今月もご覧頂きましてありがとうございます。
SBDコラムニストの栗原弘教です。
今回はトレーニング初心者〜中級者向けのトレーニングプログラムについて、私なりの考え方やおすすめの方法などをご紹介していこうと思います。
<目次>
・JCP延期について
− 一人記録会の様子
・ピリオダイゼーションという考え方
・初心者〜中級者が行うと良いプログラム
− ボディビルトレーニングの重要性
− 5×5セット法
− 3×5セット法
・線形ピリオダイゼーション
・まとめ
JCP延期について
新型コロナウイルスの影響で3月に予定されていたジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会(以下「JCP」)が7月に延期となりました。
国内外の現在の切迫した状況では妥当な判断だと思いました。
現在でも感染者は増え続けており、余談を許さない状況に変わりありませんが、一人一人の行動意識次第で自分や自分の大切な人達の命を守る事が出来ると思いますので、終息に向かうまで気を緩めずに過ごしていく事が大切だと感じています。
JCPの延期については1年間JCPの為に準備をしてきたため大変残念ですが、新たに試みていたトレーニングプログラムやピーキングの是非などを測る場がなくなってしまったので、大会予定日であった3月8日に一人記録会を行いました。
一人記録会の様子
◆スクワット
スクワットは第1試技予定270kg成功、第2試技予定285kg成功、第3試技予定300kg失敗という結果でした。
第2試技の285kgは予定通り挙げる事が出来ましたが、感覚では300kgは厳しく、290〜292.5kgが成功出来るギリギリのラインだと感じました。ですが、今後の事も考えて300kgがどこまで挙げられるかトライする事に決め、結果スティッキングポイントで潰れました。
この潰れもピーキングサイクルの見直しに大変役に立つものに出来たので大きな収穫でした。
◆ベンチプレス
ベンチプレスは第1試技予定152.5kg成功、第2試技予定162.5kg成功、第3試技予定170kg成功という結果でした。
試技重量の選択も今までとは異なる方法を試しているのですが、ピーキングの精度を上げる事で競り合いや成功確率を挙げられる事が分かりました。(第3試技の170kgは恐らく赤判定ですが、挙げ切れたので今回は成功としています。)
◆デッドリフト
デッドリフトは第1試技予定237.5kg成功、第2試技予定252.5kg成功、第3試技予定265kg失敗で、課題だけが残る結果となりました。
実は今回、大会1ヶ月前にフックグリップに切り替えて練習を行っていたのですが、間に合わせられず最終的には元のグリップに戻して行いました。今回フックグリップで出来た重量は240kgまでだったのですが、フックグリップについての佐名木さんのコラムや国内外の様々な記事などを読み実践できた事は今後にとても活きる経験となりました。
また、今後は現在のスモウスタイルではなく、コンベンショナルスタイルに専念し7月のJCPへ臨むという決断にも至りました。この決断が吉と出るか凶と出るか、自分としてもとても楽しみです。
以上が一人記録会の結果と感想となります。
試合と違い一人という環境でどこまでやれたかという事は今後に活きるデータになりました。
この一人記録会は後述するトレーニングプログラムを考える時にとても大切になるので、是非覚えておいてください。
ピリオダイゼーションという考え方
ピリオダイゼーションとは言い換えると「期分け」となります。
トレーニング期間を目的に合わせて区切り、どのようにトレーニング内容に変化を持たせて成果を出していくか、というとても重要になる考え方です。
ピリオダイゼーションで用いられる用語
・ミクロサイクル = 週単位でのサイクル
・メゾサイクル = ミクロサイクルをいくつか合わせたもの
・マクロサイクル = メゾサイクルをいくつか合わせたもの
トレーニングの原則に「漸進性(ぜんしんせい)の原則」というものがありますが、これは漸進的(=少しづつ進める事)にトレーニング強度や内容を変化させる事で筋肉の発達が促されたり、筋出力が高まっていく、パフォーマンスが向上していくという事を指しています。
故に、トレーニングを始めた時から負荷や回数、セット数などを変えていなければ、ほんの数ヶ月でトレーニング効果は頭打ちになるでしょう。
この漸進性の原則を念頭に置きつつ、どのように目的達成する為のメニューを組んでいくかという事が身体を変える為、使用重量を高める為に重要になりますし、我々トレーナーの腕の見せ所と言えます。
トレーニング計画を考える時は、マクロサイクルごとに「筋肥大期」「筋力強化期」「ピーキング期」と分けてトレーニング計画を作成するのがおすすめ。それぞれの期間でやる事が明確になるので、ブレずに一貫性を保ちながらトレーニングに打ち込めます。
初心者〜中級者が行うと良いプログラム
まず、トレーニングやパワーリフティング初心者であれば、〇〇サイクルや〇〇プログラムなどという様々なプログラムに取り組むのではなく、しっかりとベースとなる身体作りに専念する事を強くおすすめします。
理由は、先ず怪我をしにくい身体=高負荷に耐えられる身体作りをした方が良いというものと、筋出力は原則として筋断面積の大きさ(=太さ)に比例すると言われている事が挙げられます。
ボディビルトレーニングの重要性
上記の理由から、先ずは身体各部位の筋肉量を高める為のトレーニングをしっかりと行う期間を取る事が大切になります。
面積の大きい大筋群を中心に鍛える事と怪我の既往や弱点部位などがあればその辺りも重点的に鍛える様に意識した方が良いかと思います。
ここを疎かにすると、BIG3の技術が高くなってきた時にベースの筋量が少ないとどうしても記録が伸びてこなくなります。そして、高重量により過負荷がかかった関節や筋肉にダメージを受けやすくなります。
ですので、当然BIG3のフォーム、技術を磨く事も大切ですが多くの時間はしっかりと筋肥大を目的とした所謂ボディビルトレーニングに費やす事で、長期的な視点で見ると高い効果を望めると考えられます。
ボディビルトレーニングで大切なこと
・正しいフォームの習得
・反動などのチーティングを使用せず、ストリクトで行う
・使用重量を増やしていく事を考える
・筋肥大に適した回数は6〜12回程度(8回前後を基準にすると良いです)
トレーニングで大切な事は回数をやたらとこなす事ではなく、しっかりと使用重量を増やしていきながら筋肉に負荷を与える事にあります。(*上級者は例外として様々な刺激が必要となる事もあります)
5×5セット法
ご存知の方も多いかも知れませんが初心者〜中級者の多くの方が先ず取り組んだ方が良いセット法をご紹介します。
それは5×5セット法です。これは5回×5セットを漸進的に行っていく方法です。
例)ベンチプレス
今週 70.0kg 5回×5セット → 完遂できた
次週 72.5kg 5回×5セット → 完遂できた
次々週 75.0kg 5回×5セット → 完遂できなかった → 完遂出来るまで据置
上記は一例ですが、5回×5セットが完遂出来る様になったら次週は重量を少しあげて5回×5セットを繰り返し行っていきます。
ベンチプレスであれば+2.5kg、スクワットやデッドリフトであれば+5kg程度が目安になります。
現場で指導している感覚ですが、3ヶ月〜半年間しっかりと取り組めるとこれだけでも使用重量や身体つきも大きく変化します。長くても1年程度続けると重量の伸びはほぼ止まってくる印象です。
重量が伸びなくなってくる長い停滞期が訪れるまでは、ほとんどの方にとってとてもおすすめの方法です。停滞期が長くなった場合に初めて新たなセット法を試していくのが良いでしょう。
3×5セット法
これは3回×5セットという意味です。
前述の5回×5セットに比べて1セット辺りの回数が少ない事でより高重量を扱える事になります。
ですので、5回×5セット法で停滞期になったら3×5セット法に切り替え、3×5セット法で停滞期になったら再度5回×5セット法に切り替えるという方法を取る事で漸進的負荷を与え続ける事が可能になります。
こちらはやや神経系への刺激が強くなるので、重量選択や回復期間をしっかり考えて取り組む事も忘れずに。
線形ピリオダイゼーション
トレーニングにおいて線形ピリオダイゼーションと言われるものがありますが、これが初心者〜中級者の方に意識して見て欲しいものになります。どういったものかというと、試合などに向けて直線的に使用重量と回数、セット数などをコントロールしていく方法です。
試合に向けて
使用重量 → 徐々に重くしていく
回数 → 徐々に減らしていく
セット数 → 徐々に減らしていく
といった具合です。
試合が無い期間は主に筋肥大期間となる事が多いので、少し前述しましたが中程度の重量で回数がやや多くなります。
試合が近くにつれ、神経系に対しての刺激を強めて高出力を発揮出来る状態に持っていくので高重量低回数へと変更していきます。セット数も疲労を徐々に抜いていく事が必要になるので減らしていきます。
このようにして、試合まで計画性を持ち段階的に各要素をコントロールしてベストパフォーマンスを出せる状態へ調整する事が大切になります。細かな重量選択の仕方や回数、セット数の設定は何度か自分なりに試して効果測定を行ったり、トレーナーなどにプログラムを作ってもらう事で覚えて行けると思います。
パワーリフティングの大会などに出場していない方であれば、将来のある日をMAX測定日と定め、そこから逆算してトレーニングプログラムを考えていく方法がおすすめです。
割と多くの方がその日の気分や調子でMAXチャレンジを頻繁に行っているのも耳にしますが、大変勿体ないケースも多いので是非計画性を持って取り組んでみることもおすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
初心者〜中級者の方で重量が伸び止まっていたり、大会へ向けてどのように計画を立てればいいのか、などの一つの指標にして頂ければ嬉しいです。
Master Mindの新サービスとして、4月中にオンラインコーチング(プログラム作成やフォームチェックなど)をスタートさせます。気になる方は是非そちらも覗いてみてください。HPやSNSで告知予定です。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。
文:栗原 弘教
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Master Mindではパワーリフティング競技に興味がある方や、BIG3の使用重量を伸ばして行きたい方、身体のコンディションを向上させたい方のご体験ご入会、施設利用をお待ちしております。ビジターパーソナルトレーニングも可能です。
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ベスト記録(ノーギア)
105kg級
スクワット 280kg
ベンチプレス 170kg
デッドリフト 260kg
トータル 710kg
シングルベンチプレス 170kg
戦績
ジャパンクラシックパワーリフティング大会 出場5回 最高5位
2017 東京都秋季パワーリフティング選手権大会 93kg級 3位
2018 東京都秋季パワーリフティング選手権大会 105kg級 優勝
*スクワット265kg、トータル685kgの東京都記録樹立
2019 ジャパンクラシックパワーリフティング大会 105kg級 5位
2019 東京都春季パワーリフティング選手権大会 105kg級 3位
2019 いきいき茨城ゆめ国体 パワーリフティング 105kg級 4位