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コンテストで目立つ胸 (年季の入った胸を作るために)

みなさんいつもご覧いただき有り難うございます。
SBDコラムニストの佐名木宗貴です。
徐々に気温も高くなり全国各地でボディビル・フィジークなどのコンテストが開催される季節となって参りました。
実は先日、4月末のコラムでもお話しさせていただきました、関西学生ボディビル連盟に所属する学生と一緒に、第9回大阪市クラシックボディビルオープン大会を見学させていただきました。

学連の大会に出よう! (全日本学生ボディビル・パワーリフティング連盟について)


コラムでも書きましたが、コロナ禍の影響でここ数年、対面によるミーティングが減り各大学間の連携や学年間の引き継ぎが以前に比べると十分に出来なかったことによって、ボディビル・フィジーク大会の運営について関西学連全体で全体像を把握している学生が減ってしまっていることを解消するべく企画した試みで、大阪ボディビル・フィットネス連盟様のご厚意により大会前の準備や選手受付、誘導やバックステージでの声かけなど、実際に見てみないと分からない裏方の仕事を学生達と一緒に見ることが出来、今後学生大会を開催するにあたり必要な情報を学生と共有することが出来ました。
受け入れて下さった大阪ボディビル・フィジーク連盟様には感謝申し上げると共に、今後も連携して大阪の大会を盛り上げ、またジュニア部門の強化と環境整備に努めて参りたいと思います。

【並んだときに目立つ胸】

それでは今月の話に入りたいと思います。
冒頭で触れた第9回大阪市クラシックボディビルオープン大会を久々に観戦して改めて感じた事がありました。それは、こういった地方大会で確実に予選を通過するためには、大胸筋の厚みというのも非常に重要なポイントであるということでした。
もちろんボディビルでもフィジークでもバランス良く全身を発達させることが重要なので大胸筋だけを発達させれば良いということではありません。
またボディビル競技では胸の発達をアピールするポーズとしてはサイドチェストがもっとも代表的なポーズと言えます。しかし今回私が注目したのは、そういったポージングでの比較に入る前の段階、つまりただ並んでいるだけの時(リラックスポーズ)に目立つためには大胸筋の発達が重要だというところです。
コンテストでは最初にゼッケン番号順に名前と所属ジムを紹介されて、1つのグループ全員がステージに横一列(人数が多い場合は2列)に並びます。
その際に輪郭が綺麗で尚且つ重量感のある胸をフロントリラックスポーズでアピールできる選手は、それだけで「おっ!なんかあいつデカいな」という印象を与え、それだけでも「ピックアップしてしっかり見てみようかな」という気持ちにもなるのではないでしょうか。
逆にどれだけ美しいアウトラインを持っていてもフロントポーズで胸に重厚感が無い選手は「美しいのだけど薄っぺらい」という印象を持たれてしまいがちです。
そんなわけで、特に初出場の人などがコンテストで「見逃されない」ためには
「ただ立っているだけでも目立つ胸」が必要なのです。

【年季の入った胸】

コンテストに出場するレベルの選手でも胸の厚みや大きさには意外と差が出るものでして、例えばオフシーズンにジムで目立つ、パンパンに胸の張った若くて筋力の強い選手が減量してみると意外と胸が薄かった。なんてことは良くあることなのですが、それと同時に
「なんやあのオッサン毎日ベンチばっかりしとるがな。しかも毎日同じ重さやん」
と、趣味はベンチプレスですか?
と言わんばかりのベンチ大好きおじさんがコンテストシーズンになると他の部位はともかく胸だけは異常にデカく、ボールペンを挟むと完全に消えてしまう、渓谷のような深い厚みをしているなんて事も良くある話です。
この違いは何なのでしょうか?
もちろんダイエットの進め方やトレーニング方法にも問題はあるのかも知れません。
しかし簡単に言ってしまえば一番の差は「年季」です。
トレーニング暦が長く、特にベンチプレスが大好きで他の部位とは違ってベンチプレスはトレーニングの中にカウントすらしていないような、ベンチ好きなおじさんビルダーの大胸筋は一言で言うと「年季が入っている」のです
おそらくコンテスト会場に足を運んだり、ボディビルダーが沢山いるジムに行かない人には想像しにくい話かも知れませんが、この年季の入った胸は若くて身体全体に張りのある選手にはなかなか醸し出せない「味」のようなもので、普段好きなものを食べて身体がパンパンに張っているような好条件の時にはさほど目立つものではありませんが、数ヶ月間の節制生活に耐え、張るか張らないかギリギリの「枯れた」状態であるコンテストの当日、ステージ上でライトを浴びると突如輝き出すという世にも恐ろしい力を持った胸なのです。
私も社会人の大会に出たての頃は普段ジムでトレーニングをしているときには負ける気のしなかったベテランビルダーとステージで並ぶと
「えぇ!そんなに胸デカかったでしたっけ?」
と驚かされ急に自分の胸が安っぽく思えて自信を失ってしまうという苦い経験がありました。

【コンテストで目立つ胸の作り方】

ではそんな年季の入った胸を作るにはどうすれば良いのでしょうか?
それは当然胸を鍛えまくるしかないのですが、私が考える一番大切なことは
「肩を痛めずにどれだけ重いものを沢山の回数、頻繁にあげられるか」
ということです。
まず、第一に肩を痛めてしまったら大胸筋を鍛える種目の殆どが出来なくなる、もしくは通常の可動域では行うことが出来なくなります。
そのため「肩を痛めない」フォームで胸を鍛える事が出来るというのが大前提です。
例えばバーベルベンチプレスよりもダンベルベンチプレスの方が肩へのストレスが少ない体型や柔軟性を持つ人であれば、無理にバーベルベンチに拘るのではなくてダンベルベンチを主体に胸を刺激するべきだと私は思います。
またマシンやケーブル種目の方が、効きが良いのであればそちらでも構いません。大切なのは肩を痛めずに胸を強く刺激できるかどうかです。ウエイトトレーニングでは手段にこだわり過ぎて目的を果たせず終わる人も多いと思いますが、胸をデカくするという目的を果たすためには
「バーベルベンチの方が良さそう」
「マシンよりフリーウエイトの方が良さそう」
という手段のところでこだわり過ぎて足踏みするよりも
「安全に効く種目でやりまくる」
方が目的を果たすためには有効である場合もあります。
次に、重さですがやはり高重量が持てる人は大きな胸をしていることが多いと思います。
そこで肩を痛めずに行うことの出来る最大の重量でトレーニングをする必要があります。
そして回数と頻度ですが、先にも記した通り、大きな胸をしている人は単純に胸のトレーニングが大好きな人に多いです。ベンチプレッサーなどインターバルは長いかも知れませんが何時間もベンチばっかりしていますし、レベルの高いベンチプレッサーの大胸筋は尻かと思うほどのボリュームをしています。
市民体育館などの公共施設で「あんた専用ちゃうで」と陰口を叩かれながらも鉄の意志で何時間もベンチを占領する主のような人をたまに見かけますが、例外なく胸だけ凄く立派です。

話を元に戻しますが
「肩を痛めないフォームや種目で」
「出来る限り重く」
「出来る限り高回数で」
「出来る限り頻繁に」
これが可能となる種目をチョイスし、あまりバランス良く鍛えようとするのではなく「得意な種目を沢山・頻繁にやる」が基本だと私は考えます。

例えば
バーベルベンチプレスは苦手だけどダンベルベンチは胸に効く
バーベルベンチは苦手だけどスミスマシンで鬼ブリッヂすれば高重量が持てる

という人がいたとしたら
ダンベルベンチプレスとスミスマシンでの可動域は少なめのプレス、これにマシンでのペックフライかケーブルクロスを追加すればOKです。
その代わりこれらの種目を沢山沢山、頻繁に行います。

また3~4週間、毎日胸をトレーニングするという「キャンペーン」を行うことも有効です。

例えばプッシュ・プル・レッグの3分割でトレーニングをしている人だとします。
月曜日・木曜日:胸・肩・上腕三頭
バーベルベンチプレス152.5kg5回3セット
インクラインダンベルベンチプレス40kg10回3セット
ディップス60kg10回3セット
ダンベルショルダープレス36kg10回3セット
ダンベルサイドレイズ22kg12回3セット
リバースペックフライ100kg15回3セット
Ezバーライイングトライセップスエクステンション50kg12回3セット
ケーブルプッシュダウン90kg15回3セット
アブロール20回3セット

火曜日・金曜日:背中・上腕二頭
バーベルベンチプレス135kg8回3セット
バーベルベントオーバーローイング100kg10回3セット
チンアップ40kg10回3セット
ダンベルワンハンドローイング60kg10回3セット
バーベルシュラグ220kg20回3セット
バーベルカール50kg15回3セット
インクラインダンベルカール20kg15回3セット
ハンギングクランチ20回3セット

水曜日・土曜日:脚
バーベルベンチプレス120kg12回3セット
バーベルスクワット180kg10回3セット
バーベルルーマニアンデッドリフト140kg10回3セット
バーベルリバースランジ80kg10回3セット
レッグエクステンション70kg20回3セット
レッグカール90kg20回3セット
スタンディングカーフレイズ150kg20回3セット
シーテッドカーフレイズ80kg20回3セット

恐らくこのような感じになるでしょう。
この場合は分割やサイクルとは関係なく、他の部位のトレーニングをやる日もまず最初に胸をトレーニングしてから他の部位のトレーニングをするようにします。
また胸の日意外は高回数で限界の1~2回手前ぐらいで終えます。
そして、これとは逆に他の部位のトレーニングの後に胸をトレーニングするというやり方でも良いのですが、その場合は既にエネルギーが枯渇してしまっているのでそこまで重いものは持てません。そのためもっと軽い重量で15~20回ぐらいを狙うのが良いと思いますが、私がやるとしたら例えば「3セットで合計5000kgチャレンジ!」みたいな感じで自分で遊びながら
1セット目:100kg×20回=2000kg
2セット目:100kg×15回=1500kg
3セット目:75kg×20回=1500kg
というような感じで「今日は5分で終わった!」というようにゲーム感覚でやると思います。

このような3~4週間のキャンペーンが終わったら1~2週間は通常の分割に戻して胸の疲労をいったんリセットして、また第2弾のキャンペーンを行うかどうかを他の部位とも相談しながら考えます。

【まとめ】

胸・肩・二頭・腹直筋
は身体作りを目的にウエイトトレーニングを行うならば誰もが鍛え、好きになる部位ですが、その中でも胸は差がつきやすい部位だと思います。
ある人は教科書的に選んだ種目に固執してしまい、なかなか胸に効かせることが出来ずに逆に肩を痛めてしまう。
またある人は、有名ビルダーのトレーニングを真似して、効いてるのかどうかもわからないような難しい種目を沢山行い、時間はかかったものの効果は少ない。
またある人は、一部位は週に1回しかしてはいけないと勘違いして刺激の頻度が足りていません。

しかし大きな胸や年季の入ったステージ映えする胸を持つ人の共通点は、みんな胸のトレーニングが大好きだということです。そして頻繁に胸ばかりやっている人に胸の小さな人は殆どいないということです。更に言うと胸の良い選手ほどトレーニング内容はシンプルです。
せっかく苦労して仕上げてステージに立ったのに審査員の目に留まらず、予選を通過できなかった。そうならないためにも各々が、胸に効く、肩に優しい、得意な種目を見つけ、出来る限り高重量で、出来る限り沢山、出来る限り頻繁に、そして楽しく。
胸を大きくして挑みましょう。

文:佐名木宗貴


ベスト記録(ノーギア)
スクワット 245kg
ベンチプレス 160kg
デッドリフト 260kg

戦績
パワーリフティング
・全日本教職員パワーリフティング選手権 90kg級 優勝
・2009~2012年 近畿パワーリフティング選手権 4連覇 75・82.5・83・90kg級4階級制覇
・ジャパンクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 準優勝
・アジアクラッシックパワーリフティング選手権大会 83kg級 優勝
・東海パワーリフティング選手権大会 93kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1-83kg級 5位
・ジャパンクラシックマスターズパワーリフティング選手権大会83kg級 優勝
・香港国際クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 83kg級 優勝
・世界クラシックパワーリフティング選手権大会マスターズ1 93kg級 6位

ボディビルディング
2000~2001年 関東学生ボディビル選手権 2連覇
2000年    全日本学生ボディビル選手権 3位
2011年    日本体重別ボディビル選手権70kg級 3位
2011年    関西体重別ボディビル選手権70kg級 優勝

指導歴
・ZIP スポーツクラブ チーフトレーナー
・正智深谷高校ラグビー部 S&Cコーチ
・埼玉工業大学ラグビー部 S&Cコーチ
・正智深谷高校女子バレーボール部 S&Cコーチ
・正智深谷高校男子バレーボール部 S&Cコーチ
・トヨタ自動車ラグビー部 S&Cコーチ
・関西大学体育会 S&Cコーディネーター

資格
・日本トレーニング指導者協会認定 特別上級トレーニング指導者
・NSCA認定 CSCS
・日本パワーリフティング協会公認2級審判員

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