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停滞を打破するために

新年明けましておめでとうございます。

SBDコラムを執筆させていただいております、東京大学運動会ボディビル&ウェイトリフティング部の久恒 歩です。

今年もよろしくお願い申し上げます。

2020年に入り、気がつくと3月のジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会まで2ヶ月となりました。これまでの集大成として今大会に臨むために、現在までの記録の推移等を確認しておりますと、やはり競技を始めてから3年の間ずっと同じペースで記録が伸び続けたわけではございません。種目によっても異なりますが、記録が伸びていた時期と停滞していた時期の両方がございます。そして記録が停滞した時期というのは、それまでと同じ練習をただ繰り返すのではなく何らかの変化を取り入れることによって、停滞を打破してまいりました。

そこで今回のコラムでは、私自身が経験した停滞について、その原因として考えられることとその停滞を打破するために取り入れた方法を、種目ごとに紹介させていただきます。


▲「停滞するパワーリフター」 筆者撮影

スクワット

私の言う「記録の停滞」とは試合の公式記録が伸び悩んだことを指しますが、私の場合はこの典型例がスクワットの記録の停滞でした。すなわち、「練習のメインセットの記録は伸びているのに、試合で成功試技となる記録が伸びない」という現象が2018年の5月頃から2019年のJCP(ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会)あたりまで続きました。

さらに2019年6月の世界クラシックパワーリフティング選手権大会から現在に至るまでも試合の記録をほとんど伸ばせておらず、今まさに停滞気味の状態となっています。

スクワットの1つ目の停滞時期については、階級1つ分減量して59kg級に来たことも停滞に影響しているとは思います。そしてこの1回目の停滞は、スクワットの足幅を変えることで記録が伸びるようになりました。しかし、現在までの停滞の最大の原因は練習のセットのしゃがみの深さが不足していたことだと考えています。

私のスクワットのフォームでは、上体をかなり前傾させていました。このフォームの場合、上体が倒れているため自分では深くしゃがんでいる気持ちになっていても、実際は脚の付根の深さが不十分であることがよくあります。そのためメインセットの重量が上がるにつれて、気がつかないうちにどんどんボトムが浅くなっていったと考えられます。その結果試合で通用する深さまでしゃがむ場合の重量は伸びず、「練習のメインセットの記録は伸びているのに、試合で成功試技となる記録が伸びない」という現在の状況に陥っていると考えています。

以上を踏まえてしゃがみの深さを改善するために、現在は以下の2点を意識しています。

(1)動画を撮影して確認する&ちゃんと深さを取った上で重量を上げていく
言うまでもありませんが、特に深さを確認するためです。ただしフォームによっては正面(主審の位置)と斜め45度(副審の位置)で見え方が異なるので注意が必要です。またメインセットでつい重量を上げていきたくなりますが、現在はその欲求をしっかりと抑えて、しっかり深さを取った上でセットを完遂させてから重量を上げるようにしています。

(2)必要以上に前傾を取らない
先述したように、普段から前傾を過度にとることは深さ不足になりやすいと考えます。また59kg級の世界トップ選手らのフォームを見ると、やはりフォームも美しく、見ていて特に不自然な点がありません。それに反して自分のフォームは自身で見返しても前傾の程度に違和感があるので、現在はその改善を意識しています。

現在は以上の点を意識してスクワットの練習を行うことで「練習でのメインセットの重量は伸びているのに、試合の記録が伸びない」という現状を克服しようと考えています。

ベンチプレス

ベンチプレスについては、2018年5月~11月と2019年5月~現在にかけて、停滞を経験しています。

1回目の停滞は、メインセットの後にディッセンディング法を取り入れることで打破できました。つまり練習のボリュームを上げるという手段で克服したと考えています。

しかし現在に至る2回目の停滞では、むしろ逆に練習量を落としてやる方法を、2019年12月のアジアクラシックパワーリフティング選手権大会以降試しています。これまでは8レップのメインセットを4~5セット行い、その後さらにストップベンチプレスやナローベンチプレスなどの補助種目を入れていました。

しかし今から振り返ると、このやり方では、補助種目ではそれぞれどこを強化するという目的が意識できていた反面、メインセットはただやるだけになっていたと感じています。また最近、試合でやるようなブリッジを組むことができるのは、集中力や疲労の観点から、私の場合メインセットでは3セットが限度だと感じるようになりました。それらを踏まえて、現在はベンチプレスの練習量を落とすことで停滞の打破を図っています。

具体的には、メインセットをこれまでの通常のベンチプレスではなくストップベンチプレスで行うように変更しました。以前はメインセットの後にストップベンチプレスやナローベンチプレスを行っていましたが、これによってベンチプレスの日の練習時間やボリュームがかなり減りました。

またメインセットをストップベンチプレスにすることの狙いは、「フォームや降ろしを意識すること」にもあります。私の場合、通常のベンチプレスと比べてストップベンチプレスでは、フォームや降ろしがいい加減になると急に重く感じます。そのためメインセットをストップベンチプレスで行うことで、それらをちゃんと意識した練習ができていると感じています。

ただし、ストップベンチプレスは通常のベンチプレスと比較して扱える重量が下がります。私はこれまで練習でのメインセット重量の割に試合での1発が挙がらないタイプでしたので、これをプラスに捉えています。すなわち、メインセットをストップベンチにすることで、練習で扱う重量は落としているのに、試合では自己ベスト記録を出すことが十分可能であると考えています。

また以前、旅行で2週間ほど一切トレーニングができなかった期間の直後に行った練習で、それまでできなかった重量での8レップ×3セットの自己ベストを更新した経験があります。私のベンチプレスはその原因が何であるかは断定できませんが、以下の原因が推測されます。

(1)普段は休んでいるつもりが実は疲労が抜けておらず、2週間程度休むことで初めて疲労が抜けた
(2)週間の空白によって、フォームの悪い点が気づかないうちに改善した

次のノーギアベンチの標準記録さえ突破できていない私がベンチプレスについて大きなことを言えませんが、一見記録を伸ばすためには良くないとも思われる長期間の休養というのも、案外思ってもいなかった良い結果をもたらすかもしれませんね。

デッドリフト

他の2種目と異なり、デッドリフトはあまり停滞を感じたことはありません。その理由として考えられるのは、スクワットやベンチプレスがしゃがみの深さや止めの長さといった、ついつい自分の中で判断が甘くなるポイントがあるのに対し、デッドリフトは肩の返しが甘くない限り、メインセットの伸びが1発の伸びにつながりやすいと思われるためです。そのため、自分はデッドリフトを「普段の練習で頑張った分だけ伸びる種目」だと感じています。

ただデッドリフトの普段の練習で重量が上がるにつれて悩まされた問題もあります。それはグリップの問題です。私の場合は、重くなるとグリップが外れるというより、手の皮から出血して練習できなくなることに多少悩まされました。それへの対策としては以下の方法を取りました。
 
(1)メインセットを6レップから3レップにした
以前は6レップでメインセットを組んでいましたが、後半に手の中でバーベルが転がり、皮が剥けることがよくありました。そのため思い切って3レップにすることで、練習中に手の皮が剥けることは改善しました。

(2)デッドリフトの練習後に手のケアをする
これはTXPの武田さんに世界クラシックパワーの際に教えていただいたのですが、デッドリフトの練習後にハンドクリームなどで手のひらのケアをするようにしました。そのおかげで、以前よりも手の皮が強くなったと感じています。実際に世界クラシックパワー以降は手の皮のむけに悩まなくなりました。

終わりに

今回のコラムでは、私の記録の停滞の経験から、その原因と打開策を紹介させていただきました。ただし、スクワットとベンチプレスに関して現在停滞の克服の最中であり、現在の方法が正しかったのかは、3月のJCPの結果次第だと考えられます。また停滞を打破する方法は人それぞれであり、結局は自分でいろいろと試してみることが一番重要です。今回紹介させていただきました方法が、選択肢の一つとして皆様のお役に立ちますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
つたない内容ですが、来月もよろしくお願いいたします。

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