが、はじめてコンテストに出場する人というのは大抵失敗します。そしてその失敗は「絞り切れなかった」という場合が多いでしょう。
絞り切れているかどうかは自分自身が一番分かっている事です。不完全なコンディションでステージに立つことは本当に辛い経験です。「もう二度とあんな思いはしたくない!」という思いから並々ならぬ決意で正月明けから全速力で準備を始めます。
予定よりも早く調整は進みゴールデンウィーク明けにはポージング練習が出来る状態に仕上がるでしょう。しかしそこからなかなか調整が進みません。何か身体に変化を加えようとしてももう既に考えられる策は全て出し尽くし「今までやって来た事をもっと厳しくやる」しか手が残っていません。
カロリーもこれ以上減らせない、トレーニングもこれ以上増やせない。身体はどんどんキツくなる、しかし仕上がらない。もうこれ以上に何すれば良いのか分からない。心に余裕もない。
こんな経験をした人は少なくないはずです。
頑張っていない人がステージで辛い思いをするのは当然だと思いますが、頑張った人が頑張り方を誤って辛い思いをするのは本当に気の毒です。
早期に減量が進む手段は裏返せば筋量を落とす可能性もある諸刃の剣です。
ゆっくりと計画的に「まだまだ俺(私)には肉体的にも精神的にも余力がある」と言える状態で身体との駆け引きを楽しめるようダイエットゲームを進めていきましょう。