皆様こんにちはSBDコラムニストの佐名木宗貴です。
今月もご覧頂き有難う御座います。
このコラムを書いている時点(5/18)では新型コロナウイルスの影響による政府の緊急事態宣言が解除されはじめ、東京や大阪などの大都市圏、いわゆる特定警戒都道府県以外では少しずつですが条件付きでスポーツクラブなどのトレーニング環境が営業を再開しはじめています。
その一方で緊急事態宣言が解除されていない地域や解除されているけどスポーツクラブなどが休業要請業種に入ったままの地域もあり、住んでいる地域によってトレーニングが再開出来ている人もいれば、そうでない人もいる状態です。
勿論私は大阪府在住ですので後者にあたります。
大阪は最初の4月7日から対象地域でしたので、大阪在住でホームトレーニー以外の方は、もうかれこれ40日ほど以前と同じようなトレーニングは出来ていないという事になります。
最初のうちは自宅でプッシュアップをしたり公園で懸垂をしたり、普段と違う刺激があり「暫くはこういうトレーニングに立ち返るのも悪く無いんじゃないか」と前向きな気持ちで取り組めていた方も多いと思いますが、ゴールデンウィークに入ると公園の遊具などにはテープが張られ使用禁止になり、なかなか外でもトレーニングが出来ない状況になっていきました。
勿論私の場合は職場のトレーニング施設や、知人友人が所有する施設など、お願いすればトレーニングする事は出来たので4月の上旬は何度かトレーニングをしに行ったのですが、皆が自粛している最中に自分だけトレーニングするのは決して気持ちの良いものではなく、後ろめたさもあり結局集中して良いトレーニングをする事は出来ませんでした。
何より不要不急の外出をする事で家族に心配をかける事が嫌だったので「みんなと一緒に我慢しよう」と気持ちを切り替えて家族とゆったりと過ごしながら自粛生活を楽しむ方向に思考を変えました。
そんな「おうち時間」を過ごすうちに今まで仕事とトレーニングに明け暮れて、見えていなかった家の事や必要な家族との時間について考えるようになり、今後はもう少し家で過ごす時間を長くするべきであると考えるようになりました。
「これからは家でも出来る事はなるべく家でやるようにしよう」
また今後このような感染症が蔓延し今回と同じようにジムに通う事が出来ない状況になる事も考えて、ある程度自宅でもトレーニングが出来るように設備を整えたいと考えるようになりました。
そこで今回のコラムは、私が自宅の庭に自作のハーフラックを作りホームトレーニングを充実させる過程を紹介したいと思います。
ホームジムづくりへの道①:家族の承諾
まず最初は私が書斎として使っている自宅2階の6畳ほどの部屋をホームジムにしようと交渉しました。
しかしパワーラックやバーベル類を2階に持ち込むことは家を傷めるリスクがあるという事で却下されてしまいます。
「最悪ベンチプレスだけでも良いし床もちゃんと板とゴムを入れて補強するから」
「プレート類は家の外に閉まって使う時だけ持って上がるから」
と粘りましたが変わらず却下。
仕方が無いので1階で置けそうなスペースを探しますが無理でした。
「こうなったら近所の倉庫を借りてその中でやろうか」とも考えましたが、そもそもそれでは家に居ないので本来の目的から外れます。
「では屋根が付いている駐車場は?」とも考えましたが、車を2台停めているためスペースがギリギリで不可能でした。
こうなると家の敷地内で残されているのは庭しかありません。
庭でトレーニングと言えば真っ先に頭に浮かぶのは日本パワーリフティング界が世界に誇る因幡英昭さんでしょう。世界パワー10連覇+7連覇の通算17回優勝の伝説のパワーリフターですがその練習場所が自宅の庭であった事はあまりにも有名です。
ちょうどゴールデンウィークに書斎を整理している時に古い雑誌が出て来て、その中に因幡さんの記事があり「トレーニングが終わる30分前にビールを冷蔵庫に入れてトレーニングが終わってシャワーを浴びてから飲むのが最高だった」と語っておられたのを読み返し「これだ!」と庭にパワーリフティング3種目が出来るトレーニングスペースを作る決心をしました。
※私はアルコール類は一切飲みませんがビールテイストのノンアルコールビールは大好きです。
ホームジムづくりへの道②:平坦な場所を作る
庭にトレーニングスペースを作るには、まず最初に平らな足場を作らなければなりません。
しかし庭は子供たちも遊ぶし妻も植物を植えますし、洗濯物も干すのであまり広いスペースをとるわけにはいきません、最低限の広さを計算し130㎝四方で家族の生活の邪魔になりにくく、ご近所から比較的見えにくい場所を選びました。
まず元々の地面が斜めなので130㎝×130㎝を一度シャベルで掘り返してある程度平坦になるように調整します。
そこをブロックで囲い砕石を敷き詰め、ワイヤーメッシュを引いてその上からコンクリートを流し平らに整えます。
最初は簡単に考えていたのですがコンクリートを平らにする作業は本当に難しく、改めて左官職人の技術の凄さを思い知りました。
素人では全く真似出来ませんでした。
コンクリートをある程度平らに仕上げたらその上に24㎜の合板を引いてその上にパネルカーペットを引いて足場は完成です。
最初はクッションマットを間に挟もうかと思ったのですがコンクリの上に直接板を敷いても意外と安定したので一旦このままいって様子を見ます。
足場づくりにかかった金額は、ブロック・セメント・砂・砂利・砕石・ワイヤーメッシュ・合板・カーペットなど合わせて15,000円程度でした。
ホームジムづくりへの道③:単管パイプでつくるハーフラック
足場が出来たらその上に乗せるラックを作ります。
本来ならば普通にパワーラックを買えば良いのでしょうが、今は新型コロナウイルスの影響でホームトレーニー化する人も多いようでパワーラックも入荷待ちとなっていました。
また普通にパワーラックを買っても10万円以上はするのですが、「10万円以上かけて買ったものを外で使うのか…」と考え、最初から新品ではなくオークションなどで中古を探していました。
しかし中古であっても送料はかかるし自分で組み立てなければなりません。
また市販のホームジム用のパワーラックはラックの高さの調節が細かい訳じゃないので、もしも買って自分の高さに全然合わなかったらショックです。
「だったら最初から自分で作るか」と考え近所のホームセンターで単管パイプを買ってきて自作する事にしました。
単管パイプを使ったパワーラックやベンチプレス作りはYouTubeでいくつかの動画があがっていたので参考にしました。
また私が愛知県で単身赴任している時にお世話になっていた岡崎市の「ちからこぶ」には単管パイプで作ったラックがありましたので「あれなら作れる」と考えました。
本来ならば2mの単管を長方形に組み立てればパワーラックになるし懸垂も出来るのですが今回は雨よけを作るまで手が回らないので自力で毎回ブルーシートをかぶせないといけません。
そのために高さを出来るだけ低く作ろうと考え150㎝の高さにしました。
私がローバーでスクワットをする際のラック高が133~135㎝ぐらいなのでギリギリいける高さです。
バーベルは折角なので公式規格のオリンピックバーベルを買おうと思っていたのでラックの横幅は110~115㎝程度になるように考え奥行きは1mで十分だと考えました。
ただ、これだとデッドリフトが出来ないので途中で改良して奥行きも125㎝にして、後ろでデッドリフトも出来るように修正しました。
ただしデッドリフトをする横幅が無いので、セーフティラックの高さをちょうど床からバーベルまでの高さと同じ高さ約20㎝に設定したので
この部分から引き揚げれば床からデッドリフトを行っているのとほぼ同じ距離になります。
またプレートを奥まで入れるとブロックに当たってしまうのでデッドリフトをするスペースだけ余った木材を利用し24mm高くしました。
ラックはまだまだ工夫次第で修正可能なのでこちらも使いながら改善していければと思っています。
ラックづくりにかかった金額は単管パイプ150cm・100㎝、カット代、直交クランプ、自在クランプ、ベース、キャップなどなど合わせて17,000円程度でした。
もっと細かい長さでカットすれば無駄なく作れますがカット代をケチった結果こうなりました。
ホームジムづくりへの道④:バーベルとプレートを購入
ラックが完成したら残るはバーベルとプレートです。
元々自宅には古い15㎏のバーベルが1本、7.5㎏のプレートが2枚、5㎏のプレートが2枚、2.5㎏のプレートが6枚、1.25㎏のプレートが2枚、2.5㎏のカラーが2個ありました。
今回、普段から付き合いのある業者さんから中古で少し古い型ですが公式規格のBULLのオリンピックバーベルを安価で譲っていただける事になりましたので、ラックも2m20㎝のオリンピックバーベルに合わせた幅で作りました。
プレートも中古で探してもらって丁度ハンマーストレングスの中古が見つかったので200㎏分買いました。内訳は25㎏を6枚、15㎏を2枚、10㎏を2枚です。
20㎏プレートも欲しかったのですが残念ながら良いものが見つかりませんでした。
というわけでバーベルも含めた総合計は267.5㎏という事になるので、庭でやるには十分かと思いますが慣れてきたら20㎏プレートを2枚買い足そうと思っています。
バーベルとプレートの買い足しにかかった金額は送料も含めて72,000円程度でした。
これは私の場合、普段の仕事の関係でマシン業者と繋がりがあるので、色々リサーチして良いものを安く買えただけなのであまり参考にはならないと思います。
良いものが見つからなければONIのバーベルとボディメーカーのプレートでいこうと思っていましたのでその場合は倍以上の値段になっていたと思いますが、これも外で使う事を考えると新品を買うのはちょっともったいない気がして中古に拘りました。
ホームジムづくりへの道⑤:フラットベンチ作り
さて、スクワットとデッドリフトはこれで出来るようになりましたが、フラットベンチがないとベンチプレスが出来ません。
「さすがにベンチは買わんと無理やろ」と思っていたのでこちらもオークションサイトで色々調べたりしたのですがどれも入荷が6月以降になっていたりしてすぐに手に入らないようでした。
「とりあえずシートだけでも自分で作るか」と考え足場を作る時に余った24mmの合板を120㎝×32㎝にカットしてホームセンターで座布団やバイクのシートを修理する素材として売っていたウレタンチップのクッション材50㎝×50㎝×3cmを2枚購入しこれも32㎝幅に切って繋げて両面テープで板に張り付けます。
出来上がったものを同じくホームセンターで切り売りしていたレザーシートで包んでタッカーで止めます。
こうしてシートは意外と簡単に出来上がりました。
120㎝×32㎝×5.5㎝の良い感じのベンチです。
がっ・・・
しかし・・・
結局この後、このシートを固定する台を作るのに苦労して、試作品を何度か作ったのですがどれもガタついたり高さが合わなかったりして素人では良いものが出来ませんでした。
中途半端なものでベンチをして、また肩を痛めてしまったら本末転倒ですので、ここは潔く諦めてまたオークションサイトで探していたところ奇跡的に10,000円で出品されているセノーのフラットベンチを見つけました。しかも出品者が大阪府内で直接引き取り可だったので、落札して取りに行きました。余計な送料が発生しないのはありがたかったです。
120㎝×30㎝×40㎝ですので高さが少し公式より低いですが、これは木でもゴムでも噛ませばオッケーなので中途半端なものを作るより良かったと思います。
せっかく作ったシートはそのうちシートを交換しなければならなくなった時に使おうと思います。
【使い心地と感想】
では、完成した庭GYMでのトレーニングです。
スクワット225㎏×1(ラックの高さが高すぎて焦りました)
202.5×5(ラックの高さを修正しました)
ベンチプレス140㎏×1(当たり前ですが公式に比べラックの爪が大きいので重くなるとセルフで外すのが難しいです)
デッドリフト227.5㎏×2(狭いので逆に挙上するコースや前後のバランスをミス出来ません)
心配していた耐久重量ですが、今回使用した重量ぐらいではビクともしないので安心しました。ただネジが緩んでくると大事故に繋がる可能性もあるので必ず毎回レンチで確認しようと思います。
あと金属音ですが、さすがに勢いよくラックに戻したりセーフティに当てると「キーン」と金属バットのような音がしますのでゴムを巻いたりしてご近所の迷惑にならないよう工夫が必要です。
今回はラックを組み立てた後にバーベルが届いたので実際に使ってみると最初はセーフティの幅が広すぎてプレートに当たりそうだったり、修正すると今度はベンチプレスを81cmギリギリのワイドで握ると胸まで下ろした時に拳の外側がセーフティに触れてしまったりと、調整に苦労しました。
最終的には全体の角度を少し変える事で解決したのですが、こちらもさらに良く出来るか使いながら検討していきます。
あとは何と言っても屋根がないのは不便です。トレーニングが出来ないのが嫌なのではなくてせっかく作ったラックや買ったバーベルが錆びたり汚れたりするのが嫌なので天気予報ばかり気にしてブルーシートを毎回かけています。
「庭にラックを作るぞ!」と夢中になって作っている最中は気が付かなかったのですが、もうすぐ梅雨なんです。
どうにかして屋根を作るか、ラグビーチームが合宿地に作るような仮設ジムのように大きなテントで覆ってしまうか、梅雨入りする前に対応します。
最後に
制作にかかった日数ですが基礎工事と足場づくりに2日間、ラックづくりに2~3時間、ベンチ作りに1~2時間といった感じなので勢いだけで一気に作ってしまった感じです。
完成してから何度か使用しましたが200㎏オーバーでもビクともしないので気に入っています。何よりラックの高さもプレート置き場も全てが自分専用で好き放題出来るのが最高です。
6月になれば徐々に大学の課外活動も再開されると思うので、トレーニング環境も元に戻るわけですが、今後は自宅でのトレーニングと大学施設でのトレーニング、そして先月のコラムでも書いたように1~2ヶ月に1回の出稽古を上手く組み合わせて仕事と家庭生活とパワーリフティングのバランスを上手にとって自分なりの新しい生活様式を作り上げていこうと思います。
最後になりますが、今回紹介した単管パイプを使用したラックづくりは、あくまで私の体験と実際の使用感について述べており、このような自作ラックの強度や耐久性について何ら保証するものではありません。
もし真似されるのであれば怪我のリスクがある事を十分ご理解の上、自己責任で行ってください。
文:佐名木宗貴