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地方パワーリフティング大会の運営~静岡県パワーリフティング選手権大会レポート~

SBDコラムをご覧の皆様、福島未里です。
2024年4月14日に静岡県富士市におきまして静岡県パワーリフティング選手権大会が開催されました。

静岡県は浜松市と富士市で交互に県大会を開催しています。
富士市で開催される年はFTGYMから機材、補助員・スタッフを手配しています。
静岡県の場合、浜松市でも富士市でも一つのジムを主体として大会を運営しています。
各都道府県によってやり方が異なるとは思いますが、今回はいち地方大会の流れと大会の様子をレポートとしてお届けします。

1.大会開催までの流れ
東京在住時代、東京都大会で盤替えの補助員を経験させていただきました。
東京都の大会は皆様ご存じのように全国規模の大会並みに出場者も多く、素晴らしい運営で行われております。
運営側に回ったことがなかったこともあり、私が初めてFTGYMが主体となる運営を行う静岡大会をお手伝いした際には、こんなにアナログで進めていくの!?と驚きました。

実際に富士市で行う時の流れです。
① 大会要項の準備、申し込み受付
・大会要項の作成、申請
・郵送にて受付
・締め切り後、手作業でまとめ
・エントリー表を作成
・人数に合わせてメダルや盾を発注

事務を担当する私の夫が仕事の合間を見つけては要項を作成し、JPAに申請し、HPに記載してもらいます。
(意外と知らない方も多いのですが「JPA概要・加盟団体情報」→「加盟団体競技会公認状況一覧」で全国の大会情報を確認できます。)

HPに掲載されている要綱から申込書を印刷し、記入後、事務局であるFTGYMまで送られてきます。
エントリーした人数に合わせて会長がメダルや盾を発注します。
なんとなくこのような事務作業を行う専門の人がいるのかなと思っていましたが、普段は忙しく仕事をしている人が大会開催のために準備している場合がほとんどなんだと考えを改めました。

② ラック・機材の運搬・搬入、会場設営
ジムに置いてある県の備品ラックを分解し、前日から車に積み込みます。
車は福島家の自家用車です。
その日トレーニングされていたジムメンバーの方にも少しご協力いただきました。

当日、会場である体育館の開館と同時に搬入・設置を開始します。
補助員としてご協力いただいていたメンバーの方々も朝から来ていただいて、会場設営スタートです。
私も息子を連れて運営側として参加しました。
バウンサーに乗せて体育館の端で座っていてもらいました。
準備をしている間、静かに待っていてくれ、選手や審判、観客として来ていた方々があやしてくださいました。

③ 試合進行
プロジェクターで重量や選手の状況が表示されるGOODLIFTシステムは、富士市で行う大会では使用しません。
正直、そこまでのマンパワーや機材がありません。
富士市では手計算でほぼ全てを行います。
それを担っているのがFTGYM会長の奥さんであり、筋トレなんてまったくやらない私の義理の母です。
正直、母がいないと大会運営はスムーズにできないのでは?と思っているくらいです。

母が行う仕事は、
・最初に申請用紙を重量順に並べ、ロット番号をホワイトボードに書き出す。
 それが試合順になるので選手はそれを見て自分の順番を確認。
・試合が始まったら、失敗・成功を確認しながら選手に次の申請重量を聞く。
・第二試技以降もホワイトボードに申請重量を順番通りに書いていく。
 申請重量によって試合順は変わっていくので、どんどん試合は進むが、前後の入れ替えをしながらホワイトボードを書き換える。
・デッドリフトの最終試技になると、終わった人から手計算でトータル重量を記入していく。

昔、銀行で働いていたので計算が得意な母。
私は放送補助で入っていましたが、同じ仕事をやらされたら絶対にもたついて試合進行を妨げる自信があります。

また、スムーズな試合進行に欠かせないのが補助員です。
プレートの付け替えのスピード感はもちろん、GOODLIFTシステムがない状態で(あっても必要だと思いますが)この重量ならどのプレートをつけるのか、素早く指示を出す人がいないと非常にもたつきます。

熟練したパワーリフターであることはもちろんですが、頭の中で素早く計算できるスキルを持つことが必要です。
例えば次の重量が150kgとなった時に、一瞬で赤盤2枚、10kg盤1枚、2.5kg盤1枚、2.5kgカラーと判断し、次につけるプレートを指示します。
今回の静岡県大会では私の夫であり、静岡県協会事務局の福島勇輝が指示出しを担当していました。
彼は経験豊富なパワーリフターで、プレートの交換が非常にスムーズで周りが時々ついていけなくなるほどです。

④ 撤去・表彰
最終セッションが始まり、アップする選手がいなくなり次第、試合進行と並行してアップ場は撤去します。
デッドリフトの全試技終了後、表彰の準備に移ります。
あらかじめ自宅で表彰状の名前は手書きしておきます。
試合進行と並行してトータル重量を計算し、順位をつけて全試技が終わった階級から書いていきます。

すべてが終了後、選手や観客の方にもお手伝いいただき、速やかに会場撤去作業です。
いつも皆様に進んでご協力していただき、感謝しています。
作業中にIPFポイントを計算し、最優秀賞も決定。
表彰状の準備ができ次第、表彰式を行い、最後の片付け・確認をして終了です。

⑤ 使用した機材の運搬・片付け
ジムに使用した機材を片付けます。
バケツリレーのように車から出してどんどん運び込んで、元の位置に戻します。
最後まで残ってお手伝いしてくれた15名で、テイクアウトした牛丼を食べて1日が終了します。

2.大会レポート
今回の令和6年度静岡県パワーリフティング選手権大会の出場者は女子11名、男子26名、合計37名でした。
昨年度より出場者は減ったものの、ここ数年で見ると出場者は少しずつ増えています。
令和5年度:41名(女子11名、男子30名)
令和4年度:35名(女子8名、男子27名)
令和3年度:27名(女子6名、男子21名)

JPAによると、2024年2月29日時点で会員数が過去最高を記録したそうです。
選手数はその数4,227人。
静岡県の選手数は87人です。

全国的な選手数の増加に伴い、レベルもどんどん上がっています。
今回の静岡県大会でも、4名によって9個の県記録が更新されました。
特に女子57kg級はレベルが高く、今回の記録で言うと2名が昨年度のジャパンクラシックパワーの記録で2位と3位に食い込みます。
その2人ともFTGYM所属です。

FTGYMには私を入れて4名の57kg級の選手が所属しており、先日の東海大会では私以外の3名が出場し375〜362.5kgと全員がハイレベルな記録を残しました。
今回私は試合に出場しませんでしたが、この選手たちと争えるように復帰の準備していきたいと思っています。

また、サブジュニアカテゴリーである中学生の出場もありました。
中学生での出場は、お父さんまたはお母さんがパワーリフターである場合がほとんどです。
一家で子どもを応援して支え合う姿を見て、生涯スポーツとしてのパワーリフティングの素晴らしさを感じました。

こうしてサブジュニアカテゴリーからマスターズカテゴリーまで、性別問わず同じ競技を同じ会場で行える競技は多くはありません。
親子三代、同じ大会で活躍する選手たちも現れるかもしれません。

3.最後に
今回は私が所属する静岡県で行われた静岡県パワーリフティング選手権大会に関する運営側のレポートと、大会について少し触れました。
地方大会は全国大会で上位入賞を目指すレベルの選手から、楽しく自分の記録を更新するために頑張る趣味レベルの選手まで、気軽に参加できるアットホームな雰囲気があるべきだと思っています。

地方大会でしっかりと窓口を広げることがださらなる競技人口数の増加を促し、パワーリフティングの発展のためには必要です。
東京都が行う初心者限定大会やJPA広報の葛西河南さんが主催するストロングガールズ女子限定パワーリフティング大会のように、初心者でも参加したいと思ってもらえるようにしていきたいです。

しかしながら、多くの方に参加していただきたいと思いつつも、静岡県協会のマンパワーでは正直、これ以上人数が増えると大会運営が困難になってきます。
静岡県の登録者数の約8倍、662名の登録者を誇る東京都協会の運営と比較することは現実的ではないと思いますが、より地方でのパワーリフティングを盛り上げるためにも他の都道府県協会がどのように大会運営をしているのか、聞く機会があったらぜひ聞いてみたいです。

参考:日本パワーリフティング協会.“祝・会員数が過去最高を記録”2024-3-21.

◆コラム執筆者

福島未里(ふくしまみさと)
静岡県富士市FTGYM所属
FTGYM(https://ft-gym.com/)

ベスト記録
パワーリフティング(ノーギア)
SQ145kg
BP113kg(一般女子57kg級日本記録)
DL165kg
TL423kg(一般女子57kg級日本記録)

2013年度
アジアベンチプレス選手権大会(フルギア) ジュニア57㎏級1位
2014年度
世界ベンチプレス選手権大会ジュニア57㎏級(フルギア)2位
2017年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57㎏級1位
2018年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級1位
2019年度
世界ベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級 5位
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会 一般女子57kg級1位
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子63kg級1位
2021年度
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会 一般女子57kg級2位
2022年度
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会一般女子57kg級1位

保有資格
日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー
NSCA公認CSCS
健康運動指導士
柔道整復師

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