今回はトップリフターインタビューシリーズ第三弾としまして、ノーギアパワーリフティング日本代表チームの大黒柱、武田裕介選手にインタビューをさせて頂きました!
武田選手とは2007年3月のジャパンオープンパワーリフティング選手権大会(現在のジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会)で初めてお会いして以来もう10年近いお付き合いになります。
この2007年の大会がお互いノーギア全日本大会初出場でした、それから今年まで同大会に10大会連続で出場してるのは一般クラスでは恐らく私と武田選手だけではないでしょうか。
現在世界的に大きな盛り上がりを見せるノーギアパワーリフティングですが、その土台には武田選手のような黎明期から中心となってジャンルを支えてきた選手の存在があります。
武田選手こそノーギアパワーリフティングの草分けの一人で、私にとっても最も尊敬する選手の一人です。
今回のインタビューでは重量級の絶対王者として日本のノーギアパワーリフティングを牽引し、世界の舞台でメダル争いをする武田選手の強さの秘密に迫っていければと考えています!
【武田選手紹介】
武田裕介選手
パーソナルベスト(男子105kg級)
スクワット 302.5kg(日本記録)
ベンチプレス 212.5㎏(アジア記録、日本記録)
デッドリフト 300kg
トータル 802.5kg(日本記録)
戦績
世界クラシックパワーリフティング選手権大会
2012年10位
2013年4位
2015年6位(ベンチプレス部門1位)
2016年9位(ベンチプレス部門1位)
アジアオセアニアクラシックパワーリフティング選手権大会
2014年1位
ジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会
2008年〜2016年、9連覇
ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会
2014年〜2016年、3連覇
全日本学生パワーリフティング選手権大会 3連覇
【TXPへ!!】
今回は武田選手の所属するパワーリフティングジム、TXP(チーム・エクストリーム・パワー)にお邪魔しました。
4年前にオープンし、早くも日本のパワーリフティングの中心地となりつつあるTXP、武田選手はここでヘッドストレングスコーチを勤めています。
武田選手は営業時間内は指導に専念しており、この日も所属選手達に熱心に指導をしていました。
私もビジターとして練習に参加させて頂きましたが、武田選手のアドバイスは現役で世界のトップで活躍する選手だけに余分な甘さが無く、内容も的確で非常に勉強になります。
TXPの設備は下段のインタビューでも詳しく紹介されていますが、日本国内のパワーリフティングジムでも最も充実していると言えるのではないでしょうか。
ベンチプレススペース、ラック5台
人気種目のベンチプレスは大きなジムでもベンチ台の順番待ちが当たり前ですが、TXPのベンチプレススペースにはエレイコ・パワーライン・ERといった各メーカーの競技用ラックが計5台設置されており最高の器具で時間を気にせず思う存分練習する事が可能です、ベンチプレッサーの方にも最高の環境と言えると思います。
スクワットスペース、ラック5台
パワーラックには、近頃パワーリフターだけでなく他競技のトレーニーの間でも一般的になっており、野球のダルビッシュ選手も取り入れている、チェーントレーニング用のチェーンが多数常備されています。
デッドリフトスペース、プラットフォーム5面
シャフトのメーカーの違いで大きくフィーリングの変わるデッドリフト、TXPでは世界標準のエレイコから国内で広く使われているブルやイヴァンコ、そして国内では珍しいフィンランドのレオコ製バーベルまで、各競技用シャフトが揃っておりターゲットとする大会と同じシャフトで練習を行う事が出来ます。
パワーリフティング専門ジムとしてはかなり広いスペースに、上記写真のように各メーカーの競技用ラックやバーベルが所狭しと並んでおり、プラットフォームのカーペットも国際大会を想定したもので、パワーリフターにとってはこれ以上ない楽園のような場所でした。
【武田選手インタビュー】
神野:今回はインタビューにご協力ありがとうございます、世界クラシックパワーリフティング選手権お疲れ様でした!
武田:帰国してからUstreamで応援していました、と良くお声掛け頂きます。本当にありがとうございました。
神野:まず武田選手がパワーリフティングを始めたきっかけとパワーリフティング歴を教えて頂いてもよろしいでしょうか?
武田:私立の高校に入り、私立にしかない部活をやってみよう、と入部したのがパワーリフティング部でした。
当時体重は58〜9kgでしたが、初めてやったフルスクワットは125kgで先輩方に衝撃を与えました(笑)極真空手を幼少期より父に叩き込まれていましたので、足腰が強かったのだと思います。
そこから今に至ります。パワーリフティング歴は今年で16年目に入ります。
人生の半分はパワーリフティングですね(笑)
世界クラシックについて
神野:トータルベスト更新、ベンチプレス2年連続種目別金メダル、デッドリフト300kg達成おめでとうございます!ノーギアパワーリフティングは年々選手層が厚くなり世界大会も急激にレベルアップしていますが、今後世界の頂点を目指していく上でどういった事が必要だと考えていますか?
武田:ありがとうございます。300kgは悲願でしたが、あくまでこれはスタートに過ぎません。
来年のベラルーシに向けて課題は山積みです。その中でも一番必要なのはデッドリフトの研究と修正です。
サブトータルでは喰らいつけても、デッドリフトで突き放されては相手の失敗を祈るのみ、とても勝負とは言えません。
日本人のベンチプレスが世界でもトップレベルなのは体型有利よりもそのベンチプレスに対する研究が他国より優れているからだと確信しています。
今年はデッドリフトの強い他国に負けないデッドリフトのフォームを研究し、来年のベラルーシまでに先ず320kgを目指します。
神野:武田選手のように重量級で世界に通用する日本人スポーツ選手はパワーリフティングに限らず非常に稀です、日本人がヘビー級で海外選手と戦っていくのに重要なのはどんな事だと感じていますか?
武田:「太ることを恐れない心」です(笑)筋肉は重いので、同時進行より先ずは筋量をつけ、それから筋肉を使いこなしていくことが必要です。
私も67.5kg→97kgまで短期間で増やしましたが最初の一年は階段を昇るのも精一杯でした(笑)でもそこから時間が経つにつれ身体を使いこなせてきます。
体重を増やす→記録が伸びない→また減らすではなく、体重増やす→適応→身体を使いこなす→記録が伸びるを理解してください。
キツい減量をしてでも元々の階級に拘る選手が多いですが、減量がキツいから上の階級で出場する、それが当たり前になっていけば更に強くなるのではないか、と思っています。
神野:普段の練習メニューを教えていただいてもよろしいでしょうか?
武田:最近は5×5法やロシアンルーティンなど高頻度の練習をしています。
ただ設定はかなり甘めにします。
それについてはオフ期の練習をご覧ください。
オフ期の練習
高頻度の練習を中程度の重量で大会の課題を修正します。傾きや足のずれなど怪我に繋がる箇所を修正していきます。
重くなるとコントロールが難しくなるので、逆にフォーム修正で怪我をしてしまいます。
だから中程度の重量は非常に大切です。
オフ期は暫く中程度の重量でフォーム修正箇所を意識しコントロールしながら繰り返し反復します。
それだと筋力、筋量が落ちるかもしれない、だからその中で「きついこと」をします。
「きついこと」とは、スクワットでしたらロングキープ、ロングストップなど、きつくしようと思えばいくらでもきつくできます。
ベンチプレス100kgでも、ボトムで3〜4秒止めて5repsすればなかなかきついですよ。それがきついから記録が伸び悩む、と考えると中程度で十分なのではないでしょうか?
そういった「きついこと」が試合での安定感を生みます。また中程度の重量ですから怪我が激減します。
良かったら参考にして頂ければ幸いです。
オン期 試合一ヶ月前
年間でパワーはジャパンクラシックパワーリフティング選手権大会、世界選手権、ベンチプレスはジャパンクラシックベンチプレス選手権大会に絞り調整していきます。
試合に向けて重量を設定し、筋力アップと疲労を抜く事を重視します。大会で狙う重量は持ちません。ピークアウトします。
特に三種は何かがピークアウトするとなし崩しに調子が落ちますので、重量選択が非常に大切です。
またこの期間は怪我に敏感になりましょう。少しでも「危ない」と違和感を感じたらやめる勇気も必要です。
大会はそれまでにやって来た事の集大成で、そこでやめたから記録が落ちるならそれまでにやって来た事が甘かった、そういうことです。
オフ期に「きついこと」をコントロールした練習をしていると、そういった「危ない」がわかる様になります。
怪我して大会を迎えるより、万全で臨める方が肉体的にも精神的にも大切です。
大会前の練習は計画的に練習してピークアウトに気をつける、「危ない」と判断して怪我を避ける、これが一番大切です。
神野:食事やサプリメントで気をつけている点、重視している点はありますか?
武田:昔は鶏胸肉とブロッコリーをタッパーに、そんな徹底もしていましたが、今は「偏らない」ことを意識して食事をしています。
たんぱく質も過剰に、という事はしていません。内蔵が疲労してしまう事を避ける為です。
骨格的にあまり大きい選手ではないので、暴飲暴食はすぐにお腹を降してしまいます。
「偏らない」満遍なく栄養を取る事が大切です。
後は消化を助けるヨーグルトなどは必ず食べる様にしています。
あとは重量級ですから、カロリーが高いものを選択して食べています(笑)
サプリメントはPPN サプリメントを愛飲しています。PPN サプリメントに関してはこちらを参照ください。
起床 001′ PEPTO FORCE 5〜10g
朝食+730′ CASEIN PROTEIN 30g
昼食
練習中 00X’ AAA+PEPTO 40〜60g
練習後 001′ PEPTO FORCE 15g
仕事前 730′ CASEIN PROTEIN 30g
仕事中 00X’ AAA+PEPTO 30g
夕食+360′ PRO JOINT 1袋
就寝前 730′ CASEIN PROTEIN 30g
神野:目標とする選手やライバルとして意識している選手がいれば教えて頂いてもよろしいでしょうか?
武田:目標とする選手はたくさんいますが、勝ち続けている選手を尊敬しています。
小早川選手、阿久津選手、佐藤義宏選手など、その階級を連覇し続けている選手はそれがどんなに大変か知っています。
ライバルは105kg級の選手全てです。お互い切磋琢磨して強くなりたいです。
神野:TXPの営業スタイルやパーソナルについて教えて頂いてもよろしいでしょうか?
武田:TXPはパワーリフティングは勿論、アスリートのフィジカル強化に力を入れています。
これはオーナーの阿久津貴史が掲げる「妥協しない」という精神に基づき、日本人が海外の選手に比べてフィジカルが弱い、という基本概念をぶっ壊す!それがTXPの原点になります。
詳しくはこちらのTXP ホームページをご覧ください。
今ではUFCファイターや総合格闘家の選手など多くのアスリートがフィジカルを強化して強くなりたい!と日々ウエイトトレーニングを実践しています。
TXPはパワーリフティングの4大大会制覇、全日本、世界で活躍するアスリートのフィジカル強化を目指しています。
神野:パワーリフティングの世界で現在破竹の勢いのTXPですが、強さの秘訣はどういう所にあると思いますか?また、コーチとして今後どういうジムにしていきたいと考えていますか?
武田:ありがとうございます。私は怪我をしないこと、安定感を大切にすることを重視して指導させて頂いています。
フォームの修正には時間が掛かります。無意識下で行う為には身に付ける必要があるからです。
直ぐに記録が伸びなくても、怪我なく1年後、2年後の先を見据えることが大切です。
TXPは誰かがMAX挑戦をやる時、さっと深さを見る人、お尻を見る人がいます。
そして実際に挑戦をした後は「浅い」「止めが甘い」「お尻が浮いている」とダメだしをされます。
これにより次回どうしたら深くしゃがめるか、胸で受けられるか、どうしたらお尻をつけられるかといった課題が生まれます。
それを各々が日々の練習で修正し、試合での安定感が生まれます。私はその課題を修正するお手伝いをしています。
店内設備
■ TXP ラック
ELEIKO 2台
ELEIKO スクワットラック 1台
ER ベンチプレスラック 1台
パワーライン 1台
パワーハウス 特注ラック 2台
TUFFSTUFF パワーラック 2台
TUFFSTUFF ベンチプレスラック 1台
デッドリフトスペース 5面
■ TXP シャフト
ELEIKO 20kg 29mm×8本
IVANKO 20kg 28mm×6本
LEOKO 20kg 29mm×1本
BULL 20kg 29mm×2本
NIPPYO 20kg 29mm×1本
ノンブランド 8kg×2本
IVANKO EZ バーベル 12.5kg×1本
■ TXP プレート
ELEIKO 公式プレート
25kg×18枚
20kg×2枚
15kg×4枚
10kg×4枚
5kg×4枚
2.5kg×4枚
1.25kg×4枚
IVANKO 公式プレート
25kg×8枚
20kg×2枚
15kg×2枚
10kg×2枚
5kg×2枚
2.5kg×2枚
1.25kg×2枚
カラー 2.5kg×4個
記録用プレート
1kg×2枚
0.5kg×2枚
0.25kg×2枚
IVANKO ペイントイージーグリッププレート
20kg×40枚
15kg×4枚
10kg×16枚
5kg×14枚
2.5kg×18枚
1.25kg×18枚
IVANKO ONK オリンピックペイントプレート
20kg×20枚
10kg×4枚
5kg×4枚
2.5kg×4枚
1.25kg×4枚
NIPPYO
50kg×4枚
25kg×2枚
15kg×4枚
10kg×4枚
5kg×4枚
2.5kg×2枚
1.25kg×2枚
ウエサカ
カラー 2.5kg×2個
KINSEI ラバープレート
15kg×2枚
ノンブランド カラー 2.5kg×2個
プレート総合計 2861.25kg
上記がTXPの設備になります。
各エリアの足場は世界選手権を想定したカーペットで、取り寄せたサンプルからオーナーと2人でより世界選手権に近いものを選びセッティングさせて頂きました。
試合で使用するラック、バーベルを使って調整と対策出来るこういった拘りも試合での自信、安定感に繋がります。
コーチとしては、TXPから私に勝てる選手を多く育成していきたいです。
それがパワーリフティング指導者の役割ではないでしょうか?そして私も負けない様、大きな壁となり立ち塞がって行きます。
神野:パワーリフティングの魅力とはどういったところだと感じますか?
武田:人間の限界に挑戦する事です。怪我をするリスクと戦いながら高重量に挑み目標を達成した喜びはどんな事にも変えられません。
300kgのスクワットに成功して一番に感じたのは「達成感」より「安堵感」でした。
そういった充実感で生きていることを実感できる、パワーリフティングの魅力です。
神野:パワーリフティングでの最終目標があれば教えて下さい。
武田:「そりゃ無理でしょ」と笑われるかもしれませんが、目標はトータル900kg超えです。
数年前にはトータル800kgを目指しています、と言って同じ事を言われましたので、信じれば通ず、頑張りたいと思います。
神野:今日はお忙しい中ありがとうございました!またよろしくお願い致します!
【TXP ジムのご案内】
■アクセス
東京都練馬区豊玉北1-12-3 聖書キリスト教会東京教会 5階フロア
都営大江戸線 新江古田駅から 徒歩4分
西武池袋線 江古田駅から 徒歩7分
■営業時間
月曜日:18時〜23時30分
火曜日:18時〜23時30分(火曜日営業は2016年8月から営業スタート!)
水曜日:18時〜23時30分
木曜日:18時〜23時30分
金曜日:18時〜23時30分
土曜日:15時〜23時30分(2016年8月から12時〜23時30分まで営業拡大スタート!)
日曜日:14時〜22時00分(2016年8月から12時〜22時まで営業拡大スタート!)
■入会金
一般:¥5,000(別途消費税)
学生:¥3,000(別途消費税)
■月会費
一般:¥8,500(別途消費税)
学生:¥4,500(別途消費税)
*卒業後は一般の利用料へ変更させて頂きます。
■年一括
一般:¥93,500(別途消費税)*1ヶ月分フリー
学生:¥45,000(別途消費税)*2ヶ月分フリー
■ビジター
初回ご利用日から1週間は無料です。
*ジムは会員以外は入れない施錠システムになっているためお越しになられる前にinfo@t-x-p.comにご連絡ください。
2回目以降
一般:¥2,570
学生:¥1,540
■パーソナルトレーニングのご案内
料金
単発セッション(約70分) 12,000円+消費税
6回セッション(約70分×6回分)60,000円+消費税(1回当たり10,000円+消費税)
*6回セッションは12ヶ月以内にご使用ください。
*別途ジム使用料金がかかります。ジムのご利用が初めての方は
初回ご利用日〜1週間以内のジム使用料は無料となります。
・プロスポーツ選手 別途ご相談ください
・訪問出張パーソナルトレーニング 別途ご相談ください
・セミナー 別途ご相談ください
パーソナルトレーニング営業時間
ジム営業時間外の完全マンツーマンになります。
お申し込み方法
メールにてお申し込みください。info@t-x-p.com宛てにメールを御願い致します。
メール受信後24時間以内にご返信致します。
※ご見学・ビジター体験ご希望の方も事前にinfo@t-x-p.com(担当:武田)まで
ご見学ご希望日とお名前をご連絡ください。
宜しくお願い致します!
Team X-treme Power!!! 公式ホームページ
Team X-treme Power!!! 公式Facebook
武田裕介選手 オフィシャルブログ Team X-treme Power!!!
【武田選手練習動画】
この日の練習はベンチプレス、現在はメインセットの練習後にボードベンチプレスで三頭を追い込む練習をメインにしているそうです。
メインセット167.5kg×3reps10set後にボードベンチプレスで180kg×3、190kg×3(動画) 200kg×2(動画)を行い、練習時間は大体2時間くらいとの事でした。
武田選手と記念撮影、この度はありがとうございました!
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コラム用メールアドレス: column@sbdapparel.jp
※どのコラム宛かを明記してください。
※お送りいただいたメールの内容は、コラムで取り上げられる事があります。
■コラム執筆者
神野亮司
愛知県 MBC POWER所属 ( http://mbcpower.web.fc2.com/ )
ベスト記録(ノーギア)
・93kg級
スクワット240kg
ベンチプレス165kg
デッドリフト267.5kg
トータル662.5kg
・83kg級
スクワット212.5kg
ベンチプレス157.5kg
デッドリフト255kg
トータル612.5kg
実績
ジャパンクラシックパワー(旧ジャパンオープンパワー)出場10回、最高2位
2012年アジアクラシックパワー男子一般83kg級2位
2014年世界クラシックパワー男子一般83kg級11位